マルチリンガル医師のよもやま話

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『日本人の賃金が上がらない』大きな一因

日本の賃金がずっと上がっていないということはよく耳にします。理由は不景気だったり、円安政策だったりもありますが、雇用形態も大きな一因です。

今回は日本の非正規雇用について学んでみましょう。

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戦後の日本

まず、戦後の高度経済成長期について振り返りましょう。

高度経済成長期とは

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経済成長するには条件があり、要は人口が増えて消費が増え、さらにその需要に見合うように供給ができる労働力が必要です。つまり少子高齢化で経済成長はムリです。

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経済成長するには

朝鮮戦争特需に始まり、東京オリンピック、公共事業拡大などで起こった高度経済成長期には労働力確保が重要でした。

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高度経済成長期

そのため、正規雇用で長期にわたり働いてもらおうという動きが普通でした。もちろんそれでも労働力は足らず、閑散期の農業従事者や主婦らもパートでもどんどん雇っていました。

バブル崩壊

しかし、オイルショック(1974)やアメリカのベトナム戦争敗戦(1975)で状況は変わり始めます。

バブル崩壊とは

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これらの影響で、日本の経済成長は鈍化し、ついに高度経済成長期は終わりました。これを機に、日本は自動車産業や電化製品産業にシフトします。

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ぺティー・クラークの法則

国は経済発展するにつれて産業形態が変わっていくというペティー・クラークの法則の通り、日本は第三次産業に進みました。

しかも、このとき、アメリカはレーガノミクスと言ってドル高政策を取っていましたので、『円安』で輸出に有利に働き、日本は大儲けしたのです。

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レーガノミクスで儲ける日本

しかし、儲けまくった日本にアメリカがキレて、プラザ合意ドル安・円高に方向転換させられ、日本の輸出は落ち込み不況になったのです。

その後、低金利政策や、都市部再開発を行い地価は上がり始めると、『土地神話』『財テク』ブームで多くの人たちが乗せられて土地や株を買いまくったのです。こうしてできた大きな経済成長を伴わない株価の上昇”バブル期”ですね。

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バブル期とは

政府は土地の購入を制限するために策を取り、そこに湾岸戦争の社会情勢が加わり、一気に株価は下がりバブルは崩壊しました。

平成不況

バブル崩壊後に襲った平成不況では、企業のキーワードはコスト削減でした。

日本の法律では、労働者は簡単には解雇できません*1

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労働者は簡単には解雇できない

先行き不明の不景気では、どんどん正規雇用者を増やすわけにはいかず、いつでも契約を解除できる非正規雇用が増えていきました。

雇用者側の見方

日本では正社員の解雇は非常に難しいので、需要や収益の変化に応じて労働者の数を柔軟に調整しやすいという面があります。

また、退職金や社会保険料を抑制することができる上、正社員より安い給料で雇えるということもあり、雇用者側からすれば非常にメリットが大きいのです。

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雇用者側の見方

一方で、製造業などでは、ベテランが育ちにくかったり、派遣で来ていれば、会社への責任感が低いというデメリットもあります。

労働者側の見方

労働者からすれば、配偶者の扶養範囲内で働くなど、正社員より短時間で働くことができたり、サービス残業などが少なかったり、副業がしやすいなどのメリットがあります。色んな業種を経験するというのもできますね。

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労働者側の見方

一方で、正社員と比べると時給換算賃金が低かったり、ボーナスや退職金がなかったり、昇給がなかったりとデメリットもあります。

派遣社員

次に、非正規雇用の中でも最近よく耳にする派遣社員についても学びましょう。

元々は、派遣というのは色々条件が厳しかったんですが、先ほど学んだように不景気により非正規雇用を求める企業も多く、この派遣の規制緩和を進めてきたのです。

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派遣業務の規制緩和

どんどんと派遣できる業種を広げていったことで、今は派遣社員が増えているわけです。この規制緩和を押し進めたのが、人材派遣会社パソナの取締役会長である竹中平蔵氏なんですね。

派遣社員は非正規雇用なので、不景気になったら真っ先にクビを切られる”派遣切り”が起こります。企業からすれば都合のいい労働者です。

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派遣社員が増える理由

また派遣社員への給料は、労働者派遣料という経費になるので、消費税がかからない上に、企業の節税になるわけです。こうなると企業は当然派遣社員を雇いますよね?

すると、派遣会社は仲介業で儲かってウハウハ・・・笑

これが現状ですね。

ますます少子化に

不景気になり、派遣社員などの非正規雇用が増え、いまや労働者の40%弱*2を占めています。

非正規雇用では正職員と比べて平均して給料が低く、結婚しない男性が増えている*3現実があります。また、結婚しても収入の関係でたくさん子供を作れないです。

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非正規雇用の男性は未婚率が高い

ただでさえ少子高齢化の日本で、非正規雇用の増加が少子化を推し進めてしまったとも考えられます。

企業利益は増加

賃金が上がらないのは不景気で企業も利益がないからしょうがない?

いいえ、これは間違いです。実は大企業の利益は増えているんです。財務省の法人企業統計*4を見てみると、経常利益はこの20年間でも増えているのです。

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企業は儲けて内部留保を増やす

では、企業は利益が増えているのになぜそれが賃金上昇につながらないのでしょうか?それは内部留保です。要は、企業は先行き不安定なので企業としてお金を貯金しておくのです。この内部留保がずっと増えているわけです。

不景気が続く

企業にとっては、派遣社員は非常に都合がいいことがわかりますね。しかし、賃金が上がらないままでは購買意欲は低下し景気はよくなりません。

また、非正規雇用の結婚率が低いことで少子化がさらに進むことになります。

これに打つ手は何があるのでしょうか?

例えば、同一労働同一賃金*5などが議論されています。

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非正規雇用を減らせるのか?

他にも企業が内部留保を増やすのを抑制するために、内部留保に課税する案や、正社員の給料に消費税を掛けないようにすることで、正社員を雇いやすくするなどの案もあります。

さいごに

いかがでした?

日本は戦後の復興で経済大国になりました。しかし、バブル崩壊後は様々なことが重なり不景気が続いております。

コスト削減を目指す企業は非正規雇用を増やす方向で進んできました。そして、派遣の規制緩和でさらに非正規雇用が増えています。

企業にとっては非常に都合のいい非正規雇用ですが、賃金は上がらず未婚率の上昇、さらなる少子化、また消費の減退という大きな副作用が出ています。

ちなみに、労働力不足で途上国から外国人をどんどん入れると、低賃金から抜け出せないのも目に見えてますね。

では、また(^.^)ノ