マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

MENU

『男女産み分けは80%可能』( ゚Д゚;)

知り合いのDr.で、娘さんが3人いる人がいまして、3人目ができるときに『男の子が欲しい』と言うことで、ありとあらゆる産婦人科で相談したり、サプリ飲んだり、最終的にはちょっと怪しい中華占い師のところへ行ったりしたけど、『結局あかんかったわ』と言ってました(笑)

今回は、80%の確率で産み分けができる?というお話*1を紹介します。

一般的な産み分け

現在でも一般的に”産み分け法”と言われるものがあります。

例えば、『女性が気持ち良ければ男の子』とかいう話があります。

酸性かアルカリ性か

この理由は、興奮すると子宮頸管液が多く分泌され、それにより普段酸性の膣内がアルカリ性になります。男の子になる精子(Y精子)はアルカリ性に強いから男の子ができやすくなるという説です。

ま、そもそも”気持ちよさ”は個人の感覚なので、それで男女わかるとはとても思えませんが・・・笑

で、ま、この酸性orアルカリ性の概念を応用したものが、いわゆるピンクゼリーグリーンゼリーで、行為の前に中に入れて男女の産み分けをしようというものです。

精子の重さ

今回出てくる内容は、体外受精をすることが前提のお話です。

精子の重さを元に、産み分けする方がより確実で、安全だという報告があります。

精細胞の重さで分類

紹介されている研究*2ではアメリカの1300以上着床前診断を行ったカップルのデータを使っています。

その中で『性別希望』をした人たちにだけ、精子の重さによる分類を行いました。

X精子の方がわずかに重い

女の子の遺伝子を持つX精子の方が、わずかに重いので、その差を利用します。

高密度の媒質の中を泳がせると、軽いY精子は上の方へ行き、重いX精子は下に行きます。

これで、性の選別を行うというのがこの手法です。

安全性

この精子の選別の際に、高密度の媒質の中を通すので、精子が傷ついたりする懸念もありますが、研究内ではそのような事象はありませんでした。

精子を傷つけることもない

では、生まれてきた後はどうでしょうか?

研究内では誕生後も3年間見ていますが、特に発達障害なども認めませんでした。

発達障害なし

では、実際この手法を用いた子供の男女産み分けは成功したのでしょうか?

ま、タイトルに答えあるがな!というご指摘が聞こえますが(笑)

成功率は8割

研究内で、赤ちゃんの性別希望があるカップルにはその希望に応じて、この手法を行いました。

成功率は8割

すると、男女ともに成功率は8割となりました。

ま、重さは”わずかな差”しかないので、どうしても一定数は外れてしまうのでしょう。

つまり、技術的には8割産み分けは可能で、安全性も問題なさそうというのが今回の結果でした。

倫理問題

しかし、産み分けは技術だけの問題ではありません。倫理的な問題がいつもついて回ります。

この着床前診断というのは元々、遺伝疾患の回避という目的があります。これから子を持つ親からすれば、これは誰もが望むことです。

着床前診断には反対意見も

しかし、現在障碍者として生きる方々からすれば、自分たちの存在を否定されるように感じることもある*3ようです。

他にも、「いつから人間か?」問題があり、受精卵でも”ヒト”と考えれば、命の選別ととらえることもできます。特にカトリックでは顕著ですね。避妊すら禁止されてました。

2000年代以降、欧米では着床前診断は悪いことではないという風潮になってきています。

日本では?

一方で、日本での現状はどうでしょうか?

日本でも、世界の流れと同じく、着床前診断は行われます。目的は、不妊症・不育症に関連する遺伝性疾患のスクリーニングのみとしています。

日本産婦人科学会の見解

これは法律ではないのですが、日本産婦人科学会として出生時の性別選択は禁止*4しています。

日本は伝統・文化に重きを置く、保守的な考えが大きいです。

制度的に産み分けができるようになれば、天皇家の”男系”の話にも飛び火しちゃう可能性も孕んでいますので厄介です。

”男系””女系”の意味

www.multilingual-doctor.com

産み分けのデメリット

子供の産み分けを望む声がかなりあるものの、実際完全自由にしてしまうと、当然バランスが崩れてしまいます。

いい例が、中国で行われていた一人っ子政策です。

一人しか子供を持てない環境で、農村などでは力のある男児が望まれるわけです。しかし、女児を妊娠すると・・・中絶したりもしました。

その結果、中国では男児>>女児となり、男女の数のバランスが狂い、結婚できない男性が溢れています。

男女バランスが崩れる

中国・河南省の泌陽県の農村に至っては男女比10:1というのもあるようです。

男性は農業のため残りますが、女性は都会へ出ていくため、農村部ではこのような状況が起こるようです。

しかし、1750万人の男性が結婚できないとなると、どうなるか・・・

東南アジアから『嫁を買う』*5わけですね。すると、その国でも男女比が狂い・・・( ゚Д゚)

さいごに

いかがでしたか?

男女産み分けについては、着床前診断の技術を用いれば8割可能という時代になっています。しかし、『できる』と『やる』は違います。

自然なものを人為的に変えると、遅れてそのツケを負うことになるかもしれません。

では、また(^^♪