マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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二兎を追う者は一兎をも得ず?

2010年に撤退した韓国のヒュンダイ自動車が日本に再参入するようです。

残念ながら車に関しては詳しくないので関心は無いのですが、個人的な興味はこの名前についてですね。

実は『現代』は韓国語では현대 = ヒョンデ と言います。海外進出用に英語表記した際に英語でもヒョンデと読まれやすいように Hyundai としました。実際アメリカ人と話していると ヒョンデイとかホンデイと発音されています。英語圏ではある程度は意図通りですね。

これが日本に入ってくると、ローマ字読みされてヒュンダイと読まれているというわけですね。同じく三星(サムソン)電機もSAMSUNGは日本では『サムスン』に。

このように物事は意図したとおりに行かないことがよくあります。今世界中が必死で作っている新型コロナのワクチンも予想せぬ副反応などが出ています。

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原文からたくさん学ぼう

では、今回も英語の記事を元に話を広げていきましょう。まずは読んでみてください。

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NHK world より一部引用

そんなに難しい単語はありませんが、ニュースで頻出の単語や、知るべき単語がたくさんありますのでピックアップしていきます。

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チェック

influenza というのは イタリア語で influence(影響) です。昔ウイルスの存在が知られていなかった頃は、惑星などの天体の”影響” で起こると考えられていました。

会話では長いので、flu と言います。 get flu shot でインフルワクチンを打つ という意味です。

amid はニュースではしょっちゅう出てきます! amid the pandemic といった形です。 in the middle of と同じです。

最後に virus の形容詞は viral と言います。これで覚えるべきスラングがあります。 go viral は「ネット上で拡散される」などという意味です。

 

これだけの文章ですが学ぶことは他にもあります。黄色下線部を見ていきましょう。

高校の文法の復習で、関係代名詞の非制限用法とやら覚えていますか?笑

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ワンポイント

, which を見たらとりあえず前から訳せばいいんです。難しく考えずに , and it (or they) と思って読めばOK。会話では、pause と言って少し間を開けることで "," を表現していると思ってください。

非制限用法で重要なのは、文全体を修飾することがあるということです。たとえば

Tom broke the window, which made his mom angry.

このときの " , which ” は「トムが窓を割った」という前の文すべてを表しています。

 

長くなりましたが、もう一つ。日本語の「~以上」を言うときに注意しましょう。 over を使うと、その数字は含まれません!

10以上といえば、10, 11, 12, ・・・ですが over 10 は、11, 12, 13, ・・・です。なので、「65歳以上」と表すときは 65 years old or older などと使います。

 

65歳以上は優先接種

やっと本題にいけますね。(笑)

これから秋を迎えて気温も湿度も下がってくると、「風邪を引きやすい」季節になるわけですね。そうなると毎年のインフルも流行るでしょうから、そんな時期に発熱患者がいると、「インフル?コロナ?」(本文:which are hard to distinguish)とパニックになるわけです。

インフルはワクチンがあるので、できることからやっていこう!ということなのですが、今すぐに全国民分どさっと準備ができません。今、コロナ禍で貨物の飛行機などもかなり減っているんです。

そこで、厚生労働省が指針を出しました。コロナでもインフルでも重症化しやすい高齢者(65歳以上)を優先的に10月1日から flu shot を開始すると発表しました。

他の人たちは4週待ち

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65歳以上は10月1日より

65歳未満の人たちは、10月26日以降に開始するようです。もちろんそれらの中でも優先順位があって、医療従事者慢性疾患を持っている人、妊婦、6か月から小に2までの小児などを優先するとしています。

医療従事者はなぜ優遇されるのか?これは病院で病気を持った高齢者(ハイリスク)と接する機会が多いからです。

ただ、ワクチンを打ったらインフルにならないわけではありません。これはみなさん経験上ご存じですね(笑)

ま、かかっても重症化を抑えるというか、症状も軽めに終われると考えられます。

 

コロナワクチン開発

これは先日話題になりました。イギリスのアストラゼネカという超有名な製薬会社とオックスフォード大学の共同研究で進む新型コロナワクチンが中断となりましたが、昨日治験を再開したというニュースが出てきました。

個人的には『調査早すぎ』と驚いています。というのも、予想せぬ副反応が出たときにワクチンとの因果関係を調べるのに数日で終わるはずがないからです。

たまたま前の日に食べた食材のアレルギーの可能性もあるし、ワクチンの成分に対するアレルギーかもしれないし、体調悪いだけかもだし、原因を特定するのには時間がかかるからです。

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医学的根拠は示さず

これを見ると「軽微な副反応」と判断し、それよりも早期のワクチン開発の方が人類のためになるという判断をしたということでしょうか。

もう一点、世界中がワクチン開発している中で長期に治験を止め、開発が遅れると莫大な利益をもたらすであろう『ワクチン産業』で出遅れることになってしまうのも事実です。

 

ロシアは既に承認

以前も書きましたがロシアは既に8月にワクチンを承認しており、プーチン大統領もその家族も打ったと言っていました。

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治験の3相試験

治験というのは、簡単に言うと実用化前の安全性確認です。きちんとした手順が踏まれていなければただの人体実験になります。

このヒトでの治験の前に、細胞実験→動物実験を経ています。治験に入ると3つの段階に分かれるのですが、最初の第1相では少人数で少量投与を行ないます。

問題なければ段々人数を増やして、投与量も通常量で行います。このときにはプラセボ*1を使ったりもして効果をみていきます。

今回アストラゼネカで予期せぬ症状が出たのは第3相です。

話は戻ってロシアは8月に世界初のワクチン承認を行ないました。しかし、なんと第3相を行なっていません。承認してから1か月経って先日「今から第3相試験を行なう」としました。これは異例であり、通常はありえません。

 

 

二兎を追う者は・・・?

海外で多くの死者を出した国では多少の副反応があれど一刻も早くワクチンが欲しいのは紛れもない事実です。そこは日本とやや温度差はあるかもしれません。

通常のワクチン開発は5~10年かかります。それは、どこかの段階で原因不明のことが起きると立ち止まって検証を繰り返し、『安全性』を十分に得るためです。

今回は世の中の状況を鑑みて、かなり急ぎで作っています。また、製薬会社としても早期開発により莫大な利益を手にすることもあります。またワクチン接種で健康被害が出たときの損害賠償を製薬会社には求めないという案も政府から出ています。

こうなると製薬会社はワクチン開発をスピードアップできる長所はありますが、「慎重さを損なうのでは?」という見方もあります。

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通常は、薬剤やワクチンでは『安心』と『安全』は同時に求められるものです。しかし、コロナ禍という異常事態で、ワクチンの『安全性』と”ワクチン完成”によるとりあえずの『安心感』が天秤台に載せられているように思えます。

 

緊急事態では"二兎を追う"のは無理と言うことなのかもしれません。

 

では、また(^^)ノ

 

コロナウイルスは中国で作られた

www.multilingual-doctor.com

 

*1:偽薬