マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

MENU

実録『5回目のコロナ感染』

Long COVID(コロナ感染による長期後遺症)について色々な知見が集まってくる中で、「コロナはただの風邪」「後遺症なんて気持ちの問題」という主張を続ける人たちがいます。

本当にそうなのか?

今回は、自身のコロナ感染の体験談を語ったアメリカ地方紙の記事*1から学びます。

5度目の感染

彼の名前はRoger Marlot

2024年の1月、5回目のコロナ感染をした時のことでした。

ま、日本からしたら「え、5回目?」って、まずそこからツッコミたくなるのですが・・・ま、カウントしてないだけでめちゃくちゃ蔓延している証拠です。話を進めましょう。

5度目のコロナ感染

彼の症状としてはそれほどひどくなかったのに、今回は症状は一向に改善しませんでした。

そして2ヶ月が過ぎたとき、存在しないはず”のアレであると確信しました。

アルペンで後輩とスキーを楽しんでいましたが、終始息が苦しく、片頭痛の襲来に苛まれていました。

しかし、後輩の手前、ショボいところは見せれないので必死でスキーを続けました。

今までにたくさんの山々を登ってきて、トライアスロン経験だってあり、体力だけは自信があるRogerは異変を感じました。

コロナ後遺症

世間では、コロナ感染による後遺症があることが言われていました。

「倦怠感や体の痛みで数週間〜数ヶ月の間、寝込み続ける人もいる」だとか、「検査をしても、医師たちは特段の異常は見つけられず、心機能も、肺の聴診も、脳の画像検査でも障害部位は認めないことも多い」とかを耳にしたこともありました。

新型コロナウイルス感染症の後遺症

しかし、Rogerは、そんなの全くの作り話だと思っていました。

いざ、自分が5回目の感染以降に、倦怠感・体の痛み・運動機能の低下を目の当たりにして初めて、”存在しないはず”の「後遺症」という言葉が頭によぎったのでした。

実際2024年1月にNature Communications という医学雑誌に掲載された論文*2によると、「運動能力の低下」は後遺症の重要なサインとして書かれています。

「運動能力の低下」は後遺症の重要なサイン

その論文では、基礎疾患のない平均年齢41歳の被検者らを調査したもので、コロナ後遺症を患った患者は、日に日に体力・筋力・運動量が低下することが示されています。

筋肉の損傷

コロナ後遺症患者を調べてわかったのは、筋肉の損傷が多いことでした。

これが、後遺症で倦怠感や体力の低下に関係していると考えられます。

後遺症患者は筋損傷が激しい

コーネル大学の分子生物学者の説明を見てみましょう。

通常、健康な人では、筋肉は傷ついて、その後、再構築されます。これが、筋トレで筋肉が大きくなるしくみです。

しかし、これが当てはまらない病気があり、筋痛性脳脊髄炎(慢性疲労症候群)と呼ばれるものです。これは、生来健康だった人が突然、回復しない倦怠感・疲労感などに苛まれるという病気です。

筋痛性脳脊髄症と酷似

原因には仮説があり、その中でも感染による影響も考えられています。コロナ感染による後遺症もこの疾患に類似しているのです。

最近、新型コロナウイルス感染により、細胞内のミトコンドリアが傷害されることがわかっています。

ミトコンドリアはすべての細胞に存在します。ゆえに、主に障害された細胞の種類によって、コロナ後遺症の症状も様々だとい考えられています。

複数回感染のリスク

さて、Rogerのように複数回感染すると後遺症のリスクは上がるのでしょうか?

一般的にコロナ感染者の約15%が後遺症に悩む*3言われています。

感染の度にそのリスクがあると考えると、当然複数回感染すれば後遺症になるリスクは上がります。

単純な計算からリスクを考える

わかりやすい考え方で、1回の感染で後遺症なく終わる可能性は85%ですが、2回目も後遺症なく終わる可能性は85%×85%で72%になります。

裏を返せば、2回感染すれば、28%位の確率で後遺症を患う可能性があるのです。

同様に計算すれば3回感染では39%の後遺症リスクだとなります。

もちろん、世の中そんな単純じゃないわ!というご指摘があると思います。実データも見ておきましょう。

実データでの後遺症リスク

で、カナダの大規模な研究*4を見ると、2回感染では25%、3回以上では40%の確率で後遺症に苦しむことがわかっています。

だいたい、私のザックリ計算と合致しますね。

ロシアンルーレット

さらに、アメリカ医学会の2023年の学会誌*5では恐ろしいことが報告されています。

『コロナをナメるな』

再感染する度に、糖尿病、腎疾患、臓器不全、精神疾患の発病リスクが上がることが分かったのです。

当該論文の著者は、「コロナはただの風邪だというのは間違いだ。コロナ感染は、(後遺症や続発症のリスクをもつ)ロシアンルーレットだ」とコメントしています。

実際、5回目の感染で後遺症で苦しむRogerは、担当医の言葉を思い出しました。

Rogerの担当医の言葉

その説明の通りだと、Rogerは痛感しているのでした。

さいごに

いかがでしたか?

コロナ感染のタチの悪さは、すでに世界中からいろんな報告がなされています。

コロナ感染で癌化?

www.multilingual-doctor.com

コロナ後遺症について

www.multilingual-doctor.com

www.multilingual-doctor.com

www.multilingual-doctor.com

経済を回すために、感染対策を切り捨てることを選んだ人類ですが、「見えなくした」だけで、コロナ感染により、大量の死者がでています。それにより、世界では平均寿命が2歳縮まりました*6

集まってきた情報から言えることは、コロナは決してただの風邪ではなく、可能ならば複数回感染は避けたいということです。

ただ、多くの場合は3か月くらい、長くても1年くらいでほとんど後遺症は治るという報告*7もあります。これは、イスラエルが国家レベルで調査した研究結果です。

 

では、また(^^♪