マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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少子化なのに待機児童という矛盾

先日、男前の同僚が子供の幼稚園の面接に行ってました。その話を聞き、ふと思いました・・・

よくニュースで聞くなかなか保育園に入れない、いわゆる「待機児童問題」

 

少子化の時代になぜ待機児童問題

今回はこの核心に迫ってみましょう。

 

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幼稚園とは

幼稚園は英語でkindergartenと言いますが、これは元々ドイツ語です。

ドイツ語では名詞の頭は大文字で表すので Kindergarten(男性名詞)と書きます。

Kind は 子供、Gartenは 庭 という意味です。

(ま、語学の話もチョコっと挟んでおいて・・・笑)

 

日本の幼稚園は文部科学省管轄で学校の一種と扱われます。入園できるのは満三歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児となっています。

9時から昼過ぎまでが多いが、預かり保育で17時頃まで延長することもあります。

要は学校の前のプレスクール的な扱いです。幼稚園の先生は各都道府県の教育委員会が発行する幼稚園教諭免許が必要です。

時間の制限や、対象年齢の制限などがあるため、共働きでフルで仕事をしたい家庭の需要は満たさないですね。

 

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保育所(保育園)とは

保育所の方は厚生労働省の管轄です。0歳~小学校就学前までの乳幼児が対象となっています。保育所の先生は国家資格である保育士資格が必要となります。保護者が働いているなどの理由で児童を預かるため、7時~19時までの保育が一般的です。

保育料は保護者の所得に応じて算定されます。認可外保育所の保育料は認可保育所の2倍以上とされます。

幼稚園と比較すればよくわかるように、保育所はフルで働く共働き家庭のニーズに合った内容となっているわけです。

 

もうご察しの通り、待機児童問題は主に保育所です。幼稚園は全国的に定員割れしているところも多いのです。

 

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待機児童問題

そもそも、保育所の数は専業主婦という家庭構図を想定して調整されてきました。共働き家庭の増加により保育所利用希望者が増えたことが待機児童問題の原因です。

さらに、もう一つややこしい事情が絡んでいるようです。会社での育児休業の延長には ”それなりの理由” が必要となります。そう、「保育所に入れたくても入れない」という免罪符が要るのです。

一部の保護者が、わざと競争率の高い保育所へ申し込み、「入園できなかった」という証明をもらうわけです。こういった人たちも統計上は待機児童になりますからね。これに対しては厚生労働省も対応を検討しているようです。

 

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保育所反対運動

各自治体も待機児童問題に黙って見ていたわけではありません。保育所を増設しようとしています。しかしながら保育所の新設は騒音や迷惑だと反対されて自治体が断念することもよくあるそうです。

ところで、こういう人たちのことを英語では nimby と呼びます。(笑)Not In My BackYard!うちの裏庭ではダメだ!)の頭文字です。

この反対運動を無視したら「少数意見だからと無視するのか!」と・・・

米軍基地問題も同じですね。これは「自由」「権利」が保障されている国ではいつも問題になります。

国として対応策を練ってあげないと地域行政レベルでの「ご理解をお願いいたします」では到底無理でしょうね。

 

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0歳児の保育はコストが高い

0歳児の保育コストが他の年齢児童と比較して高いそうです。

児童一人当たりの運営費は月に15-20万円くらいで、0歳児は月40-50万円と言われています。しかし、保護者から徴収する保育料は6万円程度(地域・行政による)なので大赤字

このマイナスを補填するのは行政の補助金(税金投入)となっています。これが新規の保育所を設置する足かせにもなっています。そう、保育所が増えれば増えるほど、補助金額も増えるからです。

 

国策が裏目に?

少子化問題は日本での大きな問題として取り上げられています。将来的に労働力不足に陥ることも指摘されています。そこで日本政府としては、育児世代の女性が【労働力】として活躍できるように様々な政策を行ってきました。

 

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延長保育、保育費の軽減、低年齢児の受け入れ、民間事業者参入規制緩和など・・・上記政策により働くママさんをサポートしようとしています。

 

こうして、国の少子化対策、子育て支援の一環で保育しやすい環境を作ったところその需要が予想以上に大きく現在の状況になりました。そこで、待機児童問題を解消するために保育所の数を増やすことにしたのです。

 

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保育士不足の問題

すると、次に出てきた問題は保育士不足です。国家資格であるにもかかわらず低賃金(年収300-400万円)で長時間労働ということがニュースで言われていました。まさに、これが保育士が増えない理由なのです。

これに加え昨今話題のモンスターペアレントの存在などで、離職も多いです。厚生労働省の過去の調査によれば保育士資格を保有する人のうち、保育所で勤務している人はたった半分だそうです。

厚生労働省は2015年に保育士確保プランを打ち出しました。

  • 年2回の保育士資格試験
  • 保育士再就職支援
  • 保育士待遇改善

こうして保育士不足の改善の対策としています。

 

保育士給料がなかなか上がらない

保育士の給料を上げればいいだけでは?

そう思うのも当然ですが、保育士の給料を上げるには、徴収する保育料自体をもっと上げるしかないのです。行政からの補助金は無限ではないので、子供を預かれば預かるほど保育所は赤字になります。

普通のサービス業ならば、需要が高まるときは値段を上げてコントロールしますよね?週末のホテル料金が高いのもそれです。

しかし、国のいままでの政策上、保育料金を上げるわけにはいかないのです。

働くママさんを応援するために安く、遅くまで保育所で預けられるように舵をきってきたワケですから当然ですね。保育料が高くなると、パートで稼ぐのがあまりメリットとしてなくなるわけです。そうなるとママさんの一部は働く選択肢をなくすことも考えられます。

 

幼児教育無償化と消費税10%

2019年10月から幼児教育無償化が前倒しでスタートしました。国の財政がさらにキツくなるのは目に見えていますが、安倍政権としても消費税増税による景気の落ち込みをなるべく回避したい意図もあったのでしょう。ちなみにこの無償化の財源は今回増税された消費税から賄われます

 

注意していただきたいのはこの無償化は全員ではありません

  • 3~5歳の児童の場合は収入によらず無償化
  • 0~2歳児では生活保護や低収入家庭を対象に無償化

もう、この記事を読まれたら、理由はお分かりですね。0歳児の保育には莫大なコストがかかるから制限しています。

また、これに合わせて、さらに保育士の待遇の改善も図っています。ごくわずかではありますが保育士の賃金UPも決定されています。

 
しかしながらこの無償化政策により、保育需要がさらに増し、待機児童がさらに増えることも懸念されています。
 
今後の成り行きを見守ってみましょう。