マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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神戸空港国際化までの道のり

今月に入って、神戸空港の国際化のニュースがありました。神戸空港が開港したのは2006年で、16年の歳月を経て国際化が決定した裏側を簡単に学んでいきましょう。

伊丹空港

まず、あの一帯には3つの空港があります。伊丹空港、関西国際空港、神戸空港です。

3つの空港が近接

歴史的経緯をサラッと学びましょう、まずは伊丹空港から。

元々は、日本陸軍の飛行場でしたが、戦後はしばらくGHQの管轄下に置かれました。1958年に日本に返還され、大阪国際空港(伊丹空港)となりました。その名の通り、国際便も就航しました。

伊丹空港について

その後、経済発展した日本では航空需要が高まりましたが、伊丹空港は住宅地に囲まれており、騒音などの観点から拡張は困難でした。

1970年に大阪万博があり、便数を増やす必要がありましたが、騒音などから反対運動が大きく、政府は『国際線を別の所にもっていく』と約束し、何とか万博に対応しました。

関西国際空港

そんなこんなで、国際線を飛ばす新しい空港が必要となり、騒音も気にせず24時間離発着ができるところを探します。なので、海の上に作ろう!となります。

海の上に国際空港をつくろう

候補として、淡路島、神戸沖、泉州沖(今の関空)が挙がりました。(なぜか淡路島だけ陸地に建設予定)

当時海外旅行なんて行くのは一部のお金持ちだけですから、多くの庶民には関係なく、いい思いはしませんでした。

環境問題や墜落事故の可能性などを理由に反発します。

反対運動が強かった

政府は、環境問題に力を入れることを約束し、泉州沖と交渉を進めます。交渉は膠着状態でしたが、最後に政府は『飴』を差し出しました。

空港の対岸に商業施設を作ってあげるから、雇用も増えるし、県外から人も集まるし、土地の価値も高まりますね。そうしてできたのが、りんくうタウンです。アウトレットもありますね。

アメとムチ

こうして、泉州沖で関西国際空港が作られるようになりました。

ま、実際はこの後、バブル崩壊などがあって、予定よりもだいぶ規模が縮小されて作られました。

神戸にも空港を

激しく反対をしていた神戸ですが、泉州沖の商業施設誘致という飴を見て?方針変更します。

神戸にも空港が欲しくなった

しかし、もう、泉州沖で関西国際空港をつくることは決定していました。食い下がらない、神戸。泉州沖での空港建設を認める代わりに神戸にも空港をつくるように約束を取り付けたのです。

神戸空港建設には2つの問題点がありました。1つは大阪湾の環境汚染です。

採算性の問題

そして重要なのが、採算性です。そりゃ近くに伊丹空港もあって関西国際空港もあるので、客の奪い合いとなる可能性が高いからです。

ちなみに、淡路島は当時明石海峡大橋もなく、アクセスの面からもビミョーで、島民の反発も非常に強く、可能性は低くなりました。

伊丹空港存続へ

さて、泉州沖に関西国際空港ができることとなり、かねてより騒音問題・環境問題を抱えていた伊丹空港でしたが、まさかの存続が決定しました。

そうなんです、環境問題や騒音問題で反対しすぎたせいで、関空は泉州沖という大阪中心部から離れた、和歌山との県境に建設となり利便性が大きく低下します。

伊丹空港存続へ

人間というのは勝手なもので、今度は掌を返して、「空港のある町」として共存を目指すように存続を訴えます。

航空会社からしても、伊丹からの東京便はドル箱路線で、廃止となると新幹線に完全にビジネス客を奪われてしまいますから存続を訴えます。

伊丹空港の方がアクセス良好

こうしてみんなの利害が一致し、伊丹空港は存続となりました。

阪神大震災

1994年、いよいよ関西国際空港が開業しました。

採算性を問題視されながらも神戸空港建設を推し進めていた神戸市ですが、1995年に悲劇が起こります。阪神大震災により大きな被害を受けました。復興にも莫大なお金がかかります。

空港は復興に必要

市民たちからも、空港にお金を使う余裕はないとの意見も見られる中、「空港は復興に必要」と市は判断した*1のです。

道路が寸断されたり、鉄道も長期間不通となり、物資の運搬には空路は重要でした。震災の教訓からも神戸空港の建設は必要と判断しました。

経営統合

こうして2006年に開業した神戸空港は、中心部の三宮からポートライナーで20分ほどとアクセス良好です。利用客も増えていき、増便を繰り返しています。

しかし、いつまでたっても拭えないのは持続性の可否です。

3空港の経営統合

3つの空港もある以上は、うまくやっていかねばならず、うまく棲み分けが必要でした。そうして、2015年、まずは伊丹空港と関西空港が関西エアポートとして経営統合しました。これはオリックスが主体となっています。

その後、2018年に神戸空港も民営化し、関西エアポートの傘下に入り、経営統合されました。

神戸空港国際化

コロナ前はインバウンド需要で、日本を訪れる外国人が急増しました。関西は京都・大阪・神戸が近くにあり、観光しやすいため需要は大きいです。

そんな中で、関西へ来る国際線の発着便を増やしたいと考えるのは自然なことです。しかし、関空だけでは捌ききれなくなる可能性があります。

インバウンド需要

それと、阪神大震災もそうですが、日本は自然災害が多い国です。2018年の台風21号で、関空への橋に漂流したタンカーがぶつかったり、関空が水没*2したりもありました。

こういった有事のために、もう一つ近くに国際空港があるべきだという風に考えられたのです。

大阪万博も関係あり

そして、大阪では2025年に万博が開かれますので、世界からの観光客が大阪に来るでしょう。その需要も後押しして、神戸空港の国際化が決まりました。

まずは2025年の万博のときにチャーター便を発着させ、2030年より本格的に国際線を就航させる予定*3となっています。

さいごに

紆余曲折があっての神戸空港国際化。最初は反対していた神戸市が、ゴリ押しで神戸空港を作り、さらには3空港の経営統合、インバウンド需要と万博需要で国際化。

時代の流れと言うものは本当にわからないものですね~

では、また(^^♪