マルチリンガル医師のよもやま話

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【衝撃】もはや逃げられない現代人

過去に何度か当ブログでも扱った『若年性大腸癌』について衝撃な新事実が分かった*1ようなので、今回はそれを学んでいきましょう。

若年性大腸癌急増

これは過去に何度も記事にしていますが、

大腸癌の患者数は、検診でのポリープの段階で発見→切除などの効果もあり、アメリカでは減っています*2。(ちなみに、日本では増加*3しています。)

大腸癌患者は減っている

ここ最近問題視されているのは、アメリカで50歳未満の若年性大腸癌ここ30年で50%増加していることです。

さらに、20-30代に限定して言えば、今から2030年までに90%増加すると予測されています。

若年性大腸癌は増加の一途

肥満偏食やソーセージ・ポテトチップス・カップラーメンなどの超加工食品などが原因の1つとして考えられています。

食物繊維をしっかり摂ろう

食事の影響は大きいと考えられ、超加工食品の摂取増加と食物繊維の摂取が少ないことで腸内細菌叢の変化が起きていることがわかっています。

また、一見体によさそうな、サラダ油にも罠があるようです。

植物の種から作る油(種子油)で、特にリノール酸などのω6脂肪酸を多く含む、ベニバナ油、ヒマワリ油、サラダ油の過剰摂取が大腸癌増加に関連*4するようです。

若年性大腸癌急増

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農薬と空気汚染

若年性大腸癌に関する160以上の研究を集めたレビューによると、食物中の農薬と飲料水に含まれる有害物質、さらには空気汚染が若年性大腸癌の増加に拍車を掛けていると指摘しています。

なんと、これらの相互作用が腸内細菌叢を変化させて、慢性炎症を引き起こし、健康な細胞が減り、癌細胞の増大を促していると。

そして、この若年性大腸癌の問題は、1950年頃から何十年もかけて進行してきたものであると述べています。

そのため、いまの子供たちを救うためにも早急に環境対策などを取る必要があるともコメントしています。

PM2.5

オマーンの大学の研究において、1950年以降に生まれた人たちを対象に、環境汚染への曝露について調べました。

その中でも特に意識されたものがPM2.5です。

PM2.5というのは粒子径が2.5μmより小さいものの総称で、スギ花粉の1/10くらいの小ささです。

PM2.5とは

※ちなみにコロナウイルスはさらにさらに小さな0.1μm程度と言われています。

とりあえず、PM2.5は小さすぎて、吸い込むと鼻毛とかそんなんで、捕獲できないんで、肺の奥深くまで入って行きます

で、一番奥の非常に薄い肺胞上皮細胞をすり抜けて血管内に入り込み、全身を駆け巡るのです。

それにより、心筋梗塞などの循環器系の疾患が増加する一因*5とも考えられています。

PM2.5について

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PM2.5というものが増えているのは人間の活動のせいです。

工場からの排煙や、石油ストーブ、車の排気ガス、さらには暖炉で木を燃やす等といった化石燃料の燃焼により空気中に排出されます。

多くの国々で工場が大量に作られ、車に乗る人口も増えていることが主因です。

このPM2.5が体内に入ると大腸で炎症を引き起こし、それが持続することで、局所の免疫低下を起こし、大腸癌の発生に寄与すると考えられています。

PM2.5と若年性大腸癌

2020年にタイで6万人の成人を対象とした研究*6が行われ、埃や煤の中に含まれるPM2.5若年性大腸癌のリスクを15%引き上げていることがわかりました。

米国内でPM2.5の分布がもっとも多いのは、南東部とアパラチア山脈に接する地域*7でした。

PM2.5と若年性大腸癌

名前を挙げると、オハイオ州、ミシシッピ州、オクラホマ州とその他2州です。

国立がん研究所のデータによると、これらの州では若年性大腸癌の割合が最も高いグループになります。

農薬の使用

1950年から比べると今は農薬の使用量が50倍以上になっています。

たとえば1952年ではトウモロコシ畑では農薬使用率は10%でした。

しかし、30年後の1982年では、トウモロコシ畑の95%が農薬を使用していました。

いくつかの研究*8*9によると、アメリカ人の最大8割の血液中に残留農薬が検されました。(ただし、体に影響がある程度の量かどうかは不明です。検知のみです。)

