マルチリンガル医師のよもやま話

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ETCの歴史 ~なぜ日本の高速道路は高いのか~

僕は月に5-6回は高速道路を利用します。

今では割引適用もありほとんどの車がETCレーンに行きます。

 

この日本全国で当たり前になった光景ですが、それにも理由があるのです。

今回はETCの成り立ちと世界の高速道路について学んでいきましょう。

 

 

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ETCとは

Electronic Toll Collection の略で 電子料金収受という意味です。

日本では2001年に全国で運用開始となりました。

 

ところで、この toll という単語は通行料くらいにしか使いません。

(あとはdeath toll 死亡者数 もよくニュースで見ます。)

 

その他の交通手段の料金や運賃は fare を使います

 

ETC導入の大きなメリットは
  1.  渋滞の緩和
  2.  時間別料金の設定が容易
  3.  人件費削減

料金所での渋滞がなくなったのは大きいですね。

現在高速道路におけるETCの利用率は90%以上だそうです。

さらに2. では混雑の激しい区間は時間帯ごとに料金を変えることで、混雑時間の交通集中を和らげることもできます。

  

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ETC導入後の変化

ETCカードの発行や機器のセットアップが煩雑ですぐには普及しませんでしたが
ETC割引制度の拡充で急速に普及しました。
さらに2006年にハイウェイカードが廃止されたことも影響しました。

ハイウェイカードの偽造が問題だったのです。

 

こう考えると、偽札が出回ることがキャッシュレス社会を後押しした状況と似ていますね。

▼▼キャッシュレス社会についてはコチラ▼▼

www.multilingual-doctor.com

 

さて、さらに2009年に地方高速上限1000円車載器設置助成制度などでさらいにETCの設置が進みました。

 

しかし、その後ETCの普及を減速させかねないことが起きました。

高速道路無料化です。

もし実現すれば、ETCをつける理由がなくなるからです。

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高速道路無料化

これは覚えている方も多いはずですが、一時的に(残念ながら)民主党が政権を取った時代がありましたね。

2009年の衆議院選挙で民主党はマニフェストの1つに高速道路無料化を掲げ、圧勝しました。

もちろん当時は自民党への失望という背景があった上でです。

 

このとき、大きく反発したのがJRグループバス会社などの公共交通機関です。

高速無料化により鉄道・高速バス利用者が減るからです。

また、自動車利用を促進することは地球温暖化対策への逆行であり、反発する議員も一定数いました。

 

2010年に入って全国の50区間ほどで社会実験として開始されました。

すでに混雑のひどい首都高速、阪神高速などは除外されていました。

 

2011年3月11日 東日本大震災が発生しました。

この復旧・復興のために無料化社会実験は1年で終了となりました。

 

海外でのETC

中国にもETCがあります。

こちらは先にお金をチャージしておくためICOCA、SUICAのようなタイプです。

 

アメリカでは高速道路は freeway と呼ばれ無料です。(一部有料も)

橋やトンネルで有料のところには E-Zpass (発音:easy pass)とよばれるETC様のシステムが導入されています。

 

韓国では하이패스(ハイペス)という日本のETCによく似たシステムが導入されています。

 

アメリカのフリーウェイ

freeway は 通行料(toll)が無料(free)という意味ではありません。

高規格道路(expressway)で信号などがないものをfreewayと呼びます。

Californiaなどのfreewayは無料なので、 freeは「無料」と勘違いされています。

実際は ”信号フリー”の道路と言うことですね。

 

ちなみに highway も似たような意味です。高規格の道路。

英語で高速道路のことを言うときは、

細かいことは気にせず、highwayでもexpresswayでもfreewayでも問題ありません。

 

日本の高速道路は有料

ところで、アメリカのfreewayやドイツのAutobahnは無料なのに、なぜ日本の高速道路は有料で、しかも高いのか

韓国も高速道路は有料だが日本より圧倒的に安いです。

 

少し歴史を見ていきましょう。

 

明治時代以降近代化を続けた日本ですが、大量輸送を優先に考えられ鉄道の敷設が盛んになりました

道路にお金はかけられなかったのです。

 

一方、欧米諸国では第二次世界大戦以前から高速道路がありました。

その後日本でも高速道路の計画がされましたが戦局悪化に伴い中断されます。

 

結局日本での高速道路は戦後高度経済成長期にまで持ち越されました。

しかし、日本は戦後でお金が潤沢ではありませんでした

一般道(国道)すら砂利道で舗装もされていなかったのです。

というわけで国の事業としてはまず一般道の整備にお金を使うことになりました。

 

一般道の整備に大金を費やしたため、高速道路の新規建設に国の予算をとても回せる状況ではありませんでした。

しかし、早急に高速道路の整備をしたい日本としては違う方針に打って出ます。

 

借金をして高速道路をつくる

そう、毎年の予算で作れないなら借金をして先に高速道路をつくろう!

そして利用者から料金を取って返済に充てればいい!

そうして1963年 日本初の高速道路、名神高速道路が開通しました。

 

さらに重要なことは日本の地形です。

険しい地形に、地震が多いのです。さらには土地も高いため3重苦ですね。

他国と比べこれらの制限が大きく、建設料金が大きく変わってくるからです。

 

まとめ

戦後貧しいときに整備するために借金して高速道路を建設した。

日本は険しい地形、多い地震、高い土地により高速道路建設費が高い。

これらの理由で高い高速料金を支払う必要がある。

 

ETCに似たシステムは海外にもあるが、これほどにまで数が多いのは日本くらい。

いまや全国に張り巡らされた高速道路(ほとんど有料)。

人件費削減、渋滞緩和、確実な料金収受のためにETCは重要であった。