マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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【サク読み】主治医が女性だったらラッキー??

3月8日は国際女性デーです。

てなわけで、今日のテーマは”女医”に関するある有名な研究結果を紹介します。残念ながら「女医の性格」とか「女医の結婚相手」とかそういう週刊誌的な娯楽情報ではないです。笑

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女性医師は増えている

現在の女性医師の割合は大体20%くらい*1です。

1990年代に入ってから、女医が増えてきていて、20-30代の医師の中では35%くらい*2となっています。

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日本では女医はまだ少ない

世界ではイギリスとドイツで約45%、OECD加盟国の平均でも約45%、アメリカで約34%ほど*3と、日本はまだまだ少ないんです。

ちなみに、看護師はでどうでしょうか?最近、男性看護師も増えていますが、やはり9割以上が女性*4です。

女医なら死ににくい?

医師の性別と患者の死亡率の結果は世界でも注目を集めています。

その中で今回は2017年に発表された、主治医が男性と女性で患者の死亡や再入院に差があるのかという論文*5です。

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主治医の性別は影響するのか

ふむ、なかなか炎上しそうな予感プンプンの研究ですな~笑

さて、結論を先に見てみましょう。

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主治医が女性なら死亡・再入院率低い

主治医が女性だと、高齢患者の死亡・再入院率が低いということがわかりました。

しかし、なぜ女医の方がいい結果になるのでしょうか?もう少し詳しく見ていきましょう。

研究方法

この論文はハーバード大学医学部からの研究内容です。

アメリカの急性期病院に内科に入院した患者について、2011年1月~2014年12月までの4年間のデータを用いて調査したものです。

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調査方法

なぜ65歳以上かというと、ま、当然若者が入院する可能性が低いのが1つです。あとはデータの問題ですね。

アメリカは日本のように国民皆保険はなく、民間の保険に加入して治療費を払います。

65歳以上はMedicareという公的医療保険制度があるので、その患者データを利用したということです。

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アメリカの公的医療保険

また、主治医の専門分野による知識・力量の差を減らすために総合内科医に限定しています。

結果①

約5万8000人の医師がリストに上がっており、その男女比はおよそ2:1となっています。

平均年齢は女性医師が42.8歳、男性医師が47.8歳で、臨床経験では女性医師が11.6年、男性医師の方が16.4年となっています。

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研究内の医師の状況

真ん中の方にMDDOというものがあります。

これはですね、どちらも医師の資格なんですが、MDっていうのが日本の一般的な医師のイメージです。んで、DOというのはオステオパシーってやつで、ま、指圧とか整体とかをイメージしてもらえればわかりやすいかと。

9割以上がMDですが、診療行為内容に違いはなく、同等資格とされます。

結果⓶

退院後30日以内の死亡率を男性医師と女性医師で比べてみると・・・

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主治医が女性医師の方が死亡率低い

3つのModelに分けて計算していますが、すべてにおいて左側の女性医師が主治医であるときの死亡率の方が低いですね。

例えばModel 1では10.82%11.49%とわずかな差ですが、 p値が <0.001となっており、統計学的に有意な差になります。つまり、間違いなく差があるということです。

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主治医が女性医師の方が再入院率が低い

退院後30日以内の再入院率についても、同じように見てすべてのModelで女性医師が主治医の方が統計学的に有意に再入院率が低いとなりました。

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研究結果のまとめ

つまり、女性医師の方が全体的に若く、経験年数も低いが、退院後の死亡率や再入院率は女性医師の方が低かったのです。

考察

しかし、なぜそのような結果となったのでしょう。考察の部位を見てみましょう。

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女医の方が基本に着実

医学と言うのは科学です。様々なデータを解析して、そのエビデンスに基づいてよい治療を提供しようとする学問です。これをEBMといいます。1990年代以降の考え方です。

女医の方が若く、経験値が短い傾向にありましたが、その分、よりEBMの考えが浸透しているともいえます。

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EBMについて

エビデンスを無視して自分の経験や勘だけに頼るのは科学ではありません。コロナ禍でもエビデンスのない薬をゴリ推しする人がいますが、全く科学でないですね。

イベルメクチンの闇

www.multilingual-doctor.com

あと、女医の方が患者の話をよく聞き情報を得る量が多いという風にも書かれていました。たしかに、そうすることで、小さな火種を早めにキャッチして対応ができるというのも関係あるでしょう。

さいごに

いかがでしたか?

世界的に見て、日本の女医の割合は圧倒的に低いですが、増加中であります。

女医の方が、患者の話をよく聞き、また経験ではなくエビデンスに基づいた標準的な検査・治療を行う傾向にあることがわかりました。

今回のデータはアメリカの医師ですので、日本の医師にもある程度当てはまるだろうと思います。

ちなみに、20-30代の若手医師限定でやると男女差は出ないんじゃないかと思っています。というのも、エビデンスに忠実な医療が徹底的に叩き込まれている世代だからです。

 

あなたの主治医が女性だったらラッキーなのかもしれませんね。

では、また(^.^)ノ