コロナ禍でおうちで飲酒が増えており、脂肪肝が増えているというニュースを耳にしたことがあると思います。僕自身も家で飲む機会増えていますが、もっぱらビールです。や、たまにケチって発泡酒です(笑)
ところで、意外と話していると『ビール』と『発泡酒』の違いを知らない人が多いことに最近気づきました。今回は、日本のビール事情を学んでいきましょう。
▼アメリカであった禁酒法▼
ビールの原料
最初にビールの原材料について確認しましょう。大麦麦芽と水が中心で、香りづけにホップ*1を使います。これが基本です。
有名なのはドイツのビールはすべて大麦麦芽100%で作っています、他国でもカールスバーグやハイネケンなどは麦芽100%です。これは大麦の香りが強くコクがあっておいしいです。
日本でもヱビスビール、プレミアムモルツ、一番搾り、ハートランドビールなどは麦芽100%ですね。
副原料として、米やコーンやスターチを使うと軽快な飲み口になります。(つまりは、大麦麦芽の割合が下がる)
この副原料の割合が50%を超えたら「麦芽が主役じゃなくなるよね」ってことで(日本では)ビールじゃなくなります。
海外の香り重視のビールは日本に来ると『発泡酒』とされるのは香りのために副原料が多く大麦の割合が少ないからなんです!
日本でのビールの定義は麦芽の比率が50%以上のもの*2とされています。これは、『麦芽比率67%以上』から2018年に引き下げられました。実はこれ税金のせいなんです。この辺り、歴史を紐解いてみましょう。
ビールの税金
ビールの350ml 缶あたりの税金は77円でしたが、2020年10月から酒税の改訂に伴い70円に減税となりました。また、段階的に2023年に63円、2026年に54円まで下がる予定です。
ところでなぜ、ビールの税金が下がるのでしょうか?
そもそも酒税というのは国にとっては重要な税収です。そう簡単に下げたくはないです。ビールでの税金は酒税全体の約45%*3と大きいので単純に下げると税収が減りそうですが、、
実はビールの売り上げが下がっているからです。ビールを飲む若者が減ってきているのももちろんですが、節約のために安い発泡酒や第3のビールが生まれ、ビールが敬遠されているからです。
そこで、ビールの酒税を段階的に下げて、発泡酒などは酒税を上げて、最終的にビールの販売を増やすことで税収を保つという戦略ですね。ちなみに日本のビールの酒税は世界的に見ても高いです。
戦前の日本ビール
では、日本でのビールの歴史を学んでいきましょう。
日本に初めてビールが伝わったのは1613年が文献上最古となっています。19世紀に入って、鎖国中は長崎の出島でオランダ商人が醸造を開始、開国後は外国人居留地などで醸造されました。
▼外国人居留地について▼
明治期には地ビールブームが起こり、全国で100社ちかくの醸造所ができました。1901年に酒税法が改訂され、ビールにも酒税がかかるようになると中小企業は倒産が相次ぎ、大手に吸収されたりと再編が起こりました。
戦後の日本ビール
1947年にGHQの指導の下、産業の独占を禁じるために集中排除法が制定されました。その後も統廃合が起こりましたが、1970年頃にはキリン・アサヒ・サッポロ・サントリーという4強時代となりました。
沖縄では1972年まではアメリカ領地でしたので、1957年に作られたオリオンビールが優遇措置を受けていました。
ビールと接待
ビールの味には好みがあるものですが、味だけでなく、『系列』と言うのも選択の上では重要です。特に接待や宴会の場面などでは重要視されていました。
これにはまず、4大企業の成り立ちを知れば色々わかります。
三菱系の企業の接待には、キリンビールが好まれます。その理由は元になったJapan Breweryが三菱財閥と関係があるからです。
サントリーは三井系や住友系であるため、これらの会社にはサントリーのビールが好まれるとか。
サッポロビールは安田財閥などの芙蓉系に含まれますが、サッポロビールは三井グループでもあるのです。つまり、三井系にはサントリーかサッポロですな。
アサヒビールは住友系らしく、住友系の宴会、接待ではアサヒか、サントリーでよいのでしょう。
今も、こんな細かい規定があるのかは知りませんが少なくとも昔は 重要だったようです。
発泡酒のはじまり
日本では麦芽の比率が50%以上*4のものをビールと呼んでよいのでしたね。酒税は麦芽の量で変わります。麦芽比率が50%を下回ると安くなります。
しかし、この製法で行くと、よく言えば『あっさり』していて、ビール好きにとっては物足りない味にはなります。これを発泡酒と呼び、ビールとは区別します。
これは、税率を下げるためにできた日本独自のもので、海外にはありません。
戦時中~戦後は食糧不足が続き、麦芽をふんだんに使うことはできませんでした。その頃にサツマイモとホップで代用した”発泡酒”が存在していましたがあまり人気はなかったようです。
その後は食糧も安定し、本格的なビールの人気が高まりました。ビールの料金の45%は税金であり、安売りは困難であり、1990年代には安い海外ビールの人気が高まりました。
ビールが売れない
高い酒税のため、安い海外ビールにシェアを取られる危機から日本のビール業界は麦芽の割合を減らして減税しておいしい発泡酒の開発が盛んになりました。
当時の酒税法では麦芽が67%未満であれば発泡酒(のちに50%未満に変更)で、ギリギリまで麦芽割合を減らして、1997年サントリーがホップスを発売しました。これが起爆剤となり、発泡酒開発がブームになりました。
その後は各社の研究成果も実り、麦芽比率を下げてもおいしい発泡酒が次々に登場します。2000年代に入ってからは、健康志向も強まり、糖質オフなどの商品も相次ぎました。
こうして、発泡酒人気が爆発すると、2003年に発泡酒の酒税が増税されました。(笑)
第3のビール登場
2003年の酒税改定により、各社はさらなる酒税を低くするために鎬を削りました。これが、第3のビールの登場です。新ジャンルとも呼ばれます。
この特徴は麦や麦芽を使わず、他の穀物を使うというものです。これにより酒税がまたさらに下がるのです。
2004年にサッポロビールが発売したドラフトワンが第一号となりました。他社も相次いで、第3のビールを発売していくと、発泡酒の人気は陰りました。
ビール、発泡酒の売り上げが減り、税収が減ったことで国税庁は2006年に第3のビールの酒税を改訂しました。笑 さらに、今後技術開発で新たな節税ビールを作らせないために、酒税法の文言を変えました。
そして、2017年の酒税法改正により、2026年からはビールも発泡酒も第3のビールもすべて同じ税率になります。この改正は3段階に分けて、ビールは減税、発泡酒などは増税として少しずつ差を縮めていくことになっています。
さいごに
いかがでしたか。日本でのビールや発泡酒の成り立ち、ご理解いただけましたか?
2026年からは発泡酒を選ぶ理由がありませんね。
では、また(^.^)ノ