マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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マクロとミクロ ~必ず身につけたいマインド~

政治や社会の勉強をすると必ずみんなブチ当たるのが意見の食い違いでしょう。

僕も最初はウブだったので、「事実は1つなのになんでこんなに180度違った意見になるん?」と考えていました。

生活環境や教育などにより人の思想には影響しますが、それのさらに前の段階で物の見方が大きく違うことに気づきました。

今回は物事を見るときにぜひ覚えていただきたい概念をシェアしたいと思います。

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これは何色?

突然ですが問題です。次の球の色は何色でしょう?

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マーブルっていうのはなしでお願いします。(笑)

ま、普通に見たら1色ではないんですが、わかりやすく1色で答えるとしましょう。左の男性は大部分が白だから『これはだ』と言います。

一方右の女性は白と黒が混じれば黒の方が影響力があるから『これはだ』と言い張ります。(だとかいうひねくれた人も少数いるかもしれませんが…笑)

さて、一体どちらが正しいのでしょうか? 

マクロとミクロ

まずはこの概念から考えましょう。

マクロミクロはそれぞれ日本語で巨視的微視的といいます。あまり、しっくりこないですね。(笑)

要はマクロで見るというのは広く浅く見る、ミクロで見るというのは狭く深く見ると考えてもらえばいいです。

医療の現場では、病理学と言って顕微鏡を使って癌などの病気の診断します。そのときにもこの概念が使われます。 

病理診断学

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医学面で考えるマクロとミクロ

上の図は、ある臓器の癌患者さんが手術で臓器を摘出したとしましょう。左側は直視*1でそのままの臓器を見た状態です。

これは全体像が見えていて、切除した臓器のどの部分にどんな腫瘍(図では赤)どのくらいの大きさがあるということがわかります。これがマクロです。

次にその腫瘍の部分をさらに細かく切り出して、顕微鏡でかなり拡大して見たものが、右側の図です。例えば胃癌や肺癌も、顕微鏡で見た細胞の形や状態によりさらに細かい分類をします。

腺癌とか扁平上皮癌とか聞いたことがありますかね?それはこの顕微鏡で見て初めて分かるわけです。それにより原因がわかることもあったり適した治療法を決めたりするわけです。これがミクロになるわけです。

基本的な見方はマクロで全体像を見て、ミクロで詳しく見る。これ、重要なので覚えておいてください。

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経済でのマクロとミクロ

経済でもこの概念が適応できます。

新型コロナウイルスの感染拡大で世界中で不況が起こっていますね。これは世界全体レベルで(globally)見ているのでマクロで見ていると言えます。

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経済や天気でのマクロとミクロ

次に日本経済だけを取り上げると、世界規模と比べるとミクロの世界になるわけです。マクロとかミクロと言うのは結局相対的なもので、さらに日本の中でも例えば、四国だけを取り上げると、それは日本全体と比べてミクロの視点になるわけです。

実際は、マクロ経済と言う言葉は日本全体の経済をよくすることを目的にした考え方で、ミクロ経済と言うのは、消費者と生産者と言う個人のレベルでの話となります。

だいたい、マクロとミクロの違い、つかめてきましたか?

戦争で見るマクロとミクロ

では、戦争について考えてみましょう。日本は太平洋戦争でアメリカに負けました。

もう一つ1950年に朝鮮戦争というものが起こりました。要は北朝鮮と韓国が戦争をしたわけです。

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戦争で見るマクロとミクロ

僕はさきほども取り上げたように、物事を見るときは必ずマクロでまず全体像をつかむのが鉄則だと信じています。そして、それからミクロを見ていくのが理解するには適しています。

