マルチリンガル医師のよもやま話

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2022年 コロナ終息?その後は?

終わりの見えないコロナ禍において、ここ最近気になる報道が目につきます。『コロナ2022年終息』説や『デルタ株が最後の変異』説といった明るい話題です。

ちなみにこれは、ネット上で誰かが適当に言ったことではないんです。

今回はこれらの説の真意を見ていきましょう。

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元FDA長官

デルタ株が最後の感染拡大?

アメリカのFDA(食品医薬品局)の元長官である、スコット・ゴットリーブ氏がCNNニュースの中*1で述べた発言です。この内容をしっかりと見ていきましょう。

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『デルタ株が最後の感染拡大』

さすが、元長官。適当なことは言えませんので、しっかりと保険を付けていますね。

「想定外のことが起こらなければ」。

残念ながら誰もが初めて経験するコロナウイルスのパンデミックの将来は当然誰にもわかりません。”想定外”のことだって起こるかもしれません。

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『想定外の変異は起こらないと思う』

続けて、自分の意見として『想定外の変異を起こらないと考えている』と言った上で、再度デルタ株が最後の感染拡大となり、最終的に季節性のかぜになるだろうと述べています。

第2のインフルエンザ

さらに、コロナウイルスは、冬の低温・低湿度で「さらに感染拡大の可能性が高い」とし、今年の冬はさらなる感染者数が出るだろうと言います。

そして、最終的には”第2のインフルエンザ”として冬に広がるかぜになるとも言っています。

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第2のインフルエンザ

毎冬にインフルエンザとコロナが同時流行するようになれば、高齢者を中心に死者がかなり増えることが想定されます。

そうなれば、高齢者は毎年、インフルエンザとコロナのワクチンを打つことになるんでしょうね。

若くて健康⇒ブースター不要

www.multilingual-doctor.com

とりあえず、パンデミックが終わり、季節性のかぜになったならば、副反応が少ない不活化ワクチンで1シーズン凌げばいいわけですし、米・ノババックス社はインフルエンザとコロナの混合ワクチンの治験*2を既に始めています。

近未来の冬

インフルエンザとコロナが待ち受ける近未来の冬についての言及もありました。それは、現在行っている対策を冬を中心に行うというものです。

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近未来の冬の対策

つまり、彼は、コロナのパンデミック収束後も、完全には元の生活には戻れないということを言っています。少なくとも冬には強化した感染対策が必要と言っています。

ワクチン共同開発者

コロナは弱毒化し『かぜ』に

また、同じようなタイミングで、アストラゼネカのワクチンの共同開発者である、サラ・ギルバート教授(オックスフォード大学)が医学会のウェブセミナーで似たことを言っています。

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コロナは弱毒化し『かぜ』になる

ワクチン開発者がこんなこと言うと、反ワクチンの言う陰謀論『ワクチン打たすために恐怖を煽る』理論が崩れちゃって残念ですね~(笑)

冗談はさておき、彼女の発言の続きを見ましょう。

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いつ普通のかぜになるのか

今の段階で、いつコロナが”普通のかぜ”になるかはわからないが、それまでの間、コロナをどう管理するか(例:死者を少なく)が問題だと言っています。

免疫回避は可能性低い

そして、彼女もまた、ウイルス変異により『免疫逃避』の心配はそれほどしていないと言っています。

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免疫回避は可能性が低い

ま、これはですね、基本に立ち返ってコロナについて考えればわかるんです。

新型コロナウイルスが、細胞内に入るときに使う扉はACE2受容体というものです。ここにスパイク蛋白が引っ付くことで、細胞内に入り込みます。

いま、コロナで起こっている変異は、このスパイク蛋白の遺伝子の複製時のエラーです。

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免疫逃避が起こらない?理由

今回のコロナワクチンは、このスパイク蛋白を抗原に抗体を作りますね。つまり、この抗体が”完全に”効かなくなる(=免疫逃避)には、スパイク蛋白そのものが跡形を残さず変化するという意味です。

となると同時に、そのスパイク蛋白はACE2受容体に引っ付けなくなり、ウイルスが細胞内に入れず感染できないということです。そうなってしまうともう新型コロナ感染症は収束ではなく終息ですね。

モデルナCEO

パンデミックは来年収束

最後にモデルナのCEOの9/23の発言*3をご紹介しましょう。

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モデルナCEOの発言

まず、彼はCEOであり研究者でないことに留意してください。

最終的にインフルエンザのようになるというのは今までの人と同じですね。そして、1年以内に元の生活に戻ると考える根拠は、1年後くらいにはワクチンが世界中に行き届くほど増産できているからというものです。

実はこれについては、ファイザーのCEOも同意*4しました。

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ファイザーCEOの発言

ブーラ氏は最終的にインフルエンザのような季節性のかぜになり定期的なワクチン接種が必要になるだろうと見解を示しました。

ワクチン格差

お金のある国はワクチンを契約してどんどん打っています。日本も着実に接種が進み、9月24日時点で全国民の55.8%65歳以上の88.8%が2回接種済み*5でアメリカを超えています。

一方でアフリカ全体で接種完了は4%未満(9月中旬時点)と報告*6されています。

先進国だけで感染が落ち着いても、それ以外の国の接種が進まないといけません。感染が急増している地域では、ウイルスが複製時にミス(=変異)が起こりやすいからです。

啓蒙活動も重要

アフリカなど貧しい国は直接ワクチンを国民の数だけ買うことができません。COVAXというWHO主導のプログラムで、先進国らがお金を出し合ってワクチンを提供します。

しかし、アフリカで接種が進まないのはワクチンが足りないだけが理由ではないのです。

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読売新聞オンラインより引用

9月24日の読売新聞の記事*7は非常に参考になりました。

2018年にエボラが流行したときは接種希望者が殺到したそうです。つまり、彼らからすればエボラは死に至る怖い病気だが、コロナはそれほど怖くないと考えているということですね。

支援というのはワクチンを贈るだけではなく、病気についての啓蒙活動も重要ということがわかります。

さいごに

いかがでしたか。

以前からよく耳にしていた「最後は普通のかぜになる」という発言が、ここ最近になって急に研究者から耳にするようになりました。

ワクチンが完全に効かなくなるような変異が起こると、同時に受容体にひっつけず細胞内に進入できず感染できません。この理屈から行くと、とんでもない変異は起こりづらいのです。

彼らの言う通りになることを願うばかりですね。

来年には世界中でワクチンが行きわたる公算であると言われていますが、アフリカでの状況を見ると啓蒙活動が非常に重要なことがわかります。でなければ、彼らの予想は外れることになります

いずれにしてもまた近い内に次の感染の波は来るでしょう。『普通のかぜ』になる日まで、私たちも気を抜けませんね

 

では、また(^^ノ