ウイルス研究は非常に重要で、ワクチンや治療薬の開発に重要な情報を提供します。
ウイルスの研究には、安全設備の投資なども含め莫大なお金が必要となり、国からの助成金や企業からの資金提供により行えます。
新型コロナの国家非常事態宣言を終えたアメリカではこのウイルス研究への助成金に動きがありました*1。
背景の復習
これも何度もこのブログで扱った内容なのでサラっと。
ウイルスの遺伝子を操作して、強毒にしたり、人に感染しやすくしたりする研究を機能獲得試験といいますが、これは何重にも厳格な安全策が取られたBSL-4というレベルの研究室で行われます。
ところが、いくつかの米国内研究室で不適切な取扱いが見つかり、2015年オバマ政権で国内での危険ウイルス研究を3年間中止しました*2*3。
それでも、危険ではあるもこのようなウイルス研究は今後のためには必要なのも事実です。そこで、2015年に完成した武漢ウイルス研究所の新施設に、アメリカは370万ドル(うちコロナウイルス関連は60万ドル)の資金提供*4し委託することにしました。
これを仲介したのが、ファウチさんとダスザックさんです(下図参照)。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)がダスザック氏のエコヘルスアライアンス経由で資金提供しました。
今回の報道は、ここから話がスタートします。
▼当ブログは研究室流出説支持▼
研究費の再開
そもそも、武漢ウイルス研究所への資金提供を行った目的は、2003年に起きたSARSウイルスの研究でした。
ところが、2019年末に武漢で新型コロナ感染症が発生し、世界に広がり始めました。
トランプ大統領は、武漢ウイルス研究所からの流出を強く疑い、2020年4月、資金提供を中止*5しました。
次のパンデミックに向けて研究をしなければいけないと考える研究者らが多いのは当然ちゃ当然です。
先日、国家非常事態宣言が終了し、バイデン政権は3年ぶりにコウモリウイルスの研究費を出すことを決めました。
今回もまた、エコヘルスアライアンスに資金提供しますが、危険なウイルスの混合はなし!!でという条件がついています。
要は、機能獲得試験はしないことを条件に研究費を与えますということですな。
武漢研究所はナシ
そして、今回の研究費提供では、以前から安全対策のユルさが指摘され*6、さらに『研究室流出説』が疑われている武漢ウイルス研究所は資金提供の対象から外れました。
正直、これは政治の兼ね合いもあるでしょう。
10年前くらいは、アメリカは中国をまだ下に見ていて、『安い労働力』を求め、中国へ近づいてきましたが、中国の経済力・影響力が大きくなった今、アメリカは中国と距離を置くようになっています。
仲介するエコヘルスアライアンスは今後シンガポールの医大と提携し、主にそこでコロナウイルスの研究を行うことになります。
さいごに
いかがでしたか?珍しく短い記事ですが、たまにはいいもんですな。
また将来新たなパンデミックが起こるでしょう。それがいつかわかりません。
またそれが、インフルエンザの変異なのか、コロナウイルスの変異によるものかも予測できません。
こう考えると、長期に研究をストップするのはよろしくないという判断です。
そして、世間が注目する『研究所流出』によるパンデミックの不安が消えない間は、『機能獲得試験禁止』『武漢研究所除外』などの条件付きでの研究としないと、政権も支持率低下につながる恐れがありますし・・・
ま、妥協案といったところでしょうね
では、また(^^♪
*1:https://www.foxnews.com/politics/nih-restarts-bat-virus-research-grant-funded-wuhan-lab-coronavirus-testing?intcmp=tw_fnc&s=09
*2:https://www.bbc.com/news/world-us-canada-42426548
*3:https://www.science.org/content/article/us-halts-funding-new-risky-virus-studies-calls-voluntary-moratorium
*4:https://www.hsdl.org/?abstract&did=837679
*5:https://www.politico.com/news/2020/04/27/trump-cuts-research-bat-human-virus-china-213076
*6:https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/04/14/state-department-cables-warned-safety-issues-wuhan-lab-studying-bat-coronaviruses/