値上げ、値上げ、値上げ
日本では給料は上がらないのに、値上げが続き、国民の生活へ影響しています。通常は、年2%のインフレは理想と言われますが、それは賃金も上がるのが前提です。
▼日本の賃金が上がらない▼
現在の値上げの要因は新型コロナ、ロシアによるウクライナ侵攻などなど複数あります。モノそのものが入手しにくくなり価格が上がるだけでなく、石油価格上昇に伴う輸送費の値上げも関係します。
今回は、日本の石油価格の裏側について学んでみましょう。
日本のガソリンは高い?
直近のレギュラーガソリンの全国平均価格は約170円/L とかなり高いんです。オイルショックの時に近い価格です(>_<) ところで世界的にはどんなもんでしょうか?
2022年7月25日の世界の平均ガソリン価格を比較*1してみます。(1ドル=132円)
当然ながら、産油国であるベネズエラ、イラク、ロシアなどは水みたいな価格です。
一方で、欧州はどこも軒並み高いですね。
こうしてみると、日本はアメリカとほぼ同じ売値で、隣の韓国はまだ高いんです。
ところで、なぜこんなに価格差があるのでしょうか?
オペックとは
原油の価格はOPEC(石油輸出国機構)と呼ばれる産油国の集まりで決められています。で、当然、OPECは自分たちが儲ける(or 損しない)ために頑張るわけです。
モノの値段は需要と供給のバランスで決まるのが常識で、供給が多すぎると、豊作貧乏状態で価格が下がるのです。OPECはこれを避けたい。
コロナ禍でロックダウンの影響などで、世界的に石油の需要が減ったので、OPECは減産しました。その後、ワクチン接種が進み、多くの国で経済活動が戻りだすと、需要が高まり価格が上がりました。
しかし、また感染状況悪化すれば、急に需要が冷めることを恐れ、増産を渋っていたので、石油価格はまた上がったというわけです。
なぜ国によって違う
コロナの影響だけでなく、産油国ロシアが戦争に入ったことも価格に影響しています。
ところで、OPECらが原油価格を決めて外国に売るので、理論上はどの国も原油購入価格は同じはずです。しかし、販売価格に大きな違いがありますね。
国によるガソリン価格の違いの主な原因は、みなさんご存知の通り『税金』です。
では、日本のガソリンの税金を見ていきましょう。
ガソリン税
正式名称は揮発油税です。
目的としては、道路整備に使う財源として設定されました。当初は、ガソリン1Lにつき、24.3円の揮発油税と 4.4円の地方揮発油税の合わせて28.7円/L でした。
ところが、急速な道路整備のための税収upの必要性に駆られ、1974年から特例で『しばらくだけ税率上げまっせ』と暫定税率(のちに特例税率)を追加しました。合わせて 53.8円/L がかかるようになりました。
ちなみに、ガソリン税だけで、1年で2兆円以上の税収があります。これは、総税収の約3%を占める*2大きなものです。
さて、35年以上も続いた暫定税率は、2008年3月で期限が切れることになり、ある動きがありました。
ガソリン国会
当時の与党は自民党で、安定した税収確保のために暫定税率の再延長を主張していました。野党の民主党はガソリン値下げ隊というダサい名前のグループを結成し、暫定税率の撤廃を主張しました。
その後、とりあえずは3月31日で一度暫定税率はなくなりました。ところが、衆議院で可決後、参議院で60日以内に可決されず、”みなし否決”となり、5月からまた暫定税率復活しました。
そして、2009年、国民たちは自民党に背を向け、暫定税率廃止を公約にした民主党が政権交代果たしたのです。
ところが、民主党・鳩山政権でガソリンの価格は大幅に下がることはありませんでした。
地球温暖化と税収
『暫定税率撤廃』を公約に圧勝した民主党は、いざ政権をとると、ある局面に直面しました。
世界的に温室効果ガス削減の流れとなり、ガソリン価格の低下により、ガソリン使用増加となれば、時代に逆行することとなります。
さらに、暫定税率の廃止で、1兆円規模の税収が減ることになります。
こうなると、道路工事が減り、GDPの低下となり景気悪化につながりかねない。
てか、そのくらい前もって予想できるでしょーが(笑)
これに対して、鳩山政権が出した答えは、『公約通り』暫定税率を廃止、その代わりに、同じ税率の特例税率を新たに設けることでした。
は?笑
実質、暫定税率の名前が変わっただけでした。国民、ドン引き。
トリガー条項
いやいや、何をおっしゃいますの。暫定税率とは違いますよ!と言わんばかりにトリガー条項を設けました。これは聞いたことありますね?
安心してください!3ヶ月連続で160円/L 超えたら25.1円減税にして、皆様の生活の負担を軽くしますから!!
これがトリガー条項です。しかし、これについても災難が訪れます。
そう、東日本大震災です。
復興財源確保のために、トリガー条項を停止しました。
しつこいですが、年間1兆円ほど変わってきますから、国としてはそんな貴重な財源を手放したくないわけです。
結局、トリガー条項は一度も発動されぬまま、今回もスルーでした。
二重課税?
ガソリン税のしくみをご理解いただいたところで、もう一つ!
ガソリン税はよく”二重課税”だと言われる件について見ていきましょう。
例えば、レギュラーガソリンの価格が160円/L としましょう。すると、その内訳は次のようになります。
こうやって見ると、ガソリンの価格の約半分は税金なんですね。
で、重要なのは、本体価格だけでなく、ガソリン税や石油石炭税の部分にも消費税10%がかかっているところです。これは二重課税ではないか?って問題です。
国の理屈からすれば、ガソリン税などは事業者が支払うもの。消費税は商品価格に対して課税され、消費者が払うものだから、二重課税でないと。
ブランドバッグも、日本に来たら関税がかかり、その併せた価格に消費税がかかるのと同じだよね?という理屈なそうな。
さいごに
いかがでしたか?
ガソリンの価格の半分くらいは税金でした。ガソリン税にさらに暫定税率が加えられています。ガソリンの税収は非常に大きなもので、政府としては長年当たり前に入って来た高額の税収がなくなると景気への影響も懸念が出てきます。
今後、電気自動車の時代が来た時、政府としてはこのガソリン税の収入が減ることが予想されており、その代わりに、走行距離課税というものが世界的に議論*3されています。
ガソリン価格の話は思ったよりも深いのですね~
では、また(^.^)ノ