たとえば太平洋戦争をミクロで、つまり狭い視野で見た場合は日本とアメリカが戦ったことになるのですが、もっと広い目で(=マクロで)見ると違ってきます。

もうおわかりですね。当時はアメリカソ連が世界の覇権争いをしていたわけです。アメリカからしたらアジアの小国・日本が調子に乗っているのがうっとうしかった。

いざ、日本が負けそうになると、日本と不可侵条約*2を結んでいたソ連も日本に宣戦布告しました。もう、これで日本が敗戦するのは時間の問題でした。

しかし、アメリカは広島と長崎に原爆を落としました。

はい、このときアメリカとソ連はどちらが先に原爆が作れるかが非常に重要だったのです。というのも第二次世界大戦後の世界をどちらが影響力を持つかの局面だからです。

原爆の威力を確かめるために、長崎にプルトニウム型広島にはウラン型というそれぞれ違う2種類のタイプを使用したわけです。いわば実験ですね。

日本が敗れたあと、朝鮮半島は日本から解放されました。誰のものでもなくなった朝鮮半島はアメリカとソ連がそれぞれ半分ずつ統治することになったわけです。

はい、まとめるとこれら2つの戦争はマクロで見るとアメリカとソ連の戦いの一部に過ぎないと考えられるわけです。

政治で見るマクロとミクロ

わかりやすく、コロナの例で行きましょう。

国はそれぞれ文化的背景歴史的背景が異なるので、政治のシステムも違うわけですね。ある国ではできることは別の国では法律上できないとか、システム上できないことはいくらでもあるわけです。

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政治面でのマクロとミクロ

それぞれの国のコロナの対応で良い点と悪い点がそれぞれあるわけです。上の図のように書き出したとしましょう。これら1つ1つはミクロの考え方ですね。

それらの良い点、悪い点を総合的に=マクロで)見て、政策がどうだったのかを判断するべきだと思います。

お気づきの通り、日本のメディアでは日本の良い点なんてほぼ報道されません。

日本のメディアは基本的にミクロ視しかしません。というかできないんでしょう。(笑) ミクロで見て悪い点を徹底的に批判する。そして、よその国の上手くいった1つだけを切り抜いてきて(=ミクロ)、日本を批判する。(溜め息)

もう一度言います、日本全体の政策(=マクロ)なのに、個別の悪い点(=ミクロ)だけを批判しているのです。

なぜ意見が食い違うのか

さて、最後に最初の問題に戻りましょう。

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男性は、全体の面積的に見て白い部分が圧倒しているので「白」だと考えました。はい、これは、マクロ視ですね。一方の、女性の側は、局所的に黒い部分が何か所もあるのを見て「黒」だと答えました。これはミクロ視ですね。

僕はこういう物の見方の違いが意見の食い違いに大きく影響していると常々考えています。

どちらが正しいのでしょうか?結論から言うとどちらも正しいです。これは色の話なので意見の食い違いは大した問題にはなりません。

では、仮にこの球が表してるものが、「日本人はいい人か?」という質問の答えならどうでしょうか?白がYESで黒がNOなら?

90%を超える人が ”白”「いい人」と答えました。しかし、一方では、「いやいや、こういう悪い日本人がいたんだ」「友達が日本人は不親切だと言っていた」といういくつかのエピソード(=ミクロ)を取り上げて ”” だという人もいるかもしれません。

これについてはどう考えますか?

まとめ

いかがでしたか。マクロとミクロ、おわかりになりましたか?

これらは考え方の差です。先ほども言いましたがどちらも正しいです。ただし、ごちゃ混ぜに議論するのは間違えています

国全体の話をしているのに、数人の反対エピソードを出してあたかもマジョリティかのごとく意見するのは、マクロとミクロをごっちゃにしているわけです。いわばただの揚げ足取りです。

『少数意見を無視するのかー!』これもミクロですね。日本全体(マクロ)は民主主義ですからね、野党さん。

TVなどを見るときもこれを意識してみてください。マクロの話(例:国全体の政策)をしているのに、苦し紛れにミクロの反例(例:個人の不便)を出し話をすり替える人にも気がつくはずです( ´_ゝ`)フー

マクロの問題はマクロ視で考えて解決、ミクロの問題はミクロ視で解決する。この根底を変えてしまっては永遠に議論なんてできません。

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では、また(^^♪

*1:顕微鏡などなし肉眼で

*2:お互い攻め込まない約束