3度目の緊急事態宣言が発令されることとなり、2年連続の緊急事態宣言下のゴールデンウィークになります。
不安な気持ちになる前に、一度客観的に第4波の状況を見ていきましょう。
再確認
前回の記事で紹介したようにイスラエル、アメリカ、イギリスなどはワクチン接種がどんどん進んでおり、少しずつ元の世界に戻りつつありました。
ポイントは接種を進めながら段階的に規制を解除していくことでした。イスラエルやイギリスの一部では屋外のマスク着用の義務がなくなっています。こればかりはうらやましいばかりですね。
ところで、これらの国の現在の様子を見れば、ワクチン接種後の近未来が見えることになるわけですが、パブがOKになったり、学校、ジムや美容室や映画館が再開になったりというものです。
はい、気づきましたね。これらはすべて日本では止まっていないんです。1回目の緊急事態宣言のときだけ休業です。日本は欧米の”近未来”だったんですね。(笑)
▼ワクチン接種後の近未来▼
つまり日本はこれら接種が進んでいる国と比べてコロナ被害がめちゃくちゃ小さいんです。そりゃワクチン優先されませんよね。
もちろん、日本もワクチンが進まない限りマスクは外せませんが・・・
第4波について
一足先の2月末に緊急実態宣言を解除した兵庫・大阪らで、英国変異株が増え始めて今に至るというのがザックリしたイメージでしょうか。
ですので、今回は大阪を中心に数字を見ながら考えていきましょう。
上のグラフを見れば一目瞭然ですが、宣言解除後しばらくは落ち着いていましたが3月末くらいから様相が変わっていることがわかりますね。
それに伴い、4月1日から蔓延防止等重点措置が開始されました。しかしながら、増加を続け、今回の緊急事態宣言に繋がりました。グラフで最後の山(04/20辺り)でピンク線が横ばい(=頂上)であればいいのですが・・・
大阪との往来が多いことで、隣の兵庫県も同じように措置をしています。
大阪よりは少し緩やかに見えますが、やはり3月末から増加をはじめ、同じように山をどんどん登っていますね。
再生産数について
もう皆さん聞き慣れて意味も分かると思いますが、もう一度軽く説明をしておきます。
簡単に言うと、一人の感染者から何人に移すのかという平均値です。もともとの感染力をいうものが基本再生産数 (R0)です。例えば麻疹は空気感染して基本再生産数はなんと12~18と言われています。恐ろしいですね。
しかし、麻疹は今はMRワクチンがあるので、抗体を持っている人が多く爆発的に広がりませんね。そう、こういうワクチンだったり、手洗い、マスク、ソーシャルディスタンスなど何らかの措置を講じた状況での再生産数を実効再生産数といいます。
新型コロナウイルスの基本再生産数は2くらいとされています。つまり、色々措置が講じられている現状では実効再生産数は2未満で推移するのが自然ですね。(もちろん変異が起こりまくって基本再生産数が変わってしまう可能性も0ではありませんが。)
実効再生産数
実効再生産数はどうやって決まるのかというと、割愛しますが、計算式があります。
ザックリ、Kという係数があるのですが、これは対数成長速度と言います。要は、どのぐらいのスピードで増加してるか!これが重要になってきます。
計算は忘れていいので、我々が見るときに、知っておくべきことは次の2点です。
これだけで十分です。ある程度先が予測できるのです。では、大阪の状況を見てみましょう。
上図を見れば3/11辺りから実効再生産数は1を超え、微々増フェーズに入っていますが、3月末くらいから山が2の近くまで行っています。つまりこの時期は1人の感染者から約2人に増えるというねずみ算式に急増するフェーズに入っていました。
こんな短期間にウイルスの感染力が増えることは考えにくいです。もちろん、英国変異株が多少感染しやすいというのもありますが、接触が増えているんです。緊急事態宣言が解除されたこと、異動シーズン、卒業、花見、はい、これらですね。
現在は一時期よりはスピードは鈍化しています!しかし、まだ1を少し超えていますので微増フェーズであるのは忘れずに!ただ、ピークは過ぎてるように見えますがねー
そしてインドで見つかった感染力が相当強いという二重変異株B.1.617が国内でも報告が出ましたので今後の増加の可能性も。。
陽性者の内訳
