マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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不穏:コロナ肺炎再来の兆し

年末年始に連休で帰省や集まりがあるのは、日本も欧米も同じです。

そしてその時期が冬という寒く、乾燥するという”かぜ”を引きやすいシーズンだというのも共通です。

今回はアメリカの現在のコロナの報道*1から学んでいきましょう。

2つの変異体

まず記事に入る前に軽く予習しておきましょう。

いま世界的に広がっている新型コロナの変異体は主に2種類が注目されています。

一つは『ピロラ(JN.1)』と呼ばれるもの、もう一つは『BA2.86』です*2

CDC data tracker より引用・加筆

で、ピロラ(JN.1)はBA2.86の子孫株*3なので、結局のところ、このBA2.86系統の2種類が今注目されているというわけです。

オミクロン株が出てきて、日本ではBA.5というものが広がりましたが、その後1年前位からはBA.2系が幅を利かせ、そのマイナーチェンジ(XBBなども)がずっと広がっていると考えるとわかりやすいですね。

結局はオミクロン株

細かいことは抜きにして、オミクロン株の仲間ですので、それほど大きな性質の変化は起きていないと考えることが通常ですが・・・

それでは、本題に入りましょう。

原始株に近づいた

まず、記事では オハイオ州立大学の研究*4に言及しています。

感染性のないBA2.86の偽ウイルスを用いた研究です。

BA.2.86は肺に感染しやすい

すると、BA.2.86は肺の下部に感染しやすい性質があることがわかりました。つまり、原始株やデルタ株のように肺炎を起こしやすいということです。

この傾向については、他にもドイツ、フランスからも同じように報告*5されています。

他の研究でも『肺への感染傾向』指摘

初期のコロナに近く、肺への感染しやすい傾向があり、今後の脅威となるかもしれないという結論になっています。

弱毒化説コケる!?

オミクロン株になって、感染力は格段に増強しましたが、重症化率や致死率は大きく下がりました。それは肺ではなく喉などの上気道に主に感染することで肺炎などの重症化が少ないからです。

『弱毒化説』崩壊するか?!

しかし、先ほど紹介した研究で示されたように、現在流行している変異体が肺に感染しやすいということならば、ウイルスは段々弱毒化し普通のかぜになるという我々の期待も崩れしてしまうことになります。

コロナ入院増加

そして、事実、世界的に、現在コロナによる入院患者が増えているのです。

そしてアメリカでは平均して1日に210~230人がコロナで死亡しています*6

コロナ入院患者の増加

コロナに感染したり、コロナワクチンを打つことで抗体価が上がるので、かかりにくくなったり、重症化を予防することができます。しかし、それらの抗体は3~6ヶ月で低下します。

世界的にも『ワクチン疲れ』があり、最新版のXBB対応ワクチンの接種率が低いことが問題視されています。

最新版ワクチンの接種率低調

アメリカでは、最新版ワクチンの接種率は20%を切っています。

特に脆弱な高齢者や基礎疾患持ちの人は定期的に抗体価を上げておくことで、そもそもの感染のリスクを減らし、重症化も下げることが期待できます。

ま、若くて健康な人たちは免疫がしっかりしているので、数値に現れない細胞性免疫や免疫記憶などである程度長期の予防効果は期待できそうです。

ピロラ(JN.1)は?

それでは、もう一つの注目株、ピロラはどうでしょうか?

先ほどもやりましたが、ピロラもBA.2.86の仲間です。重症化・致死率についてはこちらもまだ出始めで判断はできないとのことです。

ただし、BA2.86と違った特徴がわかっています。

JN.1は消化器系に感染しやすい

それは、消化器系に感染しやすいということです。

コロナの症状でたまに下痢嘔吐を訴える人は以前からいました。コロナウイルス自体は呼吸器だけでなく消化器にも感染するからです。

ピロラはよりその性質がより強いということですね。

これから先は未知

変異を繰り返しては大きな感染の波を作る新型コロナウイルス。

とてもじゃないけど、普通の風邪ではありません。

そして、オミクロン株以降、人間以外の動物の感染が多数報告されています。

新たな懸念

ということは、動物で感染爆発が起こったり、他のウイルスとの組み換えが起こったりでさらにややこしい変異体が出てきて人に影響を与えるかもしれません。

あらゆるところで様々な変異体が・・・

これから先は未知の世界です。

では、また(^^♪