マルチリンガル医師のよもやま話

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日本の第5波はなぜ収束したのか?

世界中で対応に苦慮しているデルタ株感染が日本で急減し収束している正確な理由はまだわかっていないのです。

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感染に影響する因子

コロナの感染拡大に関係する因子はある程度想定されています。

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感染に影響する主な因子

ゆえに、それらを意識した対策が取られていますね。そして、これらの対策は同時に行われるので、感染が落ち着くと何がどのくらいの効果があったのかわかりにくいのです。

ワクチンが開始される前(第3波など)は、地理的に近い日本と韓国は同じような感染の波をしていました。ウイルスの『周期性』など特性の因子ですね。(波は2か月周期と言われています)

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日韓の感染者グラフ波形の推移

しかし、ワクチンの要素が加わると、特に今回のデルタ株蔓延以降(上グラフで赤線部)、2国で大きく形が違っています。

韓国の9月末の実効再生産数が1.2ですからまだしばらく高波は続きそうです。

日韓のワクチン

では、2国のワクチンの状況を比較しながら見ていきましょう。

日本はファイザーとモデルナのmRNAワクチンがメインです。最近になって一部の人たちでアストラゼネカ製を始めました。

一方の韓国では、"色々"あってアストラゼネカ製が約30%, mRNA型が約70%*1という違いがあります。

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2021年9月初めの状況

日本で第5波は8月後半には減少に転じていました。そこで、9月初めのデータで2国を比較してみましょう。

ちょうど9月4日の韓国の接種状況の記事*2があるので、それを参考にします。

すると、1回接種率は日韓同じですが、2回接種完了の数字が大きく違います

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韓国の接種間隔

韓国ではワクチン不足で2回目の分を別の人の1回目に回して打ったからです。

「日本は接種遅い」と偉そうに宣伝したので、必死で一回目接種者だけは増やしたということですね。

しかし、気になるのは、日本も9月初めに接種完了が46%でデルタ株感染が収束に向かうというのもなかなか腑に落ちません。

ワクチンの効果

ワクチンが効果あるのは疑う余地はありません

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ワクチンの効果

アメリカCDCの資料を見れば、水色の接種完了者は、未接種・未完了者と比べて圧倒的に入院者・死者が少ないのです。デルタ株以降もこの傾向は変わりません。

デルタ株もワクチン効果あり

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ワクチンにより広がりにくくなったとは言え、9月の日本は決して集団免疫に達するほどの接種率ではありませんでした。

他の因子を探してみましょう。

ワクチンだけじゃない

日本以上にワクチン接種が進んでいた国を見てみましょう。

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英国の感染状況

イギリスは接種完了率が65%と今の日本より少し高い所で横ばいになっています。7月19日に各種規制撤廃し、デルタ株の到来で感染は高止まりですね。しかしワクチンの効果で死者は少なく抑えられて*3います。

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イスラエルの感染状況

イスラエルの接種完了率も今の日本に少し毛が生えたくらいです。こちらも規制撤廃後に感染爆発しました。右の死者のグラフを見ると急増に見えますが、よく見ると1日に20~25人程度です。

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シンガポールの感染状況

シンガポールは人口 570万人ほどの小さな国です。そのためワクチン接種は一気に進み80%以上の接種完了率を誇っています。そこで、8月に規制撤廃したところ、現在1日に2000人を超える感染者が出て、それに伴い死亡者数も過去最多、と言えど、5人です。

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カナダの感染状況

カナダでは接種完了率が70%を超えています。デルタ株で夏以降感染者は増えましたが、やはり致死率は過去より抑えられています。

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with コロナを選んだ国々

そう、これらの国は一気に規制緩和した為、感染爆発となっていますが、死亡者は抑えられていることがわかります。現に日本でも第5波の致死率は0.3%*4と大幅に下がっています。

となると、日本の第5波の収束は忍耐強くマスクなど対策を継続しつつ粛々とワクチンを進めたことによるものなのでしょうか。

これは10月以降のの韓国が同じようになれば説得力があるかもですね!

実は感染しまくり?

もう一つ可能性としては、感染力の強いデルタ株で気づかないうちに感染しまくっていて、未接種者の多くの人にも既に抗体があるかもって説です。

インドでは、今年4月頃に感染爆発があり死亡者も大量に出ましたがその後、一気に感染状況が改善しました。

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インドの感染状況

多いときには1日に40万人以上の感染者が出ていました。現在の接種完了率18%のインドでなぜ感染が落ち着いたのでしょうか。

実は、インドでは報告以上に感染者が多く、首都のムンバイでは9割以上の人が既感染*5ということが分かっています。

つまり、デルタ株に対して"集団免疫"に達したのです。

デルタ株の集団免疫

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では、日本ではどうでしょうか?ワクチン完了者+既感染者が人口の8割くらいにいっていれば、デルタ株でも集団免疫に達している可能性はあります。

答えはNOです。

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兵庫県大規模調査結果

7-8月に神戸大学が行った大規模調査*6でコロナ感染により得られた抗体は2.1%, ワクチンにより得られた抗体が38.7%で合わせて 40.8%が抗体を持っていました。

東京はもう少しだけ高いでしょうが、インドのような集団免疫はありません。

ウイルス自壊説

ここ最近よく耳にするやつです。

コロナウイルスはRNAウイルス変異しやすいです。変異は感染が起こって体内で増殖するときの複製ミスなので、感染が爆増しているところでは当然変異も起こりやすいです。

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エラーカタストロフの限界

しかし、この変異が起こりすぎていると、ついに変異できなくなり自壊するという概念をエラーカタストロフ*7といいます。

しかし、アメリカやイギリスなど規制撤廃した国の方が感染多くてコピーミスが多いはずですよね?日本の方が先に起こるのは理論上おかしいですね。

さいごに

色々書きましたが結論は、

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庶民の私にはわからない

合ってますかね古文?笑

しかし、日本人の徹底した辛抱強い感染対策を緩めることなく、粛々とワクチンを進めているのが正攻法でうまくいった?のかもしれません。

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第5波での実効再生産数

元々1人の感染者から5~7人に感染させるほどの感染力と海外で言われてきたデルタ株は日本に入ってくると、人種の影響?、マスクなどの感染対策、徐々に進むワクチン接種で実効再生産数は最大でも1.79で済みました。そして、ワクチン接種が進んで9月1日では1を切っていますね。

今後について1点気になることは、今までは日本で変異株が流行する前にはアメリカやイギリスなどでそれらが流行していたので予想がつきました。いまやアメリカもイギリスもまだデルタ株真っただ中です。

日本の次の波はどの変異株なのでしょうか。

免疫逃避として恐れられていたミュー株は、アメリカではデルタ株に勝てず消滅*8しました。

感染力の強いラムダ株もイギリスではデルタ株に勝てず、いままで9件見つかった*9のみです。

となると、残存デルタ株からのマイナーチェンジがしばらく幅を利かして、最終的に”季節性のかぜ”になるというのは有力な説なのかも。

コロナ2022年終息?

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では、また(^.^)ノ