では、陽性者の内訳を見ていきましょう。どんな年齢層の人が多いのでしょうか。大阪府が公開しているデータ*1から見てみましょう。
実は今広がっている変異株の特徴とも言える小児の陽性者も増えている件です。もう一つ、0~39歳までだけで、全体の47.9%と約半分になります。若者が多いのも今回特徴と言えますね。
これもやはり、時期的に緊急事態宣言解除、卒業、花見などとも重なり、若者の接触が増えたことと矛盾しませんね。繁華街中心に若者の人出が増加という記事を何度目にしたことか。
クラスター発生場所
では、どういうところで感染が起こっているのでしょうか。多くはいわゆる”経路不明”なので、場所は特定できません。言えない場所かもしれないし、本当にわからないかもしれません。(笑)
さて、ではクラスターが発生しているのはどういう所でしょうか。これも大阪府のデータを用いて見ていきましょう。
大阪府が公開している『陽性患者』の内訳から、3~4月のクラスター発生場所を分けてグラフを作成してみました。しつこいですが、もう一度!多くは『経路不明』です。それはここに含まれません。
オレンジ色の高齢者施設や障碍者施設でのクラスターが半分弱、水色の病院など医療関係が15%と、合わせて6割を占めています。残りは部活動や、会食、家族内などです。
つまり、クラスターが出てるところは業務上濃厚接触をする医療・介護分野とマスクをしない会食や家庭内、部活動ということです。
これらを気にすれば感染のリスクを下げれるということですね。医療・介護者・高齢者へのワクチン優先は理にかなっています。家庭内でも換気をしっかりして、少し距離を取るなど工夫できますね。
超過死亡はマイナス
超過死亡というのは、平年の死亡者数と比較してその年の死亡者数がそれを上回っていたらそれを超過死亡といいます。
日本は高齢化社会であり、毎年2万人ほど超過死亡があるんです。
その感染症の蔓延により直接的に死亡、または医療崩壊など間接的な原因で死亡した人たちが多ければ超過死亡はさらに大きくなります。ところが、2020年の超過死亡はなんと減少したのです。
コロナ対策で肺炎やインフルエンザによる死亡者が大幅に減りました。結局、感染症対策で重要なのはいかに死者数を抑えるかです。そういう意味では少なくとも日本は成功してますね。
もう一歩踏み込みましょう。例年肺炎で12万人近くが亡くなりますが、これは超高齢者は軽い肺炎がトドメになるということです。つまり、コロナで亡くなっている高齢者~超高齢者もコロナでなくても肺炎で亡くなっていたぐらいの状態の人も一定数いると考えられます。
元々寝たきり
この話は多くの医療者たちが可能性を指摘してきましたし、僕もそう思っています。ちょうど最近DMAT*2の近藤久禎先生のインタビュー記事がありました。
コロナ死亡患者の4割が「元々寝たきり」の波紋 | 新型コロナ、長期戦の混沌 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)
札幌市の2020年11月から2021年1月のデータをもとに解説されていますが、端的に言うと、コロナ死亡者の45%は元々寝たきり状態の高齢者だったのです。
つまりたまたま最後の一撃がコロナ感染であっただけで、誤嚥性肺炎でも命をいつ奪われてもおかしくない状態だったということも知っておく必要があります。つまり、例年は『肺炎』で死亡とされていた人が今回は『コロナ死』でカウントされていただけとも言えます。
「本日〇〇人」という人数だけの速報がいかに意味がないかよ~くわかりますね。
まとめ
感染力が強いとされる変異株の影響、そして春と言う行楽・卒業・移動のシーズンが重なり急増がありました。今は増加速度は落ちていますが、まだ大阪の実効再生産数は1を超えています。
クラスターの発生場所などからわかるのは、濃厚接触や飛沫が避けにくい状況の場所がほとんどです。あまり神経質にならずに今まで通り、対策をしていればそれほどリスクは変わりません。
日本は世界的に見て、うまく制御できています。もっときつくやれと言えば、中国のように建物を封鎖して軍が包囲とか日本で望みますか?日本は2020年の超過死亡はマイナスです!
今まで通り、個人でできるレベルを続けるのみ、あとはワクチンを待とう!
では、また(^.^)ノ
*1:https://www.pref.osaka.lg.jp/default.html
*2:災害派遣医療チーム