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シンガポールで感染爆発!から学ぶ

シンガポールはワクチン接種完了率84%で、現在感染者が爆発しているという報道を見かけますね。

今回はこのニュースを深堀りしてみましょう。

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シンガポール

まずは基本情報。

マーライオンが有名なシンガポールは、人口およそ585万人で、マレー半島の先端にある非常に小さな国です。1963年に英国から独立した後に、マレーシアの一部でしたが民族対立があり追放され、シンガポールができました。

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『明るい北朝鮮』

その後、外資を引き込み急速な経済発展をして今に至ります。一方で、政治面では実質一党独裁で、報道の自由も規制されていることから『明るい北朝鮮』なんて呼ばれていますね。

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厳しい法規制

気候は1年通して高温多湿で、日本の夏がendlessです。

ポイ捨てしたら約16万円の罰金*1など、法律が厳しいのは有名ですよね。

同性愛者にも厳しい法律があります、興味のある方はググってください。

コロナの状況

では、シンガポールのコロナの状況を見てみましょう。

10月27日に5324人の新規感染者が報告され、これは日本の人口で置き換えると、11万4000人のレベルです。すごい数ですね。

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シンガポールのコロナの状況

ちなみに、ワクチン接種完了率が人口の84%*2と進んでいる状況です。

一党独裁で法規制が厳しく、一年中真夏で、接種完了率も高いシンガポールで感染爆発。これはどのように解釈すればよいのでしょうか。

法規制の厳しさ

台湾、韓国が当初、コロナ対策の優等生として崇められていました。

これらの国は、日本と比して国の強制力が強く、今回のような非常時に強いと考えられてきました。

しかし、それだけでは感染対策は不十分だということが最近の状況を見ればわかります。

K-防疫 と大々的に宣伝し、『検査』『追跡』『隔離』を徹底してコロナ感染を抑えていた韓国はどうでしょうか?

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韓国の新型コロナの状況

日本の第5波は9月からどんどん落ち着いている状況ですが、お隣の韓国はまだ過去最大の波にいます。先週までやっと減り始めていた感染者数も今週また増加傾向で、10月28日にまた2000人を超えました。

デルタ株に対してはK防疫は効果が低い、つまり、罰則付き法律による人流抑制だけでは歯が立たないのです。

ワクチンについて

それでは、ワクチンの面で見ていきましょう。

シンガポールの状況を見ればワクチンは無効なのでしょうか?

シンガポール保健省のデータ*3 を詳しく見てみましょう。

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シンガポール保健省の発表

人口の84%が接種済みなので当然、感染者の多くはブレイクスルー感染です。これは何も不思議なことではありません。(理論を知りたい方は過去記事を参照ください)

『ブレイクスルー感染が多い』

www.multilingual-doctor.com

そして、大多数の感染者は無症状か軽症ということです。

何より重要なのが、重症者と死者の接種/未接種での割合です。未接種では8倍以上重症化、死亡のリスクが高いということです。

つまり、ネットで見かける『シンガポール見たらワクチンは意味がない』は当然誤りです。

デルタ株の影響

シンガポールはデルタ株以前は感染者も死者も少なく来ました。

またワクチンも殆どがファイザー、モデルナで接種を行い、今や84%まで接種完了しています。

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シンガポールのワクチン

感染力の強いデルタ株の到来と、昨年の12月から開始したワクチン、接種後の抗体価低下のタイミングが重なったのでしょう。

高齢者や免疫不全者などはいまブースター接種を進めています。

非常に参考になる

ワクチンのほとんどがファイザー、モデルナである点、接種完了率が高い点、アジア人種で、マスクなどへの意識が高い点などから日本と共通することがあります。

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シンガポールが参考になる理由

日本での高齢者のワクチン接種が本格的になったのは3月頃からですので、日本も2-3ヶ月後には同じような状況になる可能性があります。来年の1~2月がその時期です。

もちろん気候の違いもあります、日本ではその時、真冬で余計に広がりやすい状況ではあるので注意ですね。

韓国との違い

先ほども書いたように韓国では減りかかったけど再度増加しており、依然高止まりです。韓国の接種完了率も70%を超えました。

以前の記事でも書きましたが、韓国では約30%がアストラゼネカ、残りはファイザーorモデルナ、一部 Johnson&Johnsonと差はあれどmRNAワクチンがメインではあります。

また、地理的にも近く、同じアジア人で生活習慣も似ています。また、韓国では日本よりも厳しい集会制限などをしていました。

そういったこともあり韓国では『日本の感染者数は捏造されている』という論調が強いです。

韓国『日本は感染者数を捏造』

www.multilingual-doctor.com

陽性率が1%を切っていることから感染者数捏造は考えにくいです。

また、『PCR有料化で検査数を制限』という韓国ネットでの根も葉もない噂を中央日報*4があたかも事実のように記事にしました。

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『PCR検査を有料化して制限』

PCRを有料化したのはフランスですね。(笑)てか、新聞社が確認もせずにネットの内容を記事にするのはどうなんでしょうかね。

さて、では、何故状況に差が出ているのでしょうか。日本と韓国で大きく差があるのは、ワクチンの打ち方でしょう。

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2回目の間隔を空ける

律儀に日本はファイザーは3週間隔、モデルナ4週間隔を守っていました。韓国ではワクチン不足もあり、とりあえず1回接種者を増やすために2回目の間隔を延ばしました。

mRNAワクチンを効果の確認できた治験で決められた間隔できちんと射った日本と、アストラゼネカが30%ほどあり、mRNAワクチンも投与間隔を延ばして使用した韓国でこれほど差が出るのかは依然『?』です。

日本だけ弱毒化?

日本で広がっているウイルスだけ独自の変異を起こして弱毒化が進んだり、感染力が弱まったという説はどうでしょうか?

もちろんその可能性はあるにはあるでしょうね。

仮に、そうだとしましょう。しかし、それは決して喜べることではありません。

というのも、海外から感染力の強いデルタ株が入ってくると、結局また爆増するだけですから。それか、また感染力の強い変異株が出現でもすれば・・・同じように感染爆発でしょう。

さいごに

いかがでしたか?

シンガポールは、気候を除いてはワクチン、感染対策など日本と共通点が多く、非常に参考になります。ワクチン接種が日本よりも2-3ヶ月早く始まっていることを考えると、年末年始くらい日本でも同じような状況になる可能性も十分あります

ただ、シンガポールの結果を見ると、未接種者が圧倒的に重症化率、致死率が高いことがわかるので、次の波が来る前にリスクのある方で未接種の方は打つのがよいでしょう。

いずれにしても、「コロナ終わった~」と浮かれることなく、しばらく対策を続けるのが賢明ですね。

では、また(^.^)