マルチリンガル医師のよもやま話

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【サク読み】サル痘感染症報道の謎

ここ最近メディアでよく耳にする『サル痘』という感染症。

たしかに新たな感染症が広がるのは気持ちのいいモノではありませんが、今回はこのサル痘に関して報道を見ながら学んでいきましょう。

メディア media

専門家が非専門家に話をするときに、背景知識の差により伝えた情報が100%は伝わりません。そこで、なるべくわかりやすく説明しようとするものです。

例えば、僕たち医師は診察の際に、患者さんに説明するときに例え話を使ったりわかりやすく伝えるのですが、そうすると どうしても内容の正確さは幾分失われてしまいます。

しかもそれが、又聞きならどうでしょうか?当然さらに正確性は落ちます。

又聞きのイメージ

最初と最後の間に介在するものをmediaといいますが、非専門家のmediaを通じて、非専門家の視聴者に届くときには、伝えた側の意図と違って伝わることがあります。

コロナ禍でそれはよく感じます。

さらにmediaが介在する中で、自分の主義主張によって内容を歪曲したり、重要な部分を意図的にカットしたりすると、最終の視聴者には誤った情報が伝わります。

まずはこのことを頭の片隅に置いて話を進めていきましょう。

ニュースを見てみよう

では、サル痘について報じられている内容を少し見てみましょう。まずは共同通信の記事*1から。

共同通信 5/30

元々アフリカとかで見られる伝染病なのですが、欧米など先進国ではまれな感染症なんです。それが、今回見られたから異常な状況だということです。

ま、感染者の数からすれば少ないし、死者もいないと書かれていますね。

もう一つ、次は時事通信の記事*2も見てみましょう。

時事通信 5/26

こちらの記事で気になるのは感染者の大半が若い男性という所です。

健康で体力のあるはずの欧米の若者で感染の中心となっていると。これを見るとちょっと不安になるかもしれません。

この2つの記事を見て正直何もわかりませんね。心配すべきものなのか?どんな人がリスクあるのか?

海外の記事も見てみよう

つづいて海外の記事を見てみましょう。まずは英国BBCの記事*3です。

BBC『感染者の大半はゲイ』

そうなんです、実は上のようなことが分かっています。

つづいて、米国CNNの記事*4です。

CNN『世界の感染者の大半はゲイ』

この事実を伝えれば、読者も自分のリスク具合がある程度把握できるはずです。

世界から出ている患者の大多数はゲイであることがCDCは発表しています。

わかりますね、伝えるか伝えないかはメディア次第です。

もちろん、伝えることで『差別や偏見につながる』という批判を食らうのを避けるためでしょうが、介在する報道機関がこういう結構重要な情報をカットして伝えるのはどうなんでしょうかね。

サル痘

サル痘は、先ほども書いた通り、通常はアフリカで見られる皮膚のウイルス感染症です。

これが先進国を含む欧米で同時に見つかっている点が今気にされていることです。

サルと名前についてますがサルから移るわけではなく、サルで見つかっただけです。通常はそのウイルスをもった動物に嚙まれたりひっかかれたら感染します。

感染したヒト⇒ヒトは、”濃厚な接触”で感染すると言われています。

天然痘の予防接種が効果があることが分かっています。天然痘は根絶宣言され、1980年以降予防接種がされていません。つまり若い世代は感染のリスクがあるということです。

感染拡大の原因

世の中では、陰謀論の様なものもあふれています。

確かに、天然痘とよく似ており、致死率も0-10%程度*5であり、バイオテロに使われることが危惧されています。今のところ、死者なしですし、感染者数も非常に少ないと。普通に考えたら生物兵器は違うでしょうね。

原因は?陰謀論も?

あとは、一部の思想の人たちの中で言われるのが、ワクチンにより免疫機能低下によるものだという説です。

ファイザーのワクチンで接種直後に一時的にリンパ球が減る*6ことは治験の時からわかっています。しかし、それは接種後2-3日だけでそれ以降は回復します。これは免疫機能低下とは言いません。

ワクチン説は考えにくい

さらに、2003年にもアメリカでサル痘のアウトブレイクがありました。当時はmRNAワクチンはまだ使われていないですね。(笑)

このアメリカでのアウトブレイクはペットのプレーリードッグからの感染が47人に広まりました。

ただし、今回のように違う国で同時に発生するというのは今のところ原因はわかっておらずさらなる情報収集が必要です。

さいごに

サル痘は主にアフリカで起こる皮膚の感染症です。

主な感染経路は動物に噛まれたり、引っかかれたりし感染します。その後、ヒト同士の濃厚接触(?)で感染すると考えられています。

今回、かかわりのない地域で同時散発しているのは原因はわかっていません。しかし、特徴は若いゲイの人を中心に広がっているという事実があります。

なぜか日本ではメディアの自主規制によりこの部分が伏せられますが、リスク因子を知る上では重要なことです。

 

では、また(^.^)ノ