社会保険の基礎シリーズ。
今回は日本の【年金】の基礎の基礎を知りましょう~
年金は正確には年金保険で、保険の1種なのであります。この年金の保険料については前回の健康保険料と似ているのでそれと対比しながら勉強しましょう。
▼健康保険についてはこちら▼
年金とペンション
やはり語学から入るのが流儀ですね(笑)
年金は英語で pension といいますね~ 年金受給者は pensionerです。
ペンションという言葉を聞いて何を思い浮かべますか?どことなく小さな民宿みたいなものでしょうか?
元々は 退職後にpension(年金) をもらい始めた老夫婦が空き部屋を使って学生などの下宿などにしたことから始まった言葉です。日本語で言うと民宿とか民泊とか下宿に相当するものですね。
国民年金と厚生年金
日本の年金の制度は拠出制年金といって、社会保険料を拠出(払う)して、一定の年齢になったら定期的に年金を受け取る制度です。年金は若い人たちから集めたお金を運用して増やしてそれを高齢者に給付しています。これがみなさんがイメージする「年金」ですよね。
さて、その日本の年金は主に2つタイプがあります、国民年金と厚生年金です。これは聞いたことがありますよね。
まず、国民年金は20~59歳の人全員が加入することが法律で義務付けられています。これは学生だろうと成人になれば払う義務があります。(もちろん申請すれば学生期間中は払わず後でその分を払うこともできます。)
もう一つは厚生年金といって、これは会社員や公務員などだけが加入する年金です。自営業や農家や学生は加入しません。
被保険者の種類
さて、さらにもう少しだけ詳しく見ていきましょう。
年金を支払う人のことを被保険者といいます。その被保険者は大きく分けて1~3号に分かれます(上図)。要するにどこか雇われている人は第2号、その妻で専業主婦なら第3号です。それ以外の自営業や学生、自営業の妻の専業主婦は第1号になるわけですね。
さて、またさきの表に戻ります。第1号と第3号は似てますがよく見ると、第3号では年金の支払いがありません。これは第2号(会社員など)の ”扶養に入っている” 状態であり、この人たちの年金の掛け金は第2号の払った厚生年金から賄われるわけです。
※注意※ 第3号被保険者は自分の年収が130万円以上となると、”扶養” に入れなくなります。そうなると自動的に第1号被保険者となり、年金の支払いの義務が生じます。
公的年金は2階建て
これはどういうことかと言うと・・・
基礎年金である国民年金は全員が支払います。これが上の図でいう1Fの部分です。ただし、上で学んだように会社員の妻で専業主婦(=夫の扶養に入っている)の場合は第3号被保険者と言って、国民年金の掛け金(支払い)は夫の厚生年金から支払われるため払わなくていいです。
次に、第2号被保険者(=会社員や公務員)は厚生年金にも加入します。掛け金は給料の18.3%でその半分は雇用者(=会社)が支払ってくれるのでしたね。で、この厚生年金が上の図の2Fに当たります。
じゃぁ、第1号と第3号の保険者は2Fがないのでしょうか?
国民年金基金
先ほどまで学んできた国民年金と厚生年金は国によるものなので公的年金と呼ばれます。これら以外の任意の年金は私的年金と呼ばれます。私的年金は加入するもしないも個人の自由ですが、公的年金と同じように社会保険料控除などが受けられるメリットがあります。
国民年金基金とは簡単に言うと、第1号被保険者のための上乗せの年金(2F部分)だと考えればいいです。第2号被保険者は国民年金以外に2F部分として厚生年金にも加入しているので老後の年金の受取額が多いですね。第1号被保険者は国民年金のみなので老後の受取額は65,000円だけです。そんな第1号被保険者の老後の不安を減らすための私的年金と考えてもらえばOKです。
第1号被保険者なら基本的にはだれでも加入できます。
第2号、第3号被保険者は国民年金基金には加入できません。
マクロ経済スライド
年金にまつわるニュースを見ているとマクロ経済スライドという聞きなれない単語を耳にしたことがあるのではないでしょうか?これは何かと言うと・・・
ま、一言で言うと「年金の給付額が実質減ります」ということです(笑)
退職後の高齢者は他の年齢層と比べ一番投票に行きます。ですので、「年金を少しずつ減らしますね」とあからさまに宣言すると高齢者から反感を食らい、票を失います。だから、このようにもっともらしい複雑な言い回しで逃げているわけですね。
要するに高齢化社会で、しかも少子化という年金システム上、絶望的な状況に追い込まれている日本です。しかも医療の発展で高齢者はますます長寿化しております。年金は死ぬまで受け取る権利がありますので、このままでは年金制度が成り立たなくなってしまいます。
時代により物価が上がるとそれに合わせて年金の給付金も上がるのがルールですが、この給付金の増加割合を一定以上にならないように制限するというのがこのマクロ経済スライドです。例えば、物価が2%増加したら、給付金も2%増加しないと生活が苦しいのですが、これを給付金は1.1%のみの増加にするということです。なので、物価上昇時の年金受け取りが実質減るわけですね。
いかがでしょうか、公的年金の2階建ての構造、少しでもご理解いただけたでしょうか。
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