マルチリンガル医師のよもやま話

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イスラエルとワクチンの裏側に迫る

最近知ったのですが、イスラエルの首都はエルサレムではなくテルアビブだそうです。

さて、日本人にとってはさほどなじみのないこの国はコロナ禍でワクチンモデル国として注目を浴びました。今回はこの件について深く見ていきましょう。

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イスラエルのなぜ①

イスラエルに関してまず1つよく聞く疑問は

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イスラエルのなぜ?①

イスラエルは人口が約930万人と、神奈川県の人口くらいの国です。アメリカとは昔から友好国で軍事・経済的につながりがあります。

コンパクトな国で、アメリカと仲がいいというのが重要です。

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利害関係一致→交渉成立

イスラエルのワクチン外交は優秀ですね。大国がお金のパワーで優先的に買い付けすることを見越して、高速接種&データ提供を武器に交渉しました。

ファイザーからすれば、治験で優秀な結果があったので、実臨床で使ってみて治験同様に優れた結果が出ればそれが”宣伝”となりワクチン市場で優位に立てますし、実際そうなりました。

この利害関係が一致し、イスラエルはワクチン接種が早かったのです。

イスラエルのなぜ②

そして、輝かしいワクチン成功国となった後に、変異株の到来などで状況が一変しました。そんな中で最近よく耳にするのがコレ。

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イスラエルのなぜ?②

これはみなさん、なぜだと思いますか?

ま、理由はいたって簡単です。過去の記事で何度も触れてるので、当ブログの読者の方は、もう理由お気づきでしょうかね?(*‘∀‘)

実は接種率が低いからです!

『接種率86%』の真相

実は、2022年1月29日現在でのイスラエルの接種完了率は65.5%*1です。そして、20歳以上に限定すると86%(9割弱)なんです。これ重要です。

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ワクチン接種率

意外と思った人は多いのではないでしょうか?イスラエルは一番接種率高そうなイメージがありますもんね。なぜでしょう?

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イスラエルの接種率の真相

この図が全てです。

要は、成人の約90%接種という報道がなされたため、その数字だけが独り歩きして勘違いする人が続出しているのです。

いずれにしても、当時のウイルスでは60%の接種完了で集団免疫に達するとされており、実際一時的に感染はほぼ0と言えるレベルまで行きましたね。

子供から広がった

しかし、デルタ株の到来で状況は一変しました。

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イスラエルの感染状況〜Reutersより〜

感染力が強くなったデルタ株では、集団免疫に達するには接種率80%が必要ということがわかりました。

デルタ株は80%接種で集団免疫

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デルタ株の到来で、子供たちの感染が急増*2したことをきっかけに大きな波が起こりました。

また接種後の抗体価が落ちるタイミングと重なり、高齢者たちの感染→重症化→死亡も少し増えました。こうして、世界的に高齢者や高リスクの人は3回目の接種で抗体価をあげるべきだとなったのが現状ですね。

子供へのワクチン

子供にもワクチンを打たせるべきかというのはどこの国でも問題となっています。

普通ならイスラエルが接種率を「もっと高めたいなら未接種の大人に打て!」となります。成人の未接種率は14%ですが、この層は反ワクチンだったり、アレルギーだったりで打っていない人です。この層でこれ以上の接種拡大はほぼ絶望的ですね。

そこで、人口ピラミッド*3を見るとイスラエルが未成年への接種を進めたい理由がわかります。

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イスラエルと日本の人口ピラミッド

イスラエルは子供の割合がめちゃくちゃ多いんですね。つまり、この層が未接種であると、常に人口の3割は未接種状態ということになるのです。するとここで感染拡大⇒高齢者重症化⇒死亡者増加のループ。。。

これを阻止するために、若者へのワクチンを進めているというわけです。もちろん安全性は治験などで確認されています。

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日本は少子化で子供が少ない

国ごとに人口動態などもふまえて接種対象は考える必要があります。

例えば、10歳未満の割合はイスラエルで19.4%、対して日本で8.2%です。さらに日本では既に80%ほどが接種済みです。

つまり10歳未満に打つことによる社会のメリットはイスラエルと比べて非常に小さいということです。もちろん、基礎疾患がある子は打った方がよいと思いますが。

ブースター接種

3回目の接種が必要な理由は、先ほど述べたように接種後半年くらいで抗体価が下がるからです。しかし、健康な若者で免疫がしっかりある人は、mRNAワクチンのメリットである免疫記憶があるのです。

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mRNAワクチンで免疫記憶

つまり、抗体価が下がったら感染はしますが、免疫記憶により体内でさっと抗体を増やせるので重症化予防効果が残っているということです。詳しくは過去記事ご参照ください。

若くて健康⇒ブースター不要

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もちろん、これは『個人』レベルでの話です。社会全体で考えると答えは違います。

例えば医療従事者などは、一気に大量に感染者が出て隔離になると医療が麻痺し、それにより救えない命が増えるということが想定されます。医療従事者が毎年インフルエンザワクチンを打つ理由とも同じです。

インフルエンザワクチン

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僕も若くて健康ですが、いまのオミクロン株の広がりを見ると、医療従事者として感染の可能性を下げるために打つべきだと考えています。

人それぞれ考え方は色々です。他人に強要しない限り個々の意見は尊重されるべきです。

4回目のワクチン

イスラエルで4回目のワクチンのニュースもありましたね。

結局これも同じで、オミクロン株が入ってきて、ワクチンの効きが悪くなっており、特に感染すると重症化する可能性のある高齢者らは、抗体価を高めておいて可能性を低めるしかありません。

追加接種』というのは、当たり前ですが、既に2回接種完了した人にしかないわけですね。

つまり、未接種者が多くいるうちはその国ではまだまだ広がる余地があるわけで、感染は抑えられません。だから、接種済者が4回目打とうが、接種率は変わりませんので、感染者は当然増えます。

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イスラエルで感染増加の原因

新型コロナウイルスは消滅せず、致死率が下がり最終的に”かぜ”になると考えられており、将来的にはインフルエンザのように高齢者などは年1回のワクチン接種などにするのがよい*4という提言があります。

イスラエルの状況

では、現地のニュースを見てワクチンと感染者の状況を見ていきましょう。

イスラエルで「ECMO使用者のすべては未接種者」という記事*5を見ましょう。

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重症化は未接種が圧倒的

別の記事*6で他の病院の状況も載せられています。

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重症者は未接種者ばかり

イスラエル全体での重症者の内訳を見ても、赤い未接種者が圧倒的ですね。

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イスラエルでの重症者

ここまで見てもワクチンが重症化を大幅に減らしていることは紛れもない事実ですね。

さいごに

いかがでしたか。イスラエルのワクチン事情はおわかりいただけましたか?

日本と違い子供が非常に多い国であり、接種率は65%から進めることはできません。そこで、治験の結果を見ながら12歳以上→5歳以上と対象を拡大せざるを得ないと判断したようです。

さらに、その間も時間が来れば高齢者らの抗体価が落ちたので追加接種をしているという状況です。

追加接種をしても、接種率が上がるわけではなく、そりゃ感染力強いものが来たら感染は増えます、当たり前ですね。

また、国によって人口体系や感染状況なども全然違います。こういったことにも注目して、世界のマネをするだけでなく日本に合った道を模索すべきですね。

では、また(^.^)ノ