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オミクロン株は"かぜ"レベルなのか?

通常、新たな感染症は最初たくさんの人を殺しますが、ウイルスは死者の体内では増殖できないし、死者が飛沫を飛ばすことがないので、このような致死率の高いウイルスは長期には存在しません

自然の摂理で、感染した人を殺さずどんどん感染させるウイルス、つまり感染力が強くて致死率が低いウイルスが最終的に長く残ります。それがインフルエンザや”かぜ”です。

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報告から2週間弱

南アフリカからオミクロン株の報告があったのが11月24日で、まもなく2週間を迎えます。欧州やアメリカ、日本、韓国でもオミクロン感染が見つかっています。

オミクロン株について

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時間とともに少しずつオミクロン株の特徴などもわかってきています。

過去の記事でもご紹介したとおり、スパイク蛋白に32か所以上の変異が見つかっており、ワクチンの効果低下の懸念があります。そして、感染力がデルタ株以上に強いと考えられています。

しかし、重要なのは、”毒性”です。つまり、重症化の割合や死者の増加の有無です。

重症化少ない

まだまだ、判断するのは早いのはもちろんですが、現在わかっている報告を見てみましょう。

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入院患者は増えていない

Bloombergの記事*1によると、南アフリカでは現在、デルタ株の波が終わり、オミクロン株が主体で感染が急速に広がっているが、入院患者の急増はないようです。

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ファウチ博士『ホッとする話』

これに対し、CNNに出演したファウチ博士*2は、少なくとも現状では重症化率は高くないとし、少しの安心材料になると言いました。また、現在のワクチンでもかなり効果があるとも発言しています。

ただね、南アフリカってね、日本と違って高齢者めちゃくちゃ少ないんです!人口の9割くらいが60歳未満です。

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高齢者がもともと少ない

なので、感染しても重症化する率は元々高くないんですよね。

さらに、ワクチン接種率がまだ23%(記事作成時点)しかないのも重要!だから、もう少し時間が経ってからデルタ株などと比べて致死率がどうかを見なければわかりません。

オミクロン株の症状

ところで、オミクロン株に感染したときには症状は過去と違うのでしょうか?

南アフリカ医師会長であるクッツェ( or コエツィ?)医師*3は自分のクリニックで11月18日にデルタ株と違って、主に疲労感だけ『非常に軽い』症状の患者を診ました。

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オミクロン株は症状が軽い

後にその患者らはオミクロン株に感染していることがわかりました。今のところ、60人ほどオミクロン株の症例を見て、やはり症状はデルタ株より軽いと感じており、特に接種済みのブレイクスルー感染では症状が軽いと述べています。

欧州でも軽症

先ほども書きましたが、南アフリカは大多数の国民が60歳未満です。これだけで判断するのは非常に難しいです。他国を見てみましょう。

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欧州でも無症状or軽症状

EU加盟国では、12月3日現在見つかっている109例のうち全例が無症状または軽症状で、死者の報告もありません*4

ま、まだ症例数が少ないので何ともですが、よさげなニュースではあります。

”かぜ”遺伝子と合体?

12月4日にワシントンポスト紙の記事*5で、ある研究結果が紹介されました。

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かぜのウイルス遺伝子と合体?

なんと、オミクロン株は、新型コロナウイルスに別のかぜの原因となるウイルスの遺伝子が取り込まれてできた変異である可能性が高いといいます。それゆえに、他の変異株と比べて、『かぜ』に近い性質を持っているのではないかと。

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かぜのウイルスと新型コロナ同時感染

で、新型コロナとかぜの原因となる別のコロナウイルスに同時感染した患者の体内で作られた変異である可能性があると説明しています。

肺や消化器官の細胞では同時感染が起こることが既に分かっているそうで、この説は十分にありうるそうです。

ただ、この研究はまだ査読が済んでいません。これからその手の専門家たちで議論がなされますので、あくまで今は参考レベルにとどめておきましょう。

AIDSとの関係

オミクロン株は恐らくAIDS患者の体内で変異を起こして作られたものだと*6言う科学者がいます。

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オミクロンはAIDS患者の体内でできた?

南アフリカでは全人口の20%(世界最高率)がHIVに感染*7していると推定されています。

AIDS患者では、免疫不全により新型コロナウイルスが体内にとどまる期間が長くなり、他のウイルスとの同時感染もあって、大きな変異を起こした可能性があるというのです。

他のアフリカの国々でも、HIV感染者は多いです。しかも、型コロナワクチン接種率がおしなべて低いという。

こういった国々で新型コロナの感染がどんどん拡大すればさらなる想定外の変異が起こる可能性も懸念されています。(ま、毒性が弱いならそれでもいいのですが・・・)

さいごに

いまのところでわかってきているオミクロン株の情報をまとめてみました。

世界中の特に先進国でワクチン買い占めがあり、貧しい国へのワクチン供給は非常に遅れました。また、アフリカでは新型コロナはそれほど脅威とされておらず、ワクチンが届いても接種が進まないそうです。

こういった貧しい国々でもしっかりと、啓蒙活動をし、ワクチン接種を行わなければ新たな変異株への悩みは当面尽きないのかもしれません。

いまのところは、オミクロン株の毒性は低そうです。

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南アフリカの現状

上の図で見ると、今”第4波”に入った南アフリカですが、死亡者数がこれから先に増えて来ないかというのが、今後注目すべきポイントですね。これでデルタ株の第3波よりも死者が相当少ないのであれば『弱毒』であり、”かぜ”とも言えそうです。

とりあえず、私たちは引き続き、基本対策をして結果を待つのみですね~

では、また(^.^)ノ

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