近年、中国では新しい”タンピン族”という人々が登場しています。
どんな人達なのでしょうか?早速学んでいきましょう(^^)
996工作制
まずは、背景を知る必要があります。
中国での労働に関して知っておくべき単語は996工作制です。
これは、朝9時に出勤→夜9時に退勤を週6日働く、という雇用制度のこと*1です。
中国内での労働時間は法律で週に44時間を超えてはいけないこと*2となっています。しかし、996工作制では週72時間+αの労働時間となるわけで、そもそも労働法に違反しているのです。
2016年、58同城という企業で996工作制が採用されていることが明らかになると、他のIT企業でも次々と同じような状況であること*3がわかっています。
また、その後の調査では、996ではなく、実態としては807や716に近いという結果*4もあります。つまり、週110時間労働です。
中国では受験戦争もあり、それ乗り越えて大学・大学院まで出ても、割のいい職につけるのは一握りだけです。
多くの人はこのような低賃金での過労をし、近年の中国経済の発展を支えているのです。
タンピン族
タンピン(躺平)というのは、中国語で「寝そべる」という意味です。
現在の中国社会を見てみましょう。
インフレや、土地・家の価格上昇もあり、若者たちは将来への希望・期待を失い、挫折を味わっています。
そこに来て、低賃金で過労の996工作となると、結婚して子供を持つとか、家を建てるなんて現実的でありません。まさに”夢”のマイホームです。
このような社会への反発もあり、恋愛・結婚・マイホームを諦めて、高みを目指さないで生きるという考えが若者の間で芽生え始めました。何もせずに寝そべろう、これがタンピンです。
同時に、タンピン活動は、若者が996工作を拒否するという抗議活動でもあるのです。
インフルエンサー
ことの発端はSNSでした。
2021年、あるインフルエンサー(駱華忠 当時31歳)が「寝そべるのは正義だ」と掲示板に書き込みました。
そして彼は、1日2食で、月に200元(約4200円)で生活をし、2年間仕事もしていないと言いました。(※たまぁに働くらしい)
彼によると、仕事・社会に束縛されずにただねそべってのらりくらり暮らすのは身体的にも精神的にも健康的だと*5。
タンピンは働きすぎず、目標を低めに設定し、心にゆとりを与えるという、スピリチュアルな運動で、多くの若者に支持されています。
その背景には、コロナ禍による経済成長の鈍化に加え、冷えきった米中関係での経済見通しの悪さが拍車をかけています。
若者のインタビューでは、近年の中国では土地などの価格が急騰し、貧富の格差がどんどん拡大するというおかしな状況であり、このような社会で真面目に働くのはバカらしいと、タンピンが若者に受ける理由を話しています。
中国の現在のシステムでは、金持ちと権力のある者たちだけが多くの資源を独占し、労働者階級は長時間働けど給料は上がらず、子供を持つことすら難しいのが現実だといいます。
ひとりっ子政策はもう過去の話です、子供を作る余裕がないのです。
中国政府の危機感
タンピン族の広がりに中国政府も危機を感じています。
なんとかして、若者をタンピンをやめさせ、働かせたいのです。しかも低賃金で。
そうして中国は人件費を抑えて商品の価格を低くし、世界にmade in Chinaをたくさん買わせてきました。
我々日本人も、中国製の安いものをたくさん享受してきました。
▼高級ブランドのひ・み・つ▼
そしてタンピン族というワードは2021年に中国内で流行語TOP10に選ばれるなど、若者の中では支持は強いです。
ついに、中国政府はタンピン族の集うSNSを使用停止しました。
直近の話でもタンピン族への締め付けが少しずつ厳しくなっている*6ようです。
さいごに
いかがでしたか?
我々の生活の中で made in China の商品であふれています。
少しでも安く!を追求した結果は、当然こうなります。中国は人件費がむちゃくちゃ安いのです。
裏を返せば、労働者の健康など考えていません。国が、上層部が、潤えばいいのです。
国の体制に若者が反発する・・・
過去には天安門事件があり、多くの被害者を出しました。そういう武力的なものではなく、非武闘での新たな抗議運動がタンピン族を生み出したのでした。
では、また(^^♪
*1:https://web.archive.org/web/20190331172051/http://www.xinhuanet.com/fortune/2018-06/03/c_1122929624.htm
*2:https://zh.wikisource.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%8D%8E%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD%E5%8A%B3%E5%8A%A8%E6%B3%95
*3:https://web.archive.org/web/20190331172151/http://www.xinhuanet.com/yuqing/2018-03/30/c_129840094.htm
*4:https://wisdom.nec.com/ja/business/2019042601/index.html