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中国で原因不明の肺炎。~SARSとMERSを振り返る~

中国の武漢原因不明の肺炎が広がっているそうです。

一部ではSARSの再来か?と注目されています。

(CNN)Chinese health authorities have not been able to identify a mysterious strain of pneumonia that has infected dozens of people and put the rest of Asia on alert -- although they have ruled out a return of the deadly severe acute respiratory syndrome (SARS) virus.

 

January 7, 2020  CNN

"A mysterious virus is making China (and the rest of Asia) nervous. It's not SARS, so what is it?"

 

続報ではコロナウイルスの新種という報告が出ました。

BEIJING — Chinese researchers investigating the cause of a mysterious pneumonia outbreak have discovered a new strain of coronavirus, a species of viruses that can cause deadly illnesses such as severe acute respiratory syndrome (SARS) and Middle East respiratory syndrome (MERS), according to Chinese state media and the World Health Organization.

 

January 9, 2020  The Washington Post

"China identifies new strain of coronavirus as source of pneumonia outbreak"

 

コロナウイルスによる感染症といえば・・・

最初に思い出したのは2000年代に入ってすぐのSARS

そのつぎは数年前のMERS

 

この辺、もう一度復習してみようと思います。

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コロナウイルス

人の気道系に感染を起こすウイルスの一種で症状の強い風邪症状を起こします。

38℃を超える発熱や気管支炎、肺炎になることもあります。

一般的な風邪のウイルスのひとつです。

 

SARS

2002年から2003年にかけて中国でアウトブレイク*1を起こしました。

報告によると30か国以上で8000人以上の感染者が出て、800人弱が死亡したそうです。

 

SARSという言葉は英語の頭文字で

Severe Acute Respiratory Syndrome 重症急性呼吸器症候群の意味です。

 

その名の通り急に呼吸がしんどくなるのが特徴。

現在診断としては

  • 感冒様症状
  • 38℃以上の発熱
  • 呼吸困難
  • 肺炎像

とされています。

 
正直、これらだけの症状ならば、インフルエンザも似た症状だから、はっきり言って診断は難しいのです。
なので実際は、SARSが流行していた地域への旅行歴などの情報から推測するしかないのが実情でしょうか。コロナウイルスの検査はどこでもできるわけではありません

 

SARSの予防

現在SARSの予防にワクチンはありません

  1. 個人レベルでできる予防は一般的な風邪の予防と同じで手洗いなどである。
  2. 社会レベルでできるものは隔離と消毒くらい。

  ※アルコール消毒でコロナウイルスは死ぬ。

 

multilingual-doctor.hatenablog.com

 

 

SARSの治療

風邪と同じでウイルス感染に抗生剤(正確には抗菌薬)は効きません。

決まった治療法はなく、風邪と同じく対症療法((症状に対する治療))を行ないます。

そして患者を隔離することが重要となります。

 

このときもそうだったのですが、隔離しても医師や看護師といった医療従事者は患者と接するため、次に医療従事者が感染を広げてしまうこともあります。

 

SARS封じ込め成功

WHO(世界保健機関)は2003年07月05日にSARSの封じ込め成功と発表。

 

SARS陰謀論

実はこんな噂も流れていたんです。

「SARSはアメリカが起こしたバイオテロ」

 

中国の急成長を危惧していたアメリカが黄色人種にだけ作用するウイルスを作ったとかいうシナリオ。SARSが中国を中心に広がったことからできた噂かと思いますが。

実際は黄色人種以外にも死亡者がいたので関係ありませんね。。

 

MERS

2015年くらいにニュースでよく見ましたね。

日本では英語発音に近くMERS(マーズ)と呼ばれていました。

 

こちらも英語の頭文字で

Middle East Respiratory Syndrome(中東呼吸器症候群)です。

こちらも新種のコロナウイルスによる感染症だったんです。

 

面白いのが韓国のニュースをチラっと見たときに韓国語では【메르스(メルス)】と呼ばれていました。これはラテン語読みを意識したんでしょうか。

 

2015年のMERS

2015年に中東となぜか韓国で感染拡大したMERS。

MERSコロナウイルスはコウモリやラクダから感染するといわれています。

SARSと同じく肺炎を引き起こします。

予防法もSARSと同じで手洗い、アルコール消毒です。

治療法もSARSに同じく現在確立はされていないので、対症療法が主体となります。

 

中東と韓国

2012年09月にサウジアラビアで初の報告がありました。

2015年05月に韓国で初の感染者(患者A)が出ました。

実はこの患者はバーレーン王国に2週間ほど滞在してから韓国に帰国したそうです。

 

韓国内での広まりの原因としては以下のものが考えられています。

  1. 患者Aが入院した病院内でエアコンから感染が広まった
  2. 患者Aの家族が隔離対象であるにもかかわらず香港へ

 

韓国でのMERS対応の問題点

患者Aの家族は香港国際空港の時点で発熱と咳をしていました。

患者Aの家族はMERS患者との接触の有無を聞かれましたがそれを否定しました。

またこの家族を乗せた飛行機はその後2日間消毒されないままに韓国や中国や日本の都市へ客を運んだのです。

 

その後韓国内での感染者数は25名となり死者も出ました。

感染者と接触した人は自己隔離を指示されましたがそれを無視してゴルフに出かけたりしたことも現地の中央日報などが伝えています。

 

さらに、感染患者を診察した医師も自己隔離の対象となっていましたが、夫婦でフィリピンへ出国していることもわかっています。

 

MERSから学ぼう

MERSの韓国内での感染拡大は初期対応にあります。さらには隔離対象者の身勝手な振る舞いも大きく関与しました。これは日本でも同じことが言えると思います。

未知の感染症や、未曽有の災害時には冷静に行動し、自分の身勝手で2次災害を引き起こさないことが重要となります。

 

昔から人は過去から学ぶことで発展してきました。これから先の未来ではウイルスの変異によって新たな感染症が起こりえます。

個人レベルではあまりに身勝手な行動はつつしむこと、国家レベルでは確かな情報を迅速に知らせ、国民を統率すること、この2つがしっかりとしていなければ感染拡大を防ぐのは難しいと思います。

 
自分にも言い聞かせておき、この話を終えます。
 

*1:大流行