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ネガキャンとワクチン ~子宮頸癌ワクチンは打つべし~

第3波が始まった11月以降、初めは主に『気候』による影響を見ていたと考えられますが、年末頃から様相が変わっています。

第3波初期は『気候』の影響

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年末年始というにはイベントが重なりやすいので、人の接触も増えやすいものです。クリスマスに正月に成人式に。実際、ここ最近の陽性者の内訳を見れば20-30代が増加しているんです。

実際、忘年会、新年会、ホームパーティー関連の報告が増えているのも事実です。いわゆるコロナ慣れ正常性バイアス*1が蔓延しているのですね。

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陽性率が上がってしまう

また、帰省のための自費検査などで無症状陽性者が増えますが、陰性の人たちは保健所に報告しないので、全体で分子だけ増えて分母が正しく増えない⇒陽性率が実際より高くなるという不都合も生じています。

帰省のための自費検査

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このように、この第3波には社会的にも様々な要素が入り乱れている為、数字から状況を読み解くのも難しくなっているのが実状です。

 

アメリカやイギリスでは既にワクチン接種が始まっており、日本でも2月に開始を目指していると言われています。新しい薬やワクチンが出てくるとき、必ずネガキャンが出てきます。

近年では子宮頸癌のワクチンが記憶に新しいです。それを少し学んでみましょう。

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子宮頸癌について

子宮の入り口の所を頸部、その先の本体を体部といいます。この入り口である頸部にできる癌が子宮頸癌です。

子宮頸癌は9割方ウイルス感染により若い世代に起こりやすく、子宮体癌は女性ホルモンが原因で起こるとザックリ考えてください。

子宮頸癌の原因となるウイルスはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるイボを作るウイルスです。ほとんどが性交渉で移ります。男性にも局部にイボができたりしますが、陰茎癌になることはあるにせよ稀です。

日本ではこの子宮頸癌がここ30年で増加傾向が続いています。また、喫煙やピルの内服もリスクが上がることがわかっています。

 

HPVの種類

ある調査では80%の女性は一度はHPVに感染しているとされています。ただし、ほとんどは無症状感染です。2年以内には90%ほどは感染が自然消失すると言われています。

実は、子宮頸癌にまでなるには10~20年以上の持続感染が条件なのです。つまり、感染するだけでは問題なく、ずーっと体内で残っていると癌化するということです。

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特に子宮頸癌の原因で一番多いのがHPV16, 18型の2種類です。これは覚えておいてください。

 

HPVワクチン

ウイルス感染との関連性がわかっている子宮頸癌を減らすにはどうすればよいでしょうか?もちろん性教育も重要です。しかし、守れるか守れないかは個人任せになります。

そうです、当然ワクチンが考えられますね。しかも、HPVはDNAウイルスですから比較的安定しており、RNAウイルスのコロナウイルスやインフルエンザウイルスのように短期間に変異し続けることはありません。

このワクチンで重要なことは、感染する前に打つことです。既に感染しているものを抑える効果(=治療効果)はありません。なので、10代の早い段階で、男女の関係を持つ前に打つことが重要なのです。

 

ワクチンの種類

有名どころはサーバリックスガーダシルです。これらについてさらっと学びましょう。

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サーバリックス

サーバリックスは英国でできたもので、先ほど学んだ子宮頸癌の原因の大部分となるHPV-16, 18型の予防効果があります。2種類に効くので、"2価ワクチン"ともいいます。

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ガーダシル

続いて、ガーダシルですが、こちらはアメリカででき、日本では2011年に承認されました。HPV-16, 18型に加えて、男性の尖圭コンジローマの原因となるHPV-6, 11にも対応した(4価ワクチン)わけです。ですので、男性への接種も対象とする国もあります。

実は肛門癌にもHPVが関わっており、原因は「人それぞれ事情があるので」とだけ言っておきます。

 

副反応とネガキャン

他のワクチンでもアナフィラキシーなどがまれに起こることがあります。子宮頸癌ワクチンで見られた副反応のほとんどは失神でした。対象年齢が多感な時期の女の子だから他のワクチンと比べて多いと考えられています。

あとは痛みを訴える人が多かったのですが、このワクチンは肩の筋注になります。インフルエンザワクチンは日本では肘の皮下注が多いですね。筋注した場所は硬結ができることはよくあります。

その他にもごくごくまれに起こる副反応をマスコミが大々的に報じてネガキャンを行いました。そのせいで、世論が動き、日本では2013年に「ワクチンを推奨しない」という異常な事態になったのです。

 

世界的な状況

実際、日本で大々的に言われた、注射後に長期に残る疼痛などは海外では報告があまりなかったのです。そして、日本だけが「接種推奨」をやめたことにWHOは批判をしています。

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WHOのコメント

世界規模で調査をしてはっきりした因果関係がないと出たのに、マスコミによるネガキャンで世論を動かし、ワクチン接種を非推奨にした日本を批判しています。ワクチン接種で癌のリスクが下がることがわかっているから当然ですね。

日本の産婦人科学会小児科学会も「政府のその対応はおかしい」と言っていました。2016年には世界の科学者からの署名付きで「日本の不適切な政策決定」に対する憂慮が示されました。

しかし、これらが日本メディアで取り上げられることはありませんでした。

2013年の朝日新聞の報道から始まった日本での「ワクチンは怖い」という世論からなかなか抜け出せない先進国・日本となったわけです。

 

9価ワクチン登場

結局、医師たちも声明を出しても、すでに形成さえれた世論には勝てず、現状でワクチンを推奨するのは難しくなっています。

9種類のHPVに効く9価ワクチンが2020年7月に日本で承認されました。名前はシルガード9です。これは割合は低いが他にも子宮頸癌の原因となりうるHPVの型にも効くようになっています。実は承認まで5年もかかっています。

理由はさっき言った世論ですね。

正直言って、この9価ワクチンが以前のワクチンと比べてものすごく優れているというわけではありませんが、ネガキャンのせいで以前のワクチンは使いづらい日本では、この新しいワクチンを利用して積極接種にもっていきたいのが実情でしょう。

 

まとめ

世の中は科学的エビデンスよりも世論が上回ることもある

しかしその世論がマスメディアにより誇大して作られることもある

今後新型コロナワクチン接種が始まっても同様のことが推定される

 

さいごに、子宮頸癌ワクチンは打つべきです。

 

ではまた(^^♪

*1:自分は大丈夫だという根拠のない自信