今週から一段と冷え込む日本列島、いかがお過ごしでしょうか。
寒くなってくると増えるのが『風邪』ですが、今回はこれにまつわる迷信についてお話したいと思います。
風邪について
風邪は、医学では『かぜ症候群』という名前が正式です。
症候群というのは症状の寄せ集めという意味です。要は咳やらくしゃみ、鼻水などの症状を集めたものが『かぜ症候群』です。
冷たい風が吹くと体の中に邪気が入り込んで病気になると考えられていたので、風邪と書くようです。また邪気を”引き”込むから、風邪を引くと言うんです。
さて、風邪の原因の約9割はウイルス感染による上気道炎*1で、ひどくなると肺炎になりえます。
こういう意味では、大きいくくりではインフルエンザも、新型コロナも風邪なんですよね。
しかし、インフルエンザや新型コロナでは高熱となることが多く、一般的に別モノにされます。新型コロナは若くて元気な人でも肺炎にまでなるので一般的な『かぜ』とは言いにくいですね。
▼オミクロン株はかぜ?▼
風邪の治療法
人は1年に2-3回風邪を引く*2といわれています。
風邪を引き起こす原因ウイルスがたくさんあり、しかも変異しやすいタイプも多くかぜワクチンを作るのは非常に難しいです。
治療薬についても同様です。抗ウイルス薬ってのはインフルエンザやヘルペスなど、ごく限られたものにしか存在しません。
しかし、通常の風邪は数日で軽快することが多く、ワクチンや治療薬を必要としません。ちなみに、市販の風邪薬も実は推奨されていません*3。
抗生剤は細菌や原虫による感染症の治療薬ですからウイルスには効きません。(昔は2次性細菌感染予防に処方されていました)
コロナ禍で反ワクチン団体で話題だったイベルメクチンも抗生剤の1種で、通常使用料でウイルス感染に著効するなんてとてもとても考えられません。
▼イベルメクチン騒動の闇▼
民間療法
伝統的な民間療法でネギを首に巻くなんて話もありましたね(笑)欧米では風邪を引いたらチキンスープを飲むそうです。
どちらも科学的にはエビデンスはありません。
ネギ自体は、アリシンを含んでおり、殺菌効果や疲労回復効果があるので食べると少しはいいかも。ってレベルですね。
のど飴でハチミツとかカリンが入っているのが多いですよね?ハチミツはアメリカでも風邪を引いたら食べるそうです。これに関しては、効果あります!
オックスフォード大の研究*4によると、風邪の症状緩和に効果があると示されています。なんと、ハチミツは市販の風邪薬より有効とのこと。
カリンはアミグダリンという成分が含まれていて咳や痰を抑えてくれることが分かっています。
ビタミンC神話
もう子供の時から風邪を引いたらビタミンC取らなきゃってのが染みついてますよね。
一応、過去の研究では、毎日ビタミンCをしっかり取っていれば、風邪が引きにくい*5というものや、軽症で済みやすい*6というものがあります。
ただし!これらには『条件』が書かれています。極度に肉体疲労するスポーツ選手とか、普段まったくビタミンCが取れていない人たちに限る!という研究です。(笑)
大掛かりな研究でまとめられたものでは、ビタミンCに有意な風邪の予防効果はなさそう*7というものです。ちなみに、一見効果ありそうなニンニクも高麗人参も残念ながら同じ結果でした。
ちなみに、この研究では他にも、マスク着用やうがいにも明らかな予防効果がなかったのです。これがコロナ前の海外ではマスクもうがいもしない理由ですね。
このコロナ禍ではマスクの”飛沫予防の効果”に注目が集まりました。つまり”うつらない”よりも”うつさない配慮”の部分です。
さらにちなみに、ビタミンA, D, Eは風邪予防に効果がある*8という結果も出ています。緑黄色野菜や果物をたくさん取ろう!ですな。
スポーツ選手は丈夫?
スポーツ選手や、筋肉隆々のいかにも丈夫そうな人たちは健康そうに見えますよね。風邪なんて引かないんじゃないの?
実はこれは逆なんですね~
一般人とアスリートの風邪を比較した研究*9の結果は何と、アスリートの方が風邪を引きやすいことが分かったのです。
この論文では、高負荷トレーニング期間中に風邪をひきやすいこともわかっており、おそらく身体的ストレスが影響しているのではないかと言えます。
ま、簡単に言うと、ストレスを感じるとコルチゾールというステロイドホルモンが分泌されるのですが、免疫抑制作用があるんです。
疲れすぎると風邪を引くのは医学的にも正しいということですね。
▼秋は太りやすい理由▼
体を冷やすと風邪を引く?
これは子供の時に親によく言われましたよね?
冬に薄着だと風邪を引くとか、服が濡れたままだと風邪を引くとか。
アメリカのイェール大学の研究*10をご紹介します。
まず、風邪の原因で一番多いライノウイルスが増殖するのに適した温度は32-33℃と言われています。体温は36-37℃なので、肺などの中枢では増えにくいんです。ところが、体の中心から少し離れた喉などの上気道では33-35℃となります。
これが、ライノウイルスが上気道で風邪症状を起こす原因となるのです。
次に、私たちの体の側から見てみましょう。ザックリ言うと、体温が下がると免疫機能が低下するのです。
そう、感染して熱が出るのは、ウイルスが高温で増殖しにくくするのと、自分の免疫機能を高めるためなんですね。
体温が低い人(36.0℃以下)は風邪を引きやすいことになります。
また、寒いところにずっといると、寒冷ストレスでコルチゾールが出て、免疫低下にもなりますね。
さいごに
いかがでしたか?風邪について新たな知見はありましたか?
実は僕、冬も薄着で、平熱35.8~36.2℃なんですが、年に2回は風邪をひきます(笑)
コロナ禍で多くの人がマスクしたり、手洗い頻度が増えたからか風邪はメッキリ引かなくなりましたが。
結局、重要なのは普段からの基本感染予防で、ストレスを溜めないこと、疲れすぎないことですね。休日はいっぱい寝ましょう!笑
では、また(^.^)ノ
▼インフルエンザについて▼
▼インフルエンザ消滅?▼
*1:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK279543/
*2:https://www.cdc.gov/features/rhinoviruses/
*3:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3928210/
*4:https://ebm.bmj.com/content/26/2/57
*5:https://www.mdpi.com/2072-6643/6/7/2572
*6:https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD000980.pub4/full
*7:https://www.cmaj.ca/content/186/3/190
*8:https://www.bmj.com/company/newsroom/high-vitamin-a-e-and-d-intake-linked-to-fewer-respiratory-complaints-in-adults/
*9:https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2007/04000/Incidence,_Etiology,_and_Symptomatology_of_Upper.1.aspx
*10:https://www.pnas.org/content/early/2015/01/02/1411030112