マルチリンガル医師のよもやま話

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タイ「少子化ヤベェ」その背景

少子化対策が色々議論されているのは皆さんご承知の通り。

今回は同じアジアの国で起きている少子化にまつわる背景を学んでいきましょう。

合計特殊出生率

まずは基本の確認です。

少子化のニュースで頻出の合計特殊出生率についてです。

難しい説明はすっ飛ばして、15歳~49歳の女性が一生の間に産む子供の平均人数を表しています。

合計特殊出生率とは

父・母の2人から生まれる次の世代の人数ということですので、2あれば、次の世代でも人口は減りません。しかし、2を下回ると段々と人口は減ります

令和4年の日本の合計特殊出生率は1.26で、ここ20年ほどはだいたい1.2~1.4位で推移*1しています。当然、将来的に人口減が続きます。

厚生労働省『出生数、合計特殊出生率』より

減りゆく若者で、高齢者の年金や医療費を支えたりするのが厳しいのは目に見えています。日本やべーぞ!

他国の状況は?

ところで、日本では「少子化ヤバい」「日本終わる」と言われていますが、他国の状況はあまり知らないもんです。

子供が多い国というのは発展途上国や貧しい国に多いです。アフリカの国々では、合計特殊出生率が5~7くらいあるところも多数あります。

先進国では2を切っているのが普通で、移民の多いアメリカでは1.5-1.8程度*2で推移、EUでも平均1.5くらい*3です。

世界の合計特殊出生率

続いてアジアに目を向けると、韓国では2001年に1.3だった合計特殊出生率がどんどん下がり、2018年についに1を割り2023年は0.72*4日本以上にヤバい状況になっています。

一人っ子政策のあった中国では2000年 1.63から低下し続け現在は1.1~1.2くらい*5です。

一人っ子政策について

www.multilingual-doctor.com

どこも厳しいですな。

少子化の原因はもちろん、女性の社会進出、育児・教育費の問題が大きくありますが、そもそも結婚数自体も減っているということもあります。

タイの結婚は厳しい

さて、本題に入りましょう。

合計特殊出生率が1を切って、「国がなくなる」とまで叫ばれている韓国の朝鮮日報の記事*6を見ていきましょう。

タイ『結納金目的で窃盗』など

タイで結婚の際の結納金を準備するために貴金属店で窃盗をしたり、結納が準備できないといったことが近年問題となっています。

受け取った結納金で買った宝石類を結婚式で見せびらかすのが「新婦の価値」を示す重要な儀式なのです。

結納もインフレしている

女性の教育水準が上がり、大学・社会進出により、この結納の額がインフレしているのだそうです。近年では新婦の学歴を入力すると、結納金の目安が自動計算されるアプリまであるのだとか。

準備できない結納金

結納金のインフレで問題となるのは、新郎が結納金を工面できないパターンです。

こうした場合は、かねてより新婦側の親が結婚を認めないなんてことがザラだったそうです。

犯罪に手を染めて結納金捻出

諦めきれない新郎の中には犯罪に手を染めて結納金を捻出することもあり、問題となっています。他にも、両家で合意したうえで、レンタル結納を利用し、高級車や宝石を借り結婚式だけでも豪華にして「新婦の価値」を高く見せびらかすという方法も多いようです。

急減する人口?

実はタイは、韓国に負けず、出生率が急速に低下しているのです。

2015年くらいまでは合計特殊出生率は1.5程度でしたが、2021年には1.33まで低下*7し、2022年に1.16まで低下しています。

急速な出生率低下

2023年の合計特殊出生率が1を切っているという調査もあるようです。

この急速な低下の裏には、そもそもの結婚数の急があると記事に書かれています。

急減の原因は『メンツ重視文化』

日本のような緩やかな減少でなく、韓国・タイで急速に出生率が低下しているのは、世間体やメンツばかり気にする文化のため、結婚が遠のいているからであると考察されています。
近年ではSNSの発展で、”インスタ映え”する結婚式などの為に費用が嵩み、より結婚が難しくなっていると・・・

さいごに

いかがでしたか?

日本では「少子高齢化がヤバい」と耳にタコができるくらい聞かされますが、減少速度はまだ緩やかな方です。また、先進国ではどこも将来的には人口減少します。

アメリカは移民が子供をたくさん産むので、まだ出生率高めですな。

危機的な状況に瀕しているのは韓国とタイでした。この2国に共通しているのは”体裁”を取り繕うことに必死な文化により結婚自体のハードルが上がりすぎていることによるという見立てでした。

なかなか面白かったです。

では、また(^^♪