マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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アメリカのチップ文化に異変

物価高騰・・・

ニュースで聞かない日はありません。今回はインフレにまつわるアメリカのお話を紹介します(^^♪

日本のインフレ

少し現状把握を・・・

経済成長するには、適度なインフレが必要と言われています。物価とともに賃金も同じように上がっていく・・・これが理想です。

日本はバブル崩壊後、30年もの間、『不況』により国民の購買意欲も下がり『デフレ』が続いていました。

日本のインフレ

そこで日銀は”異次元の金融緩和”を行っています。

要は、金利をめちゃくちゃ低くして、みんな借金してビジネスしてお金を回してね♪ってことです。ま、実際、これはそこまで大きな効果を見せていませんでした。

ところが、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻により世界的なインフレが訪れます。

世界的なインフレの到来

輸入品の高騰は、進む円安により増幅効果を受け、エネルギー価格の高騰があらゆる分野でのインフレを起こしています。

低金利政策はインフレを加速させますので、やめなければなりません。

しかし長く続いた低金利政策を急にやめると、借金を返せなくなる企業の倒産や、住宅ローン破産は今(約3%)より増えることになります。

低金利やめれない日本

こういった背景もあり、日本は、賃金も上昇してくるまで緩和政策は辞めれないという状況です。

アメリカはインフレ対策に金融引き締めに向かってますので、現状では円安は当面続きますな。

チップの機会急増

では、本題に入ります。

アメリカではインフレは意外なところに起こっている*1ようです。

全米でチップの機会が増える

アメリカ全体で、チップを支払う機会が増えていると。

今までは必要のなかったファストフード店やスーパー、ネットショッピングやセルフレジさえもチップを求めるようになっているというのです。

アメリカ旅行する前にみんな本で学びますよね?レストランとかで"service"を受けたらチップを15~30%くらい払うとかいうやつ。ファストフードは要らないというのが一般的。

SNSで怒りや不満・・・

SNSではこういった”便乗チップ”に怒りや不満の声が溢れています。ある女性は、『なんでサブウェイでチップ払わないといけないの?』と。

ちなみに私サブウェイ大好き うん、どうでもいいか。

コロナ禍

この変なチップ習慣の変化にはいくつか要因があります。まずはコロナです。

エッセンシャルワーカーの”支援”

コロナで甚大な被害を出したアメリカではロックダウン中でも活動するエッセンシャルワーカーへの支援の意味もあり、多くの人が今までしなかった業種にもチップをするようになりました。

2023年5月にアメリカでもコロナの非常事態宣言は終了されました。

www.multilingual-doctor.com

しかし、コロナ禍で根付いた習慣はそのまま残っているという状況です。

テクノロジー

そして、コロナ禍ではなるべく接触を避けることが望まれました。

元々、キャッシュレスが進んでいるアメリカで、さらに現金で払うことは避けられるようになりました。ところがチップは元々現金で渡すことが一般的です。

そんなこんなで、お会計の時にキャッシュレス支払い端末の画面にチップ選択が標準装備されるようになりました。

選択肢があり、15%, 20%, 30%などを押すのです。一応”No tip”という選択肢もあるようです。

支払い画面と店員の圧力

しかし、その目の前には、いかにも「チップはずんで」という目をギラギラした店員が立っているわけです。no tipは押せません。アメリカにも同調圧力があるのです。(笑)

さらにこれには裏側があります。

店も決済サービス社もwin-win

このような支払い端末の裏にいるSquareというオンライン決済サービスは、チップも含めた総額の支払いから一定の手数料を取ります。

つまり、予めチップを標準装備することでお店も、Squareもwin-winなのです。

求人市場

多くの利用者が不満の声を漏らす中、店としてはこの新たな慣習をやめるのは難しそうです。

労働者確保に奔走

これは、最初に見ましたが、コロナ禍で労働者が減っているアメリカでは労働者確保に必死です。厚遇で釣るしかありません。

ならば、値上げして給料上げれば?と思いますが、異常なインフレに苛まれているアメリカでさらなる値上げは客離れを招きます。

インフレと労働者不足の対策がチップ

店としては賃金は上げずに、また商品の価格も据え置きで何とか労働者が受け取るお金を増やしたい。その方法が、TIP(コツ)なんですね~

Tipping Point

そもそもレストランでチップを払う理由というのは、『サービス料』という考えです。

給仕さんの仕事内容は、主に食事を運ぶ(serve)し、お客様に仕える(serve)することなので、サービス料がメインの賃金だと考えられています。

なので、チップでの収入があることを前提に、お店からの基本給は低くされています。

本末転倒なことに・・・

にもかかわらず、チップをする機会が増えたことで、多くのアメリカ人は1か所でのチップを減らしました。

それゆえ本来チップがメインの収入減である給仕の受領額が減っているという問題が起きています。

Tipping Pointだけど・・・

Tipping Pointというのは『転換点』という意味です。

この変なtipのシステムを改めて考え直すTipping Pointに入ったのかもしれません。

しかし、チップをなくすとお店は労働者の給料を増やす必要があり、となると商品価格を上げざるを得ません。もしかしたらその方が客の支払い総額が高くなるのかもしれません。

さいごに

いかがでしたか?

日本にはないチップの文化。アメリカではコロナ禍でチップの文化に大きな変化が起きています。

あらゆる場面でチップを要求されるようになり、その反動で一か所でのチップ額が減りました。チップに依存していた給仕らの賃金が下がるという本末転倒になっています。

ただでさえインフレで、そこにいままでチップで賄ってきた分をお店が賃金として払うとなれば、商品価格はもっと上がってしまい、客は遠のくでしょう。

チップについて改めて考えるタイミングに入ったようです。

では、また(^^♪