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国内でも感染例~新型コロナウイルス肺炎 日本の対策は大丈夫? 今までのまとめ~

(2020/01/26  update)

新型コロナウイルス肺炎の感染拡大のニュースが後を絶ちません。

日本国内で3人目の感染者も報告されました。

 

2019年末に原因不明の肺炎は1月に入りコロナウイルスの新種と発表されました。

その後、日に日に新たなニュースが出てきます。

 

今わかっていることをまとめてみましょう。

 

▼▼中国で原因不明の肺炎(過去記事)はコチラ▼▼

multilingual-doctor.hatenablog.com

 

 

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中国・武漢で原因不明の肺炎⇒武漢閉鎖

最初の報告は中国・武漢でした。

ちなみに武漢は英語ニュースではWuhanと紹介されています。

この肺炎はインターネットで2019年12月30日に出回りました。

 

武漢市は人口1000万人の大都市で「東洋のシカゴ」の異名を持ちます。

武漢市の大きさはなんと兵庫県と同じくらいだそうです。

長江(or 揚子江)の中流に位置し、鉄鋼業、自動車産業のある工業都市でもあります。

 

2020年1月1日に衛生局などは華南海鮮市場を流行の中心地として閉鎖しました。

最初は60人弱の感染者が病院で隔離されていました。

その後、1月9日に初の死者が出て、その後1週間で10人程が命を落としました。

このころから武漢周囲の都市でも感染者が確認され始めました。

 

その後、累計感染者数は湖北省*1だけで450名近くに増加しました。

1月23日午前10時 武漢市内の空港、鉄道駅、フェリー、バスなどの公共交通を停止しました。

 

続いて、武漢の近郊都市でも同じく列車などの停止が決定しました。

また当局は不必要に武漢市からの移動を控えるように声明を出しています。

 

現在中国13都市で移動制限が行われています。

 

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外国では検疫の強化

香港、マカオ、台湾、アメリカ合衆国などで検疫を強化しました。

北朝鮮も感染拡大を恐れ外国人の入国を禁止にしました。

 

日本での感染者は1月26日現在3人だけです。

韓国も同様に現在3人の感染が確認されています。

 

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2019-nCoV

新型コロナウイルスはWHOにより2019-nCoVと定義されました。

ニュースなどでは地名を使って Wuhan coronavirus と報道するところもあります。

 

タイプ的には2003年に流行したSARSウイルス(SARS-CoV)に最も近いそうです。

SARSウイルスはコウモリから発見されました。

 

ところで上でも書きましたが、最初の感染の中心となったのは海鮮市場です。

なぜ海鮮市場でこのウイルスが出たのでしょうか。

 

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謎の海鮮市場

感染の中心地と言われた華南海鮮市場

名前は海鮮市場ですが、アナグマなどの野生動物の販売などもコッソリと行なわれているようです。そのため、これらの野生動物が感染源ではないかと考えられています。

 

振り返ってみるとSARSのときにあった感染ルートの仮説は、

  1. コウモリから直接人間に感染
  2. 中国の市場で販売されていた動物を介して人間に広まった

とされていました。

 

春節での感染拡大の懸念

春節とは中国の旧正月のことです。
毎年このシーズンには大都市に出稼ぎしている人たちが故郷へ帰ったり、海外旅行に出かけます。一説によるとこの期間にのべ30億人が移動するといわれています。
 
1月23日に武漢市と近郊都市からの公共交通機関は停止されました。
これに伴い車で移動しようつする人が溢れ、大渋滞となっている様子も報道されていました。また、食料の買い占めも起こっており、野菜の価格などが高騰しています。
 
一方、春節に日本を訪れる中国人観光客は70万人ほどと予想されています。
厚生労働省は体調不良自己申告カードを中国からの全便に配布すると発表しました。
 
▼▼旧正月についての記事はコチラ▼▼

独り言

日本で初感染者が確認された状況を考えてみると
解熱剤を内服していたため、税関でのサーモメーターではスクリーニングできませんでした。
 
せっかくの旅行に来た人が
空港で何時間も調べられ、場合によっては入国を認められないかもしれない
と考えたときに「体調不良自己申告」がどこまで信頼できるでしょうか。
 
この際、感染者が出た地域からの直行便、または乗継便で入国する乗客全員に簡易な検査を課した方がいいのでは?とも思います。
特に今年はオリンピックイヤーでもあり、感染拡大を防げなければ大きな汚名を被ることになりかねません。 
 
しかし、難しいのはすぐに「差別」と結び付けられる風潮です。
特定の国・地域から来た乗客だけに検査を課したら「差別だ」となることも十分に考えられます。
 
ここは、感染拡大のためにも世界規模での指針をWHOから出してほしいですね。
世界基準で足並みをそろえれば批判も少なくなるでしょうし。
(WHOは特定国の渡航に対する制限には慎重な姿勢をとっています。)
 
24日現在WHOの見解は、
中国としては大発生してるが、世界的にはまだ緊急事態ではないとし、緊急事態制限発令は見合せとなりました。
 
 
続報に注目です。
 
 

*1:武漢のある省