『失われた30年』という言葉をよく耳にします。
日本はこの30年以上、経済成長も乏しく、国民所得も上がっていません。傍らで、アメリカをはじめとする先進国や、お隣の国・韓国も国民所得は順調に右肩上がりです。
この議論をするときに、「日本には終身雇用というシステムがあって不況でも守られている。海外なら不景気なら簡単に首を切られる。平均年収だけで比較するな」という意見もあります。
今回は、そんな日本の『終身雇用』について学んでみましょう。
終身雇用の意味
言語オタクなのでどうしても気になる部分に触れます('ω' ;)
終身っていう言葉で思いつく単語と言えば、終身刑(←日本にはない)とか生命保険の終身保険ですね。
意味としては、『死ぬまで続く』という意味です。
会社で働くと定年があるので、厳密には『終身雇用』というのは誤りなんです。
今から60年以上前、アメリカのジェームズ・アベグレンという経営学者がベストセラー本『日本の経営』*1の中で、日本の雇用形態を紹介しました。
日本人は、自ら仕事を辞めることはなく、会社も簡単にクビにしない。そのようなことをlifetime commitment と表現しました。それが、日本では終身雇用と訳され、今に至っています。
丁稚奉公
よく日本の終身雇用制度は江戸時代の丁稚奉公を基にしていると耳にします。
現代のようなシステムになったのは、大正末期~昭和初期と考えられています。
当時、熟練工はよりよい待遇の為に職を転々としていたようで、会社としては経験値の高い熟練工を手放したくないために色々と画策しました。
そこからできたのが、定期昇給、年功序列、退職金などの制度です。
それが、このまま現代までつづいているのでありま・・・
と言いたいところですが、実は一回廃れています。(; ・`д・´)
第二次世界大戦
第二次世界大戦で、徴兵などもあり、国内では働き手の不足が問題となっていました。
そこで、子供や女性が労働力として軍需工場で働いたりしたことはみなさんご存じの通り。
直近の労働力確保のためには、一時的に短期間労働者を必要とし、その大きな需要により短期間労働の賃金が上昇したのです。すると、長期雇用よりも短期労働の方がコスパがよく、長期雇用は一時的に廃れました。
ま、そもそも 急に徴兵されるので、終身雇用なんてものが難しかったとも言えますな。
戦後の貧困と高度経済成長期
1945年、日本は敗戦し、戦後の貧困を味わっていました。
そんな中では、短期労働なんて不安定なものよりも、『安定した職』、すなわち長期雇用を求めるようになりました。
そして、1950年の朝鮮戦争勃発、その後の高度経済成長期で労働力確保が企業の重要な使命となってきました。
それにより、企業は、戦前にあった『長期雇用』『定期昇給』『年功序列』を前面に出し、労働力確保に乗り出しました。その流れで、労働者の権利はどんどん強くなり、簡単には解雇ができないような法律もできています。
バブル崩壊後
しかし、オイルショックやベトナム戦争で、日本の経済成長は鈍化し始めました。
日本はアメリカのドル高政策(レーガノミクス)による円安を武器に車などの輸出で儲けまくりました。
怒ったアメリカはプラザ合意でドル安・円高に方向転換し、日本の輸出は落ち込み不況になったのです。
高度経済成長期を終え、バブル崩壊を迎えた日本を襲ったのは平成不況です。
この時の企業のキーワードは『コスト削減』でした。しかし、日本では、簡単に労働者を解雇できません*2。
そこで、企業の出した答えは、以降の正職員採用を減らし、いつでもクビを切れる非正規社員の雇用を増やすことです。
終身雇用の崩壊
ここまで見てきたように、日本型の終身雇用というのは、特に戦後の高度経済成長期との相性がピッタリで日本の発展に大きく寄与してきました。
しかしながら、不況に陥り抜け出せない状況で、企業側としては終身雇用をするのはリスクを背負うこととなります。
また、少子化も進み、年功序列制を維持することも難しくなっているのが実情です。研究結果*3としても終身雇用は維持できないとされています。
▼派遣社員が増えている理由▼
終身雇用の弊害
終身雇用は、会社がイヤで辞めるのでなければ『安定』をもたらしくれます。住宅ローンとか組むには『安定』が必要です。また、コロコロと人が変わらないことは、社員の教育・育成が容易になります。
しかし、予期せぬ弊害を日本社会にもたらしていたことも指摘されています。
出産・育児で休むことが予想されると、女性には初めから大きな仕事が与えられなかったり、同年代であっても休まず働いた男性が優遇されてしまいます。
逆に、女性が出世するために子供を作らないとなると、少子化をもたらします。
欧米では非常に珍しい*4転勤や出向、これらも終身雇用であることが理由です。人員の削減や増加ではなく、移動で補います。
そして、不況であれば、新たに人員を雇えないので、正規職員の残業が慢性化します。
さいごに
いかがでしたか?
日本式労働で『終身雇用』というものが注目されますが、これは戦後の高度経済成長期には相性抜群な方式でした。
しかしながら、長続きする不況、少子化によりこの日本式終身雇用や年功序列を維持することはできなくなっています。
そういや、ここ最近『転職』のCMとかもよく見ますよね~
日本の働き方もゆっくりですが変わりつつあるのでした。
では、また(^.^)ノ