マルチリンガル医師のよもやま話

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南アフリカ発 新変異株:オミクロン

ここ最近の日本は、コロナ前の世界にタイムスリップしたような、束の間の平和が訪れていました。(ま、経済の話は抜きで・・・)

ところが、またまた何やらきな臭い話が聞こえてきました。南アフリカで見つかったオミクロン株です。

まだ、多くはわかっていませんが、今わかっていることを予習しておきましょう。

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首都:ヨハネスブルク

デルタ株王者陥落?

感染力の強さから、登場から現在まで世界中を席巻しているデルタ様ですが、もしかしたら王者の座を明け渡すことになるかもしれない・・・

そんな噂が出始めているのが、今回南アフリカで見つかったオミクロン株です。その前にニュー(N)クサイ(Xi)があるのですが、ニュー株は”新種のウイルス”という響きで勘違いを生む可能性、クサイはXiとつづると、中国の習近平Xi Jinping)のウイルスみたいになるから飛ばしたとか?(笑)仲いいねWHOと中国・・・

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オミクロン株

2か月前に、ワクチン開発者やいくつかの研究者たちの考えをご紹介しましたが、「デルタ株が最後の大流行の変異株だろう」と口を揃えて言っていました。

デルタ株が最後のメイン変異

www.multilingual-doctor.com

アメリカのFDA(食品医薬品局)の元長官である、スコット・ゴットリーブ氏がCNNニュースの中*1で次のように発言していました。

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デルタ株が最後の主要な変異に

残念ながら、想定外のことが起きた?のかもしれません。

しかし、このオミクロンに関してはまだ情報が少なく、これから1-2か月かけて色々わかってくるのでその時までは何とも言えないでしょう。

WHOの発表

では、オミクロン株と名づけたWHOの発表*2を見ていきましょう。

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11月9日の検体で初検出

11月9日に検体採取したものの遺伝子解析からデルタ株とは違うものを発見し、11月24日に新たな変異株であるとされました。

どうやら、それ以降、南アフリカの各地でこのオミクロン株の検出が増加しいているのです。

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デルタ株以上の感染力??

このオミクロン株については、スパイク蛋白に32か所の変異が起こっていることから、ワクチンや既感染で得た免疫がしっかりと反応できない可能性があるとして、「再感染のリスクが高い恐れ」があると言っています。

そして、コロナの診断に使うPCR検査では3つの標的遺伝子を見つけて検査するのですが、オミクロン株はそのうちの1つのS遺伝子が検出しないという特徴が見つかりました。

今までの変異株と比べても早いペースで検出が増えており、感染力が非常に強い可能性が懸念されているようです。

免疫能が低下してるHIV患者がコロナに感染し変異が生まれたという話*3もあります。

免疫逃避能

懸念されている”免疫逃避”ですが、デルタ株の時もそうでしたが、変異によりいくらかワクチンの効果は下がります。しかしながら効果が0になるということはまずなさそうです。

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アストラゼネカワクチン共同開発者

アストラゼネカのワクチンの共同開発者である、サラ・ギルバート教授(オックスフォード大学)は秋の医学会のウェブセミナーでこのように述べていました。

これは、当然で、ワクチンはスパイク蛋白に対する抗体をつくるので、完全に無効になるレベルであれば、認識できないレベルまでスパイク蛋白が変わってしまっていることになります。

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完全なる免疫逃避なら感染できない

つまり、それほど変異したスパイク蛋白はACE2受容体に結合できず、そもそも感染できません。ということは、感染が起きているということは、理論上、ワクチンによる抗体は、たとえ効果は下がれど0になることはないということです。

感染力が強い?

ワクチンがどのくらい効果があるのかなどについては、今各社が研究を既に開始しております。ファイザーらは2週間ほどで結果がわかると言っています。

いずれにして南アフリカでは感染力の強いデルタ株からオミクロン株に置き換わりつつあることから、デルタ株以上の感染力である可能性は高そうです。

ただ、グラフを見るとデルタ株を押し退けて増えたと言うより、デルタ株が落ち着いたあとにオミクロンが出てきたと読み取るのが正しいような。。

それならば、『感染力がめちゃ高い』というのも、まだ不明ですね。

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南アフリカの状況

問題は毒性、つまり重症化率や致死率です。これらについてはまだ多くわかっていません。これから上図右側の死者の波がデルタ株と比べてどうなのか?というところに注目です。

もう一点、南アフリカではワクチン接種率が21%ほど*4とかなり遅れています。なので、現地での致死率などがそのまま日本には当てはまらないことにも留意が必要です。

さいごに

オミクロン株について今わかっている点を簡単にまとめてみました。

まだ見つかって間もないため、情報が少なく、感染力・重症化率・ワクチン効果など判断はできていない状況です。

既に香港、ベルギーなどでもオミクロン株は検出されています。グローバル社会なので、日本にも入ってくるのも時間の問題でしょう。(広がるかどうかは別として)

しかし過度に心配する必要はなく、私たちは結局今までと同じ予防対策を行うだけです。

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過度な心配は不要

この夏あれだけ『免疫逃避』『最恐変異株』とかメディアが煽っていたラムダ株はどうなりましたか?すっかり音沙汰ないですね(笑)

つまり、何もわからないいまは静観のみです。杞憂で終わればいい何よりですが・・・

感染力はより強くて、致死率は低くなっていれば『かぜ』にさらに一歩近づいて嬉しいのですが~また情報を追いましょう。

では、また(^^オ