帯状疱疹。
ある専門家は『コロナ禍のストレスが原因で増えている』といい、ある人やうさんくさい政党は『コロナワクチンが原因で激増している』と。
一体何が本当なの???笑
しっかりと学んでいきましょう♪
帯状疱疹
まずは、基本から行きましょう。
そもそもは、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)という子供の水疱瘡(水痘)の原因ウイルスによるものです。
これはヘルペスウイルスの1種で、特徴として、感染したら、完全治癒せずに、神経節というところにずっと潜んでいるんです。
加齢や過労・ストレスなどで”免疫力が低下”したときに症状がまた出てきます。
一般に熱の華と呼ばれる、口の周りにできる水疱(口唇ヘルペス)も同じ原理で風邪をひいたときなど抵抗力が下がっている時にウイルスが暴れているのです。
つまり水疱瘡になった人は誰もが、今後帯状疱疹を患う可能性があるわけです。
で、年齢としては50歳以上で起こりやすい*1ことがわかっています。
神経節に潜んでおり、神経痛を引き起こすので、三叉神経痛を引きこしたり、耳の近くの顔面神経で起こると、まれに顔面神経麻痺を起こしラムゼイ・ハント症候群と呼ばれます。
大事なことなので、もう一度言いますが、風邪をひいたり、ストレスを受けたり、抵抗力・免疫力が下がった時に起こります。
コロナ禍で増えた?
SNSなどで帯状疱疹になったとかいう声があり、自分の周りにもいると増えているように感じます。
すると、メディアは”お抱え専門家”に解説を求めるわけですが、正直その時点ではまだ十分なデータがそろってないので何もわかりません。
しかし、専門家として「わからない」とはTVで言えない。
コロナ禍の自粛などのストレスはたしかに帯状疱疹のトリガーとなりうるので、そう答えただけでしょうね。
さて、時間が経ち、今はデータがそろってきています。例えば日本国内で、帯状疱疹の研究で有名な宮崎スタディなどでは、コロナ禍で帯状疱疹は増えていないことがわかっています。(笑)
ちなみに、外国のデータも一応、イギリス*2とオーストラリア*3でも、コロナ禍で帯状疱疹は増えていません。
つまり、お抱え専門家の「コロナ自粛のストレスで帯状疱疹増加」は間違いですね(笑)
『ワクチンのせい』
もう答えはわかっていますが、一応・・・
コロンワクチン接種後に帯状疱疹が急増!とか言う人たちがいますが・・・
もちろん、理論上は接種後に帯状疱疹が起こることはあるでしょう。かぜなどのウイルス感染後に体の免疫はそっちと戦っているわけで、帯状疱疹のウイルスへの監視が減るわけです。
ワクチンも同じで体内にコロナウイルスが入ってきたのに近い反応が起こるわけで、当然帯状疱疹ウイルスへの監視が減るわけです。
もちろんインフルエンザワクチン接種後だって帯状疱疹が起こることがあるわけです。
で、先ほども示したようにコロナ禍に帯状疱疹は増えてなくて、ワクチン接種開始後も全体としては増えてないんです。
で、さらに、大規模な研究*4で、コロナワクチン接種と帯状疱疹増加の明確な関係は否定されていることも追記しておきます。
インフルエンザワクチンとの比較でも、特にコロナワクチン接種後に帯状疱疹が起こりやすいという事実は確認できませんでした。
はい、この説もウソでした。
帯状疱疹は増加傾向
しかし、コロナ禍に限らずもっと長い目で見てみると帯状疱疹は増えています。
もう一度先ほどのグラフをよく見てみましょう。どこかで急に増えてますね。
2015年ですかね・・・なんでだろう・・・
実は2014年10月から、小児の水痘ワクチンが定期接種化したんですね。すると、子供たちの間で水痘(水疱瘡)は急激に減った*5んです。
そもそも水痘にならなければ、帯状疱疹にはならないわけですから、長い目で見るとめちゃくちゃいい話なんですコレ!
ところが、それ以降、国内の帯状疱疹の発症数は増えているんです。
ウイルス曝露の減少
ワクチン接種後に『抗体』がどうだこうだと言いますね。
抗体はタンパクなのでいずれ消えます。抗体が下がれば感染しやすくなります。
しかし、世の中には”終生免疫”と言って、一度かかったり、ワクチンを打てば二度とかからない(だろう?)といわれるものがあります。
タンパクにすぎない抗体はいずれ消えるのになぜ?
仮説としては、周りに感染者が多くいると、まだ免疫が維持されている状況で、ウイルスに曝露されてその都度、抗体価が上がる(ブースター)というものです。(上図の右側のグラフ)
安定的なDNAウイルスである水痘ウイルスは、コロナウイルスやインフルエンザウイルスのようなRNAウイルスと比べ変異しにくいので、曝露されたあとの免疫も維持できるのでしょう。
で、2014年の水痘ワクチン定期化で子供の水痘感染が減り、周囲に感染者が少なくなると、当然抗体は低下するのみ。で、抗体が低下した状態で、ストレス、感染などで抵抗力が下がると・・・帯状疱疹発症。
という流れです。
帯状疱疹ワクチン
今までは、帯状疱疹になりやすい50歳以上の人にも、水痘ワクチンで免疫を高める方法が主体でした。一応、これにより、人によりますが3~11年くらいは予防効果があると報告*6されています。
ところが、水痘ワクチンは生ワクチンなので、まれに実際感染することもあるし、妊婦や免疫不全者などは使用禁止です。
やっとこさ、2018年に帯状疱疹用の不活化ワクチン『シングリックス』ができ、日本では2020年から使えるようになったので今いっぱいCMしています。
コロナワクチンで帯状疱疹激増させて、帯状疱疹ワクチンに誘導してお金儲けという陰謀論はアホすぎます(笑)
ちなみに英語に詳しい人はお気づきかと思いますが、帯状疱疹は一般人の間ではshinglesと呼ばれます。屋根のこけらという意味です、形が似てるからそう呼ばれます。
だからワクチンの名前はわかりやすいシングリックスというわけです。
さらにちなみに、不活化ワクチンですが、副反応結構多く、30~40%は筋肉痛や頭痛、80%の人は注射部の疼痛を訴えます。つまり、副反応強いのはmRNAワクチンのせいではないんですね。
さらにさらにちなみに、シングリックスは1回2万円以上します。2カ月空けて2回打つので4万・・・( ゚Д゚ ;)
さいごに
いかがでしたか?
帯状疱疹について、コロナ禍のストレスが原因で増えているとか、コロナワクチン接種のせいで急増しているとかいう主張がありますが、実際のデータ上はそれらは嘘であることがわかります。
実際はコロナ前の2015年から増加傾向にあり、一番の理由は2014年の水痘ワクチンの定期接種化で子供の水痘が減ったことにより、ウイルスに曝露されなくなったことで、体内の抗体を維持できなくなったからです。
では、また(^^♪
*1:Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017
*2:https://www.gov.uk/government/publications/gp-in-hours-weekly-bulletins-for-2022
*3:https://nindss.health.gov.au/pbi-dashboard/
*4:https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2798504
*5:https://www.niid.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-idwrs/7620-varicella-20171020.html
*6:Cook SJ, Flaherty DK. Review of the Persistence of Herpes Zoster Vaccine Efficacy in Clinical Trials. Clin Ther. 2015 Nov 1;37(11):2388-97. doi: 10.1016/j.clinthera.2015.09.019. Epub 2015 Oct 23. PMID: 26602282.