夏が近づいてくると、元気になってくるGさん。
正直、見た目の問題もあり、あまり好まれないGさん。
今回は人類とGさんとの戦いを見ていきましょう。
生きた化石
Gさんは時に、”生きた化石”と呼ばれることがあります。
3億年前くらいから存在し、後にG系統とカマキリ系統に分化していき、白亜紀(1億5000万年前)くらいには現在のようなものになっていたそうです。
夜行性のGさんは、もともとは寒さに弱かったのですが、人類の発展とともに”暖房”設備が広がり、寒冷地域にまで拡大していきました。そういえば、昔は北海道にはGさんはいないと言われてましたね。
また、Gさんは雑食としても有名で、米に芋、人間の髪の毛、動物のフン、そして食糧難の時には共食いさえもするのです。
因みにGさんの名前は、江戸時代に、お椀をかじったりすることから御器噛(ごきかぶり)と呼ばれ、その後、なぜか『か』だけ脱落し現在の名前に落ち着いたそうです。
感染症をもたらす
さて、今回はNational Geographicの記事*1から学びましょう。
Gさんが忌み嫌われる理由は見た目もさることながら、やはり感染症の原因となることです。
世界で一番はびこるGさんは Blattella germanica (チャバネゴキブリ)ですが、"Germany"から検体が届いたことに由来するだけで実際はアフリカ発? or 東南アジア発?と言われています。
そのGさんの王者は、当然日本でも頻繁に遭遇するのですが、なんとこの王者は人類の英知”殺虫剤”に耐性を持てる唯一の種だというのです。
1年もあれば・・・
リー博士(誰や。)らは実験を行うことにしました。
カリフォルニア州の低所得層の居住地で、掃除機を用いて可能なだけGさんをかき集めました。
研究室にて、市販の6種類のGさん殺虫剤を試します。ときに、アメリカではジェルタイプの殺虫剤が一般的なそうな。知らなかった!
ところが、6つのうち5つの殺虫剤でGさんは死にませんでした。
なんと、一番長いものでその後2週間も生き延びたそうな。恐ろしい生命力。
唯一効果のあった殺虫剤はアバメクチンという殺虫剤でした。
しかし、近年の研究*2で、このアバメクチンに対してもGさんは、2世代(約1年)あれば耐性を持つことができると言われています。
人類がGさんを進化
研究結果をもとに言えることは、Gさんに対して殺虫剤を使うことは、まず第一に効果としてイマイチなこと。実際、6つのうち5つでGさん生存してました。
また、使用後、屋内に残存する殺虫剤成分により、人間も頭痛や吐き気を催し、癌化のリスクも上がることもわかっています*3。
そして、耐性能をもつ優秀なGさんにおいては、どんな殺虫剤にも適応してしまい、最強Gさんを生み出してしまう恐れがあるのです。
これは、医療では抗生剤とまったく同じ話です。例えば、膀胱炎などによく効くからと強い抗生剤を使いすぎたせいで薬剤耐性菌が増えています*4。
精油
殺虫剤をどれだけ進化させても耐性を持たれては打つ手なしです。
そこで目をつけられているのが精油です。要は植物から取れた油ですね。
カルバクロールという精油を使うと、Gさんは繁殖力を落とし、さらに生存期間も34%短縮*5しました。
さらに、精油は、殺虫剤と違って耐性ができにくいと言います。
殺虫剤は、効果部位が1つですが、精油は複数の箇所に作用するから耐性ができにくいのです。
他にも珪藻土もGさん退治に効果が期待されています。
Gさんが人を救う?
1つの生物を駆逐してしまうと、生態系が崩れて、望ましくない結果を生み出すことがあります。そのいい例として、昔中国でスズメを駆逐したら、害虫が増えすぎて飢饉で大量の死者を出したこともあります。
▼スズメを駆逐した中国▼
ということで、Gさんとの共存、そして平和利用の道も探ってみましょう。
汚い環境に暮らしており、様々な細菌に曝露されているGさんは、どんなに強い細菌にだって打ち勝つ化学分子を体内に持っています。
UAEの中にあるシャルジャ首長国では、Gさんを使って抗生剤を作ろうという研究*6が行われています。
既に特定の物質は見つかっており、今後動物実験などを行うようです。
Gさんから作られた抗生剤が人類を救うかもしれません。
さいごに
いかがでしたか?
Gさんの中でもチャバネGさんという世界中にいるやつは、殺虫剤でもなかなか死なず、さらに殺虫剤に対して容易に耐性をもつ能力を持っています。
今後も強い殺虫剤を研究しても、耐性ができ、いたちごっことなってしまいます。
近年の研究では、精油や珪藻土がGさんに効果があり、また耐性もできにくいということがわかってきています。
また、Gさんとの共存として、最強の抗生剤を作る研究もなされています。
では、また(^^♪
*1:https://www.nationalgeographic.com/animals/article/pesticides-are-making-german-cockroaches-stronger
*2:https://www.nature.com/articles/s41598-019-44296-y
*3:https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/pesticides-impact-indoor-air-quality#Health_Effects
*4:https://www.asahi.com/articles/ASMCQ3QJDMCQULBJ006.html
*5:https://academic.oup.com/jee/article/113/5/2436/5866380?login=false
*6:https://www.aus.edu/media/news/antibiotics-from-cockroaches-may-save-lives-finds-joint-study-led-by-aus