マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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携帯電話で脳腫瘍できる?!

昔から携帯電話の電磁波の影響で脳腫瘍ができるなんて話がよくされていました。

今回、この辺、確認していきましょう♪

スマホ使用の注意喚起

2007年にiPhoneが登場して以降、スマホが主流となりました。

多くの人が毎日スマホを使う中で、2017年末にある声明が話題になりました。

カリフォルニア州公衆衛生局がスマホ利用に関する注意喚起*1を出しました。

カリフォルニア州公衆衛生局注意喚起

科学的には証明されていないが、スマホから出る電磁波が脳に悪影響をもたらすと指摘する科学者がいるというのが理由ですが、州の公的機関がこのような声明を出したことで多くの人に衝撃を与えました。

物理学的にエネルギーは、距離の2乗に反比例しますから、離れれば離れるほど影響が少ないですね。

Bluetoothイヤホンも電磁波・・・

そこで、ちょっとでも距離を取るために、通話時のBluetoothイヤホンを使用する人が増えたわけです。

ただ、当たり前ですが、Bluetoothイヤホンも電磁波を出して通信するので、そちらもリスクっちゃリスクですよね(笑)電磁波の量はスマホよりすくないでしょうけどね

5Gの登場

社会に不安を煽って何かを買わせる、あるいは商売を邪魔をするなんて手法は、何か新しいものが出てくると必ず現れます。

近年話題の5G、人類初のmRNAワクチンもしかり、

あ、そういえばワクチン打てば5Gにつながるとか・・・察し( ゚Д゚)

 

話は戻って、5Gの時代の到来とともにまた『スマホと脳腫瘍』が議論されるようになりました。

Oxford大学の研究*2を見ていきましょう。

携帯電話の通話で脳腫瘍に??

スマホを使用するとき、顔の近くで操作するし、通話時は側頭葉の近くに持ってきます。こうすると、接近した脳に電磁波の影響があるのでは?と誰もが思いますね。

また、国際がん研究機関(IARC)は電磁波はがん発生に関与するかもしれないとしています。この2段論法で『スマホで脳腫瘍できる』という単純な思考回路が広められてしまいます。

イギリスでの研究

イギリスで50歳以上の女性の主にがんに関する研究(Million Women Study)があるのですが、そのビッグデータを用いて、携帯電話(スマホを含む)の使用と脳腫瘍の発生について解析されました。

携帯電話の使用・不使用で差はない

スマホ登場前の2001年から始まり、平均フォローアップ期間は14年で、携帯電話の使用者と「ケータイ?何それ?」のおばあちゃん群で脳腫瘍の発生に差はありませんでした。

その他の腫瘍についても増加なし

そして、その他の腫瘍についても調べました。

毎日、10年以上携帯電話を使用しており、週に20分以上通話をするという標準ユーザーにおいては、脳腫瘍以外のいかなる腫瘍についても発生の増加は見られませんでした。

この研究では若い人についてはわかりませんし、男性も含まれていません。

あと、どのくらいの使用頻度でリスクが上がるかまではわかりませんでした。

台湾での研究

同じような研究はいろんな国で行われています。

台湾でも20年に及ぶ携帯電話使用と脳腫瘍に関する研究があり、その論文*3Cancersに掲載されています。

台湾『脳腫瘍増えています』(論文Fig.1 引用・加筆)

これ、まず時代が右から左に流れることに注意してください。

黄色が携帯電話の使用者数ですが、横ばいに見えますが、約1780万人から20年間で約2920万人に60%ほど増えています。台湾の人口は2300万人なので、仕事などでの2台持ちも結構いますね。

で、緑の脳腫瘍発生数が増加しており、水色の脳腫瘍死者数は増えてから横ばいという感じですね。

影響はほぼない?

あのグラフだけを見ると、あたかも携帯電話の使用者数とともに脳腫瘍が急増しているようにも見えますが、そう単純なものではありません。

科学を無視した考え方

世の中で変わったことが携帯電話だけならばそう考えるのもわかりますが。

他にも交通系ICカードだって、家電製品だって電磁波出てますからね(笑)

実際は、医療の発達で診断される件数が飛躍的に増えたことも関係あります。他の癌でも同じように増加していますね。

また、若年性の癌が急増していることについても肉や加工食品摂取量の急増の影響がわかっています。

若いがん患者急増

www.multilingual-doctor.com

さて、この台湾の研究では、携帯電話使用者の増加と①脳腫瘍患者数、②脳腫瘍死者数との関係性を回帰分析して調べています。

スマホ使用者増加でわずかに脳腫瘍増加?

スマホ使用者が100万人増えると、脳腫瘍の割合が10万人あたり0.35人増加するという関連性がわかりました。つまり、100万人スマホユーザー増えると、0.00035%脳腫瘍発生のリスクが上がるということです。

the 微々

スマホ使用と脳腫瘍死者は関連性低い

一方で、スマホ使用者の増加と脳腫瘍による死亡者数についてはかなり関連性は低いとわかりました。数字上は100万人スマホ利用者が増えると 10万人あたり0.95人の脳腫瘍による死亡者が増える、つまり0.00095%だけリスクが上がるというものです。

the 微々

スマホ使用と脳腫瘍の関連は認められない

この論文の結論としては、スマホ利用者の増加と脳腫瘍との関連性は希薄であるとしています。

さいごに

いかがでしたか?

スマホを含む携帯電話で、脳腫瘍が増えるとか、体に特定の影響があるという確たるものは、少なくとも現段階で一つもありません。

20年以上に及ぶ2つの研究を紹介しましたが、どちらも『関連なし』としています。

枕元に置くことに関しても、電磁波に関してはそれほど気にする必要はなさそうです。

しかし、スマホの光などで睡眠への影響は懸念されています。

 

では、また(^^♪