1月15日にネパールで72名を乗せた飛行機が墜落しました。
その直前の飛行機内部の状況をインド人の乗客が生配信*1しており、悲鳴と大きな音、そして画面は炎でいっぱいになります。
こういうニュースを見ると飛行機に乗るのが怖くなりますが・・・
今回はこのネパールの事故のウラ話を見ていきましょう。
ネパールについて
まずはネパールについてサラっと学びましょう。
ネパールはインド、中国チベットに接しています。エベレストを含むヒマラヤ山脈があり、高地が多いことがうかがえます。
つい最近までは王政でしたが、民主化運動により2006年に王政は廃止されました。現状第一政党はネパール共産党(旧:毛沢東主義派)であり、どうも中国のニオイがしますね。
一方で文化的には、インドの影響もありカースト制度が今も影響を与えています。
さて、首都はカトマンズで、第2の都市はポカラといいます。←これ覚えておいてください。
経済的にはアジア最貧国の1つ*2とされており、出稼ぎが重要な外貨獲得となります。日本にも6万人ほどおり、インド料理店はネパール人なんてのはよくある話。
あと、国旗が世界で唯一四角でないのも特徴的です。
ネパールの航空機事故
さて、本題に入りましょう。
ワシントンポストの記事*3で面白いものがありましたのでこれを使って見ていきましょう。
なんと、ネパールでは航空機事故が結構多いという。
そもそも航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%*4であり、438年間毎日搭乗して1度の確率だそうです。
では、なぜネパールでは航空機事故が多いのでしょう?
高い山々
冒頭でも書いたように、ネパールはヒマラヤ山脈を擁する高地です。そして、高い山がたくさんあることも飛行機の操縦を難しくしています。
今回の事故ではカトマンズとネパール第2の都市ポカラというともに高地を結ぶ路線です。そして、高い山々がそびえることで視認の問題、狭い滑走路、強風や荒天に見舞われているのです。
それゆえに航空機事故が他国より頻繁に起きているのです。
過去にネパールで起きた航空機事故を調べるとそのほとんどがCFIT(操縦に問題なく起きた事故)と分類されており、強風や荒天などが主因ということです。それだけネパールは飛行が難しいということがわかります。
もちろん、今回の事故がCFITかどうかはまだわかりません。
難しい着陸
ネパールの空港のは山あいにあることが多く、滑走路の視認性の問題があります。
一般的に山に囲まれた空港は着陸が難しいとされ、日本では松本空港(標高657m)が『日本一着陸が難しい空港』とされる*5ようです。
ネパールではこういった空港がたくさんあるわけです。
通常、このような難関な空港では、霧などでも着陸できるよう計器着陸装置などを地上側から電波を飛ばして着陸を誘導・支援します。
しかし、ネパールのすべての空港にこの設備があるわけではないのです。
標高と気温
一般に、標高が高くなると空気が薄くなります。
つまり、標高が高いと空気抵抗も減るわけで、燃費がいい!だからこそ飛行機はあんなに高いところを飛ぶわけですね。
さらに、気温が高いときも空気が薄くなります。
空気が薄く、抵抗が減ると減速が効きにくいことがわかりますね。
つまりネパールの空港はこの両方『高地×暑さ』で空気が薄いことで着陸がさらに難しくなるのです。
悲しい運命
今回の飛行機(イエティ航空)の副操縦士はAnjuさんという女性(44)です。
実は彼女の夫もイエティ航空で副操縦士をしていた2006年に航空機事故で亡くなっていた*6のです。
夫は米などの食料を運ぶ小型飛行機を操縦中に事故に遭いました。
大きな喪失感と、残された子供を考え、4年後にパイロットになる決意をしました。
試験に合格すると、夫のいたイエティ航空に就職したのです。
イエティ航空には彼女を含めて女性パイロットは6人しかいません。そして、Anjuさんは事故前に6400時間の飛行をしたベテランでした。
あまりに悲しい話です。
さいごに
いかがでしたか?
そもそも飛行機の死亡事故に遭遇する確率は極めて低いです。
ところが、ネパールではその事故は多く、1992年以降で700人以上が死亡しています。
その背景には、高地ゆえの空港設備の制約や、山間の不安定な気候、強風、飛行機自体の不十分な設備などがありました。
その他にも、ハードの面、ソフトの面と両方で様々な問題点も指摘されているのでした。
では、また(^^ノ
*1:https://twitter.com/dhyanendraj/status/1614628027190902784?cxt=HHwWgIDU0drop-gsAAAA
*2:https://www.imf.org/en/publications/weo
*3:https://www.washingtonpost.com/world/2023/01/16/nepal-crash-yeti-air-safety/
*4:「航空機・列車における重大事故リスクへの対応」「リスクマネジメント最前線」2014,No 2, 東京海上日動リスクコンサルティング,p.5