マルチリンガル医師のよもやま話

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緊急事態宣言が出ても冷静にデータを見よう

2020年4月7日 日本政府は東京都、大阪府を含む7つの都道府県に緊急事態宣言を発表しました。

色々な声がありました。「出すには遅すぎる!」という批判もあれば、「明日からお店どうしたらいいんだ?

全員にとってうまくいく政策は絶対にありません。政府が何をやってもその反対側の意見を使って騒ぐ野党とメディア。

それはさておき、そういった「意図ある煽り」に飲み込まれずに私たちは引き続き冷静に事を見ていきましょう。

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緊急事態宣言

世界各国の感染のひどい地域ではロックダウンなどを含む非常事態宣言(declaration of a state of emergency)を早いうちに出しているところもありました。

日本ではこの非常事態宣言または緊急事態宣言は、実は比較的新しいのです。2012年に新型インフルエンザ等対策特別措置法が制定されました。

これは当時鳥インフルエンザが流行していたことにより作られたわけです。この法律の制定により、日本国総理大臣は感染症の国内での拡大などが起こった際に緊急事態宣言を出すことができるようになりました。

緊急事態宣言を出すと、各都道府県知事が住民に外出自粛を要請したり、大きなイベントの中止の要請や、映画館やカラオケなどの娯楽施設の使用制限の要請などができるようになるわけです。

そして今回の新型コロナウイルス感染症が広がり、2020年3月13日に、この感染症も同法の適応(2年間)と法を改訂しました。

 

ロックダウンはできない

ロックダウンオーバーシュートやら、一時期TVでこれみよがしに使っていましたね。そして、コメンテーターたちも知識人ぶって頻用していました(笑)

「ロックダウンとは、すなわち・・・(ドヤ顔)」

「クラスターとは、すなわち・・・(ドヤ顔)」

この無駄な時間に釘を刺した河野太郎防衛相の発言は本当におっしゃる通りだと思いました。

www.yomiuri.co.jp

さて、今回出された緊急事態宣言の時に「首都封鎖?」とtwitterなどで話題になっていましたが、法律の中身を考えたらそんなことできません。

さっき学んだ新型インフルエンザ等対策特別措置法というものでは、都道府県知事が外出自粛を要請したり、娯楽施設の休業などを要請するまでしかできません。

なので、日本でロックダウンなんてあり得ません。

 

実は大きく変わらない

緊急事態宣言”が出ても鉄道は平常運転で、朝から満員電車は普段どおりでした。昨日、安倍総理も言っていましたが、鉄道は平常運転、スーパーも通常営業です。

もちろん、これらを止めてしまうと日常生活にかなりの支障が出ることなどから行っていません。

電車動いてるから会社に行かなきゃ

過去の豪雨災害の時も台風のときもそうでした。それを考えたらいっそいきなり運休とは言わずとも減便から開始してもよかったのではないでしょうか?

電車を減便したら混雑度がさらに上がって感染拡大につながる!!

こんな批判もあるのでなかなかできないのでしょう。

要するに緊急事態宣言を発表することで平和ボケした日本人に「ヤバい状況なんやで―!!」と自覚させることで少しでも自粛を強めるのが目的です。

重要な目標は今医療崩壊を起こさないことです!ウイルスの嫌いな暑さ湿度が出てくるまで感染者数を少ないまま保って時間を稼ぐことが重要です。

 

 

現在の感染の状況

緊急事態宣言が出たいまも満員電車は変わらず、このままでいいのかと不安に駆られますが・・・こんなときも落ち着いてデータをゆっくり見てみましょう。

前回の記事でも説明しましたが、TVでは感染者数のみ報道して、検査数や重症者の割合などは報じません。結果として不安をあおっているだけになっています。

前回記事はコチラ

www.multilingual-doctor.com

まずはRT-PCR検査数と感染者数を見てみましょう。

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厚生労働省HPより

さて、検査の陽性率は 3906 / 55311 = 7.06% です。(前回記事では6.84%

 

重症者の割合

続いて重症者の割合も見てみましょう。

 

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厚生労働省HPより2

原則陽性となった人は入院します。改善した人は一定の期間の経過観察後に退院します。すでに605名(全陽性患者の15.5%)が退院しています。

現在入院して治療を受けている人 は3204名で、人工呼吸などの集中治療を必要とする重症患者は80名です。ですので入院患者のうち重症者の割合は 80 / 3204 =2.50% です。前回の記事では3.10%でしたので少し下がっていますね。

これは若い20代などの軽症飲み会感染者集団が増えたからでしょうか。

さて、死亡率ですが、死亡者は80名ですので、全陽性患者(3906人)で計算すると、2.05%ということになります(前回記事では 2.35%)。

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まとめ

緊急事態宣言が出たら、都道府県知事がいろいろと「要請」できるようになる。

あくまで「要請」でありロックダウンなどできない。

日本国内での死亡率、重症患者の割合はやや低下傾向。

これらは軽症となる20-30代の集団感染があったため見かけの重症率は下がったか。

 

少なくとも短期間での変化は意味がありません。

しばらくこの計算を続けてみんなで見守っていきましょう。