マルチリンガル医師のよもやま話

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危険ウイルスのサンプル行方不明

中国では年末にヒトメタニューモウイルス感染症の爆発が報じられており、隣のインドなどでも広がり始めております。思い返せば、さらに1年前は中国で薬剤耐性のマイコプラズマ肺炎が感染爆発し、遅れて日本も大流行がありましたね。うーーーむ。

さて、今回は2024年の年末にオーストラリアから恐ろしいウイルス関連のニュース*1が届いていますので、今回はこれを学んでいきましょう。

ウイルス失踪?

オーストラリア・クイーンズランドの研究室から、保管されていたウイルスの入った323本のバイアルが行方不明になったようです。

しかも、事が起きたのは2021年で、微生物管理において重大な安全管理違反が認められたと発表されました。

危険ウイルスが行方不明に

そのうち100本ほどのバイアルには感染すると致死率の高いヘンドラウイルスや狂犬病に似た症状を呈するリッサウイルスも含まれていました。

微生物の管理が杜撰であると、研究室からウイルスが外の世界に広がり、アウトブレイク→ひどい場合には新型コロナのようなパンデミックを引き起こすことになります。

それだけ大きな問題です。

ヘンドラウイルス

ヘンドラウイルスは1990年代にオーストラリアで馬の不審死(致死率75%)から発見されたウイルスです。

馬の世話などをしていた人が感染し、その殆どの人が死亡しました。

自然宿主はオオコウモリだとわかっており、中間宿主のウマの体液や排泄物を通じてヒトにも感染しうることがわかりました。

ヘンドラウイルスとは

アメリカ・コーネル大学の獣医学部のライナ・プラウライト教授の説明によると、ヘンドラウイルスのヒトでの致死率は57%と高く、非常に恐ろしいウイルスだといいます。

現時点では馬の畜産に関わる人達とその家族近辺での発生ですが、それは致死率が高いため広がりにくいエボラウイルスと似ています。

しかし、怖いのは今後ヒトへの感染が発生するたびに変異の懸念もあります。

高い致死率と引き換えに高い感染力を手に入れる変異をしてしまうと、コロナの二の舞いです。

どう転んでも怖いウイルスです。

ハンタウイルス

続いてハンタウイルスについて少し見ておきましょう。

こちらはネズミなど齧歯類が体内に持っていますが、ネズミらは症状が出ません。

ハンタウイルスとは

韓国の漢灘江(ハンタンガン)のネズミから見つけたことにより、ハンタウイルスと名称がつきました。

ネズミの排泄物などからヒトに感染すると、HFRSという出血熱や呼吸困難にいたるHPSという肺障害を引き起こします。世界での発生のほとんどが中国で起きています。

ヒトの致死率は38%と報告されています。

大きな心配なし

ヘンドラウイルスハンタウイルスは感染すると致死率が高く恐ろしいウイルスです。

しかし、これらの感染経路は、見てきた通り、動物の体液や排泄物などへの接触です。万人が馬にしょっちゅう触れることはないでしょうし、よっぽどの古い家でネズミが大量に棲みついていない限りはリスクは限定的です。

体液や排泄物に注意

当該研究室は記者会見を開き、ウイルスの入ったバイアルが破棄されたのか、どこかに移動させたのかというのがわかっていないと。しかし、盗まれた痕跡はないと。

そして、ハンドラウイルスが過去にバイオテロに使われたことはなく、現時点では危惧していないと。

『素人では無理』

ウイルスが行方不明なことを謝罪しつつもパニックにならないようにと研究室の責任者は呼びかけています。

一番の理由は、バイオテロにウイルスを使うのは相当なレベルの知識・技術が必要な上、多くの情報は公開されていない為、そんじょそこらの素人が仮にウイルスを盗んでもそれでテロはできない!とのことだそうです。

なめとんか!笑笑

『素人にバイオテロは無理ですし』

で、『いつからないのか?』の質問に対しては、保管していた研究室の冷凍庫が故障したときに最後に存在を確認していると述べています。

通常このような検体は厳重に保管されており、場所を移す時にはどこからどこに移したかという正式な文書が作成されます。しかし、その書類がありません。

オーストラリアのクイーンズランド当局は、「この安全管理違反により、近隣地域に何かしらのリスクが起こるという恐れはないだろう」と述べています。

その理由として、これらの行方不明のウイルスは、冷凍庫から出されてしまうと比較的早い段階で感染力を失うからだと。

『適切に処理された』

クイーンズランド州の厚生長官の考えでは、間違えて、一般ごみに捨てられたということはありえないと。恐らく、研究室のプロトコール通りにオートクレーブ滅菌処理されたとのだろうと言います。(根拠はないけど)

実際、近隣でこれらのウイルスの感染症の報告はありません。

適切に処理された(はず)

元記事では、英国のウイルス学者が登場し、コメントしています。

ウイルスを研究用に保管するときは、感染力を維持させておくことが重要で、そのためには、何かしらの細胞内にウイルスを入れておき、超低温(-80℃)で保管しなければなりません。

もし、この環境に置けなければ、数日のうちに感染力を喪失してしまうだろうと。

なので、超低温冷凍庫から出されて、数日のうちに誰かが感染しなければ、そのウイルスが広がることはないと補足しています。

なぜ今になって

さて、危険ウイルスが行方不明なのは間違いないけれど、それらが仮にどこかに出されていても、超低温冷凍庫から出たら数日で感染力を失っているので安心して!というのがここまでの流れでした。

最初にも書きましたが、この行方不明は2021年に起きています。

なのに、この研究室の安全管理違反が2024年12月に騒がれていると・・・なぜここまで遅きに逸したのか?ここら辺が今後の調査の対象となります。

徹底した原因究明再発防止のために厳正な調査が望まれます。

 

こういうのを見ると、武漢のウイ・・・・(-ω-)/ヤメトケ

 

 

実際、2003年に中国であったSARSのときも、原因ウイルスを保管した北京のウイルス研究所の杜撰な管理により、ウイルスが研究室から流出し、近隣の9人が感染し、1人が死亡した*2という報告もあります。

まじで怖いもんであります。

 

では、また(^^♪