マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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医師のストライキ

ここ最近で一番衝撃を受けたのは、NHKの歌のお兄さんやお姉さんの給料です。NHKの契約社員の扱いなんですね~ 額はここには書きませんが興味があればググって見てください。

さて、今回も少しニュースを覗いていきましょう。

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再入国を緩和

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NHK world より一部引用

ここでぜひ覚えておくべきは on condition that S+V です。これは as long as  S+V とも同じで条件を提示するときに使われます。

内容をまとめると、日本政府は日本の在留資格を持つ外国人の再入国制限を緩和するということです。現在、日本政府は146の国と地域からの外国籍の入国を基本的には禁止しております。

在留資格を有するものというのは、外交官、外国大使館の職員、外国からの報道関係者、留学生などが含まれます。現在260万人ほどが該当します。

今、日本国籍をもつ者はPCRテストを受けることと指定されたホテルなどで2週間の隔離を行うことを条件に再入国を認めています。これと同じルールを適応するわけです。

 

ピークを迎えた

先日行われた日本感染症学会学術集会で、新型コロナ第2波はピークを迎えたとの見解を示しました。つまりは、最もひどいであろう時期を過ぎたと考えられています。

これについては以前もブログで書いていますが、8月11日あたりから再生産数(Rt)*1が全国的に1を切っていたので8月末くらいには減ってくるのではないかと予測できる状況でした。

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東洋経済オンラインより

上図のピンクの線が曜日間での差をなくした週間平均ですが、検査陽性者数、入院治療を要する者のともに山を下って行っているのがわかりますね。もちろん重症者は10日ほど遅れて増えますので引き続き警戒する必要があります。

当然今後新たな山が来る可能性も十分にあります。気を抜いてはいけませんが、正しい情報を正しく理解して、不要な不安を脱却しましょう。

秋・冬にもまた波が来る可能性は高いです。こういうのの繰り返しなのかもしれません。

 

韓国では増加している

以前の記事でも書きましたが、優等生であった韓国でもまた急増しています。韓国では毎日午前10時に集計結果を発表しますが、本日は397名の陽性患者の報告がありました。これは第一波の3月7日以来の高水準で、ソーシャルディスタンスの段階を引き上げることにしました。

韓国のK防疫のポイントは、GPSやカード情報の個人情報を利用して濃厚接触者を捉えて効率よくたくさんの検査をするという方法です。これは前回2015年のMERSでの失敗から学んだことと、そのときに検査能力などをしっかり整えたことにより初めはかなりうまく抑えていました。

しかしながら、海外、特に民主主義国家ではこのK防疫は人権侵害となり受け入れられないというのが実情でした。

いずれにしてもMERSでうまくいった方法で感染を押さえれていたが、今回の新型コロナは相当タチが悪く、小さなボヤ*2 を消しきれないと、大火事になることを証明しています。

 

医師がストライキ

感染急拡大の中、韓国では医師がストライキを行うという珍しいことが起きています。

これは韓国政府が医師数を増加させる方針を出していることに対する反発です。

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人口1000人当たりの医師数

人口1000人当たりの医師数は1位がオーストラリアで5.24人、日本は2.49人、韓国は2.39人です。アメリカは日本よりわずかに多く2.5人くらいだったと記憶しています。

OECD加盟国の平均が3.49人と発表されていますので日本も韓国も平均よりも人口に対する医師数が少ないということがわかりますね。

韓国も日本も医師不足はよく似ていて、ソウルなどの都市では医師過剰気味で、地方都市では医師不足が深刻であります。また、医師は志望した科に入るわけですが、キツいしんどい科は当然人気がなくなるわけです。

まとめると地方や不人気な科では医師不足が深刻なわけです。そこで韓国政府としてはそういった部分を是正するために地域医師を10年かけて3000人増やす方針を打ち出しました。要は日本でもありますが奨学金を出す代わりに決まった年数を田舎の病院で働く必要があるというわけです。

 

既得権益の問題

ではなぜ医師不足なのに、医師が増えることに反対しているのでしょうか?

医師には定年がありません。70歳の現役医師とかもいますよね?つまり、医師は自らが診断能力の低下や老衰などで退かない限り減らないのです。増やし続けるとある時には過剰になってしまうのです。

これは歯科医過剰問題で明らかになりましたね。要は、戦後は虫歯が多く歯学部を国策で増やしたところ歯科医師が増えすぎて、いまやコンビニよりも多いなんてことになりました。ところが、虫歯は減っているという。。。つまり増えすぎると稼げなくなるのです。

コンビニよりも多い歯医者

www.multilingual-doctor.com

平均年収は日本の勤務医と同じくらいかやや少なめ(1100万円くらい?)です。国民全体での平均年収が日本の平均年収の7割くらい(430万 vs 310万として)ですから、そう考えるとかなり恵まれている業種なわけです。

 

地域枠について 

日本では以前から『地域枠』たるものがありました。要は地元出身の高校生を優先的に入学させることで、将来的にもその県に医師として残るというものですね。

医学部ってちょっと特殊なんです。「この大学に行きたい」ってのもあるのはあるのでしょうが、「医学部ならどこでもいい」っていう受験生が多いんです。

医師の資格があれば、別にどこでも働けるわけですから学生の間は田舎でもいいよって考えが普通です。

そこで、縛りを作るんですね、「卒後7年は●●県で勤務する」というもの。その代わり授業料を県が払ってくれたりします。医学部の授業料は国公立なら年間50万円くらいで卒業までに320万円くらいです。私立ならその10倍くらいですかね。

さらにはお小遣いをくれることもあります。(笑)

ただね、医師になってから稼いだお金でこの分を県に返せば、働かなくてもいいんですよね、実際は。だからどこまで効果があるかは謎。

 

医師不足は非常に難しい問題です。特に地方問題。

いずれにせよ即戦力の若手医師がストライキをしているのはマンパワー的に問題があるので、韓国政府もそちらの対応も迫られています。

 

 

ではまた(´・ω・`)

*1:1人の陽性患者が何人に感染させるか

*2:8月初旬まで20-30人/日 の報告だった