農薬の光と陰

農薬は大部分が空気中、土壌中、水中に流出し蓄積します。

2024年に発表された研究*10では、米国内3100以上の郡部のデータで、大腸癌の原因として喫煙よりも農薬に関連するものが73%高かったようです。

つまり喫煙以上に農薬が圧倒的に大腸癌に関連しているという意味です。

果物などはまず水洗いをしてから食べるようにと著者らは薦めています。

イチゴとほうれん草は残留農薬が多い*11というのは有名ですね。

身の周りに潜むリスク

オマーンの研究によると、農薬が大腸癌リスクを挙げる理由として、内分泌攪乱物質を挙げています。

一昔前は、マスコミなどで環境ホルモンと呼ばれたもので、体内のホルモンに影響を与える物質のことです。環境省による内分泌撹乱物質のリスト*12を見ると、たくさんの除草剤殺虫剤の名前が載っています。

内分泌撹乱物質

農薬が体内ホルモンに影響を与え、遺伝子変異を引き起こし大腸癌発生に関与していると言います。

他にも飲料水に、ヒ素という重金属が含まれており、これらも一因だと言います。

水道管は鉛管が使われていましたので当然その水の中に鉛が溶け込みます。現在の日本でもかなり減ったものの、鉛管はまだ使用*13されております。というのも、敷地内の水道管は自分で交換しないといけないからです。

水質と若年性大腸癌

国際がん研究所(IARC)は鉛は“発がん性のある可能性“としています。

血中に入った鉛などの重金属が、大腸などの臓器へ流れ着き、正常細胞を壊します。

実際、アラスカ州、ニューメキシコ州、ルイジアナ州は2019-2023年で、水道水の品質基準違反が最も多く*14、同時に若年性大腸癌の発生も多いのです。

主因ではない

ここまで見てくると、農薬は怖いから、野菜や果物を食べない方がいいと考えてしまうかもしれません。

実際、農薬が大腸癌発生のリスクになりうるという*15指摘がありますが、決して主因ではないです。癌は複合的な要因で起こります。

日本人男性の発癌の要因

例えば、日本人の癌発生の原因について調べた研究*16では、男女ともにトップ3が喫煙・飲酒・感だということがわかっています。他には、運動不足、塩分過多などが上位にあります。

日本人女性の発癌の要因

つまり、世の中に発癌リスクがあるものはあふれています。

癌リスクを下げるために、農薬使用した野菜・果物を避けるのは、優先順位が低いわけです。

僕のように毎日晩酌してる奴が、『農薬癌なるから野菜気をつけよなー』とか言うのはスーパーバカボンというわけであります。笑

 

さてリスクはあっても、重要なのは『量』です。

農薬がある程度食物経由で体内に入るのは織り込み済みで、それの安全許容量を十分に確保して科学的に現在の使用量が決められています。

ラウンドアップと風評被害

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さいごに

いかがでしたか?

もうPM2.5とか息するだけで避けられへんし、野菜とか『国産で安心ね、うふ』とか言うても、実は日本は農薬の使用量が世界的に見ても多く残留農薬(影響は不明)の懸念は大きい・・・

生きていたらもうどうしょうもないリスクがたくさん出てきました。

今の人類の繁栄があるのは、人類の知恵・科学技術の発展の賜物です。

ここで、これを放棄して、農薬全面禁止、工場排煙禁止・・・とか文明の逆行なんてできません。

便利な生活を享受する対価を今受けているということですね。

気にしすぎると、生活できません。まずは、癌の原因の主なもののリスクを下げるのが一番効率よさそうですね。

その上で、野菜や果物は水洗いしっかりしてから料理しましょう!

では、また(^^♪

『農薬やめます』⇒結果

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