マルチリンガル医師のよもやま話

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複雑すぎる中東のおはなし

先日、バイデン大統領になって初めてシリアへの空爆がありました。トランプ政権でもシリアへの空爆を行っています。

ところでアメリカはなぜシリアに空爆をしたのでしょうか?日本人にとっては遠い地、中東の情勢について少し学んでみましょう。

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シリアの簡単な歴史

シリアってどこにあるかご存じですか?一般に中東と呼ばれる場所で、イギリスやフランスなどの西欧諸国の東側に存在します。シリアの周りにはトルコ、イラク、ヨルダン、イスラエルなどがあります。

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シリアの位置 @ Google Map

正式名称はシリア・アラブ共和国といいます。共和制なので、国王はいません。

簡単な歴史としては16世紀以降はオスマン帝国の一部でしたが、20世紀初頭にイギリス・フランスの植民地となりますが、第二次世界大戦後に独立しました。首都はダマスカスです。

現在の大統領はバッシャール・アサド氏です。アサド政権ってニュースでよく聞きますね!

アサド政権

アサド氏のお父さん、”パパ・アサド”はシリアの第4代大統領でした。亡くなる2000年まで30年にも及ぶ長期政権でした。独裁政治で有名で、民主化などを叫ぶ知識人らはどんどん投獄されていきました。こうして民衆に恐怖心を植え付けていました。

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アサド大統領

さて、パパ・アサドの次男として生まれたバッシャール・アサドは医師になり、ロンドンで働いていましたが、兄(長男)が事故死していたため、パパ・アサドの後継者に抜擢されました。彼は医師であり政治は専門外のため、不安視されていた部分もありました。

しかし、父親時代からの通り、自分に歯向かう勢力には容赦をしない独裁政治を続けていました。

 

シリア内戦とイスラム国

2010年にチュニジアから始まった反政府運動がアラブ世界で広まったものをアラブの春と言います。アラブの春はシリアにも波及し、アサド政権のシリア軍 vs 反政権派民兵の戦いからシリア内戦が始まるのです。

中東では民族対立、宗教対立が盛んに起こっているのはご存じでしょう。シリア内戦に乗じて様々な組織が介入してきました。その一部が過激派組織のイスラム国です。(国連やアメリカ、日本は、”国”として認めない為、ISISやISILと呼んでいます。)

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イスラム国ができるまで

イラク戦争でフセイン政権(スンニ派)が倒れた後、新政権(シーア派)ができました。その後、スンニ派の軍幹部が過激派組織に入り、イスラム国になりました。新政権とアメリカを恨んでいるのも理解できますね。

イラク国内での政権奪取が難しくなり、イスラム国は内戦状態のシリアへ進出したのです。そこで反政府軍を吸収していき大きくなりました。

アメリカの立ち位置

40年以上前からアメリカはシリアを”テロ支援国家”に指定してきました。いまもアサド政権の独裁を批判しており、2004年から経済制裁も行っています。

シリア内戦で、アサド政権が禁じられているサリンなどの化学兵器を使用し虐殺したことが明るみに出てき、2017年アメリカ、フランス、イギリスなどがシリアに空爆を行いました。これがトランプ政権での空爆です。

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複雑すぎる関係

基本的には反政府軍を支援している立場のアメリカですが、シリアにはイスラム国も顔を出しているのです。反アサド政権という点では共通ですが、イスラム国は反米です。なんともややこしい。。。

 

アサド政権が潰れない理由

米英仏などの多国籍軍のほか、イスラム国、反政府軍を敵にしているのに、なかなか粘り強いアサド政権。なぜでしょう?

答えは強力な後ろ盾がいるからです。中国とロシアです。

ロシアとはソ連時代から親密な関係でした。シリアに武器を売ったり、2015年にはアサド政権を支援するために軍事介入しています。イスラム国が弱体化したのもロシア軍が攻撃したからです。

同様に中国も昔から友好国でシリアに武器を売っています。またシリアの最大の貿易相手国でもあります。

欧米諸国が主体となって国連でアサド政権への制裁を提案しますが、常任理事国であるこの2国が拒否権を行使するので当然通りません。国連や常任理事国のあり方は今一度議論すべきです。

国連は誰のためにあるのか

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今回の空爆

さて、では今回のバイデン政権初の軍事行動である、シリア空爆は何があったのでしょうか?

実は今回の空爆は、アサド政権とは直接関係はないようです。2月中旬に米軍駐留拠点周囲がロケット弾攻撃を受けたことの報復行為だと発表されています。米軍拠点へ攻撃をした武装組織はイランから支援を受けています。そうなんです、実はイランもアサド政権と仲がよいのです。

また、イランがアメリカにちょっかいを出してくるのには理由があります。

 

イランの核開発

イランは核拡散防止条約に加盟しているにもかかわらず核兵器開発を行ってきました。そして欧米諸国はイランへの経済制裁を行いました。長期の制裁で、次第にイランも困窮していき仕方なく融和路線に踏み切ったのです。

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イランの近代史

またアメリカとも関係改善に乗り出し、2015年にオバマ政権下でイラン核合意が結ばれました。しかしこの合意は『15年間使用制限』など期間限定であったり、『弾道ミサイル開発を制止しない』という中途半端なものであるとしてトランプ大統領が合意から脱退し、イランに経済制裁をかけたのです。

こうして怒ったイランは米軍基地へ攻撃をしたり、アメリカが報復したりを繰り返しています。イランとしては核合意を再締結し、経済制裁を解いてほしいわけです。

バイデン大統領も核合意に復帰をめざしていますが、イランの核開発制限をしっかりと示すように求めています。

 

まとめ

いかがでしたか?

知れば知るほど複雑な中東の関係。宗教対立、民族の対立、様々な国の思惑など。。

現代の日本という平和な国に生まれたことは奇跡的なことなのかもしれません。

海外に目をやると、今でも混沌とした地域がたくさんありますね。

 

では、また(^^♪