マルチリンガル医師のよもやま話

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【サク読み】デルタ株とワクチン効果

現在世界中で甚大な被害を出しているインド由来のデルタ株(δ株)は、日本でもかなり広がっています。1日あたりの”感染者数”が過去最多を記録しています。 

ものすごい感染力があることがわかりますね。今回はδ株にワクチンが効くのかどうかについて見ていきましょう。

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δ株の感染力

δ株は感染力が強いことが分かっています。従来株の1.95倍の感染力がある*1と言う報告があります。

その計算で行くと、集団免疫を得るためには8割以上の人の接種(または感染)が必要というお話は前回しました。詳しくは下記ご参照ください。

デルタ株と集団免疫

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感染力は強いが、世界的に見て死者は爆増していません。これはワクチンの効果と考えられますね。もちろん、ウイルスの『毒性』が低いという可能性もあるのかもしれません。

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東京都の死者数

日本でも、例えば東京では今年の1~2月と比して、今は死者が極めて少ないです。重症化しやすい高齢者のワクチン接種が進み、”感染者”の大部分が未接種の20-30代だからです。

ただ、問題は40-50代のワクチン接種がまだあまり進んでいないことです。今後この世代の重症化が懸念ですね。

ワクチンの有効率

もともと、新型コロナのワクチンを作るときにアメリカでの承認条件は有効率50%以上でしたが、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンはなんと有効率95%という衝撃でした。(インフルエンザのワクチンで40-50%と言われています。)

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有効率95%とは

『有効率95%』というのは、5%の人には効果がないと勘違いされますが、そうではありません。接種した人と接種していない人を比べたときに発症者(≠感染者)を95%減らす効果があるという意味です。

つまり、ワクチン打っても”感染”することはあります!

δ株で効果低下

δ株に対するワクチンの効果については色々な情報が飛び交っております。

例えば、イスラエルの発表ではファイザーワクチンはδ株に対して有効率が64%に落ちるという報道*2がありました。しかし、重症化防止の効果は93%以上と言っています。

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イスラエルの1日当たりの死者数

ふむ、↑↑ 現に死者は増えていませんね。

さらにイスラエル保健局は、その後、ファイザーワクチンのδ株への有効性は39%まで下がったと発表*3しました。

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「有効率低下」の前提条件

これについては、考えなければならないのは上の図です。イスラエルでは、6月に入って、マスクソーシャルディスタンスを撤廃しています。(現在は感染拡大で再度義務化されています)

つまり、ワクチンだけのせいではなく、基本的な感染対策がなくなったことで大きく数字が下がったと考えるのが普通です。

疑問の声

また、このイスラエルの発表には疑問の声*4が上がっています。実際、他の国の発表(後述)と大きくかけ離れています。

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イスラエル発表への異論の1つ

ハーバード大学の公衆衛生学、レベッカ・ワイントラウブ準教授*5は上記のように、イスラエルのワクチン接種率が高いことによる計算への影響を指摘しています。

イスラエルでは成人の8割が2回接種完了しています。つまりは、非接種者の割合が少ない状況ですね。

そんな中で、”感染者”の濃厚接触者を検査して『陽性』となる人は、接種済の人である可能性は他国より高くなるよねと説明しています。成人の8割が接種済だから。

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イスラエルの報告に対する仮説

そして、ワクチン接種が進み感染状況がよくなると、未接種の人達でもかかりにくくなりますよね?

となると、接種した人としていない人の差が縮まる、つまり、有効率は低くなるわけです。ま、これが『集団免疫』の根本ですな。

いずれにしてもイスラエルはすべてのデータを公開していないので、何とも言えません。

英国のデータ

他の国からもδ株に関するワクチンの有効率の発表があります。カナダからの報告*6では、モデルナのワクチンは1回だけでもデルタ株に72%の予防効果、ファイザーは56%あり、1回だけの接種でも十分に効果が高いと言っています。

さて、そろそろ本題に行きましょう。

ちゃんとした査読された医学論文での発表に目を向けましょう。

イギリスからの報告で2021年7月21日に超名門雑誌に掲載されたものをご紹介します。

NEJM

NEJMと聞けば医師ならだれもがハッとする超名門です。2020年のインパクトファクターは衝撃の91.245です。一般に5以上で ”一流雑誌”と言われます。

インパクトファクター医学論文

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それではこの the New England Journal of Medicine (NEJM) の論文をサラッと見ていきます。 

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α株とδ株に対するワクチン有効率

イギリスでのα株δ株に対するファイザーとアストラゼネカのワクチンの有効性を比較した研究です。

もう、早速、結果に行きましょうか(笑)

δ株にも有効

今回の研究ではα株が1万4837件、δ株が4272件のデータが得られました。

本論文のFigureを拝借して、文字が見にくいところを分かりやすく日本語で追記しました。

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論文より参照、加筆 Figure 1

この図が結果の全てです。

まず、全種というのはワクチンの種類に関わらず接種済みの人たちです。ファイザー接種済み、アストラゼネカ接種済みと3つのグループで見ています。

そして、図の左半分は1回のみ接種の場合、右側は2回接種とで分けられています。

1回のみ接種ではいずれのワクチンでもα株よりδ株の方が有効性がかなり低いですね。

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2回接種で有効率は高い

結果のまとめは上図のようになっています。ファイザー製もアストラゼネカ製も1回接種だけでは、δ株への有効性は低いけれど、2回接種すれば、α株とδ株の有効性は変わらないです。

この結果は過去に報じられてきたものとほぼ同じ値になります。

ひとまずは安心してよさそうですね~

では、また(^.^)ノ