さて、新型コロナで自粛続きだった3年間が終え、日本社会もゆっくりと以前の生活に戻りつつあります。となると、以前のように飲み会も増えてくることが想定されます。お付き合いで飲んだりもあるでしょう。
お酒が弱い人の飲酒について最新の知見を交えて学んでいきましょう。
アルコールの代謝
お酒のアルコールの主成分はエタノールですね。このエタノールを解毒(代謝)していくと、アセトアルデヒドができます。
アセトアルデヒドは猛毒で発癌性があります。また、お酒で顔が紅くなったり、あのイヤな二日酔いの頭痛や倦怠感を起こす原因物質です*1。
こんな危険なものが長時間体内にあるとよくないので、体内で速やかに酢酸に代謝されます。この代謝で脱水素酵素として働くのがALDH(アルデヒド脱水素酵素)です*2。
ALDHの中でも、ALDH2がお酒の代謝に関しては重要な因子となります。
このALDH2も大きく2つに分かれ、野生型(ALDH2*1)と変異型(ALDH2*2)があります。
名前からわかる通り、もともとは野生型があったのですが、アジア人に多いモンゴロイドだけで突然変異が起きました。これが変異型です。
細かいことをすっ飛ばして、変異型(ALDH2*2)を持っていると、アルコールの代謝が遅くなり、肝臓内に猛毒なアセトアルデヒドが蓄積してしまうのです。
日本人は”弱い”?
モンゴロイドの約半数が、このALDH2の変異型アリル(ALDH2*2)を持っており、『お酒が弱い』ことがわかっています。
日本固有の縄文人では、この変異型を持つ人はまれだったようで、朝鮮半島から渡来した弥生人が変異型を持ってきたようです*3。
その後、混血をして今の日本人があるわけですが、現代の日本人の中でも、地域別を調べた研究があります。
筑波大学の報告*4によると、お酒に強い野生型(ALDH2*1)を持つのが多いのは、秋田⇒岩手⇒鹿児島・・・と東北や九州が上位を占め、逆に少ない県は 三重⇒愛知⇒石川と中部・北陸が名を連ねています。
癌との関係
変異型(ALDH2*2)を持っている”お酒の弱い”人は、飲酒により食道癌のリスクが上がることはよく知られています。
わかりやすく言うと、お酒飲んで顔が紅く(フラッシング)なったり、動悸を感じたりする人は、これに当てはまりますので、注意が必要です。
そして、今年に入って国立がん研究センターが発表した論文*5で新たなことがわかりました。
世界最大規模の胃がんの遺伝子解析をした研究でわかったことは、日本人を含む東アジア人で変異型(ALDH2*2)を持っている人は、飲酒によりRHOA遺伝子の変異を引き起こし、びまん性胃癌のリスクが高くなるということです。
びまん性胃癌というのは、スキルス胃癌などで、予後不良の胃がんです。若い人の胃がんで進行が早いものといえばピンと来るでしょうか。
さいごに
2019年のラグビーワールドカップが日本で開催された際に、外国人ファンが多数パブや居酒屋に来てビールが足りなくなったっていうのは記憶に新しいですね。
アルコールの代謝に関係するALDH2という遺伝子で、モンゴロイドでは突然変異(ALDH2*2)が起こり、まったく働かなかったり、相当機能が弱まってしまったという人たちが半分くらいいます。これは、白人や黒人では見られません。
そして、ALDH2の変異型(ALDH2*2)を持つ人たちでは、アルコールの代謝が非常に遅く、少量飲酒で顔面紅潮などが見られます。
それだけでなく、飲酒により食道がんや予後不良の胃がんのリスクが上がることがわかっています。
結論:弱いなら飲むな
では、また(^^♪