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【サク読み】06/23 ワクチン副反応検討部会

ワクチン接種が始まって以降、副反応について情報を集め、それらがワクチンに関連性があるかどうかなどを専門家が調べます。そして、2週間に1回ほどのペースでそれらについて分科会で検討を行っています。

6月23日にも検討会が開かれましたのでその情報を簡単に解説します。

科学はデータを積み重ねていくことが重要です。

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死亡は277例

今回の会で報告されたのは最初のワクチン接種が開始された2月17日から6月13日までに報告されたものをまとめて、検討したものです。

6月13日までに約1714万人に接種が行なわれており、接種後の死亡者は277例で、これは接種100万人当たり16.2件ということになります。

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ファイザー接種 100万人あたりの死亡者数

これは同じファイザーのワクチンで比べるとアメリカのデータより少し低めです。イギリスは100万回あたりのデータで出していますが、同じように100万人当たりの計算式にすると 26.9という異常に高い値になります。

イギリスが異常に高いことは明白ですが、いずれにしても日本で接種後の死者が他国と比して多いことはありません

死亡例の内訳

6月13日までに報告された277例のうち65歳以上は248例、65歳未満は29例でした。

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ワクチン副反応検討部会資料より引用

ワクチンが直接または間接的な原因で死亡に至った場合は世界的に見て、同じ原因で亡くなる人が多くなるはずですね、同じ薬剤なので。

まだわかっていない関連性を探すには科学ではまずこの視点で見ていきます。

尚、”心肺停止”というのは『死亡』を言い換えているだけなので、かみくだくと原因不明の死亡ということです。

多いのは心不全と脳出血

心不全の他に多いのが、出血性脳卒中(脳出血やくも膜下出血)、虚血性心疾患(心筋梗塞など)ですね。

では、これらの出血性脳卒中や虚血性心疾患がワクチンとの関連性はどうなのでしょうか?結論から言うと直接的に示すのは難しいです。

そこで、ワクチンを打っていない人たち(例えばコロナ前の状況)と比べて明らかに特定の疾患の割合が多ければ、ワクチンの関連性を疑う十分な理由になるということです。

過去の報告はコチラ

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コロナ禍前の死亡

コロナが始まる前の2019年のデータをみてみましょう。

まず、2019年に死亡した人の数は約138万人で、1日あたり3780人ほどが亡くなっていることになります。65歳未満では1日あたり347人が亡くなる計算になります。

(ちなみにコロナ禍の2020年もほぼ同じような数です)

続いて2019年の死亡の内訳を見ていきましょう。

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2019年 死亡者内訳 一部

出血性脳卒中による死者は2019年に33,900人(1日あたり93人、65歳未満では1日あたり19人)、心不全は85,565人(1日あたり234人)、心筋梗塞が31,429人(1日あたり86人)でした。

では、これらをワクチン接種後の死亡者と比べてみましょう。

ワクチン接種後の死亡と比較

では、ワクチン接種後の死亡と、2019年の死亡をそれぞれ比較してみましょう!

しかし、これをやろうとちゃんとやろうと思うと、年代別に分けて各疾患の起こる可能性などを計算してやっていっく超絶しんどい作業が必要となります。

ということは、あきらめるか・・・

いや待てよ、誰かスゴい方が既に調べている・・そんなネ申のような人が・・・

いました。笑

日本災害看護学会*1への情報提供として神戸協同病院の先生が、報告*2されております。

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日本災害看護学会 情報提供より

結論から言うと自然死と比較して特にワクチン接種後に死亡が増えていることはないようです。50代以上では、もっと死亡者が出てもおかしくないようです。

いずれにしも、高齢者接種が始まって間もないからというのもあるでしょうね。

6月23日の分科会での検討でも「ワクチン接種に影響を与える重大な懸念は認められない」としています。

心筋炎

最近、アメリカからも報告があった若者での心筋炎ですが、こちらはまれではあるけれど、自然発症よりも割合が高いことがわかっています。今回の検討会でも心筋炎について扱われております。

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心筋炎について

急性心筋炎になった場合、多くは入院で安静して経過を見るだけで治る軽症が多いです。まれに急変をきたすこともあります。

アメリカの報告ではファイザー、モデルナともに2回目接種後の若い男性に起こりやすいことが分かっており、ほとんどが軽症でした。自然発生例と比較すると接種後の若年男性では少し高頻度だとわかりました。

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心筋炎の報告について

イギリスでは、アストラゼネカも含めた3種類ともにおいて、各年齢層ごとに自然発生と比較しましたが、特に接種後に増加するということは認めていないそうです。

日本では6月13日までに11人(うち男10人)の接種後に心筋炎or心膜炎の報告があります。うち7人は40歳未満とやはり若年に多いです。

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ファイザー 100万回接種当たりの発生数

こうすると、日本は低く見えますが、日本はまだまだ若い世代が打っていないからというのが大きいでしょう。
アメリカのCDCは接種後の若年で多く起こる心筋炎はワクチンと『関連している可能性がある』としていますが、それ以上に接種のメリットが大きいため、引き続き若年にも接種を推奨としています。

さいごに

今回は6月23日の副反応検討部会の資料を簡単に解説しました。

やはり、気がかりなのは若年での接種後の心筋炎ですね。個人的には、20-30代はコロナでの死亡は現時点で極めて少ないため急いで打つ必要はないと思っています。心筋炎の副反応のこともありますし。

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国立社会保障・人口問題研究所 HPより

高齢者、基礎疾患のある人、医療従事者、介護者、小児と多く接する職業、人と接触の多い職業の人らは打つメリットが大きいと思います。自分を守るのもそうですが、ワクチンが打てない人や子を守ってあげるというのも大きいメリットです。

まずは、重症化しやすい人たちが接種をし、重症者が減れば当然コロナによる死亡者も減ります。

もちろん、これから日本で拡大するであろう、インド由来のδ株δ+株が若者にも大きく影響するのであれば、若者も接種を急ぐ必要があります。

こちらにも注意してみていきましょう。

 

では、また(^.^)ノ

 

これから接種される方へ

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