毎年冬になると増える、ウイルス性腸炎。
その中でも有名なのは、ノロウイルスですね。今回はノロウイルスについて学んでいきましょう。
ウイルス性腸炎が流行
現在、ウイルス性腸炎が現在流行しています。いわゆる『おなかの風邪』です。
東京都の感染性胃腸炎の流行状況*1を見てみましょう。
慣れない人には見にくいグラフですが、これの横軸はその年の『第○週』です。一番左は第36週で、今年は9月6日からの1週間に当たります。
上のグラフで2021年の状況を見ると2019年と似た推移を示しています。その他の過去もこの時期に流行していますね。昨年は、自粛で人の移動が少ないことからほぼ流行していませんでした。
去年に比べては増えてますが、過去と比べて”大流行”というほどのことはなさそうです。
冬の嘔吐下痢症
感染性腸炎*2は原因により細菌性腸炎とウイルス性腸炎に分かれます。
細菌性の方は、黄色ブドウ球菌とか腸炎ビブリオとかサルモネラとか、夏場の食中毒をイメージしてもらうとわかりやすいです。
実際は冬場に流行するウイルス性腸炎が圧倒的に多いです。
東京都の感染性胃腸炎の発生状況*3を見ると、一目瞭然。集団感染を起こしているところは保育園です。
0~5歳くらいの子に感染対策を徹底させるのは無理なので当然ちゃ当然ですね。
では、次にウイルス性腸炎で多い2つのウイルスについて学んでおきましょう。
ロタウイルス
これは乳幼児がかかりやすいもので、多くの国では5-6歳くらいまでには必ず感染する*4といわれています。
それ以降は、しっかりと免疫ができるので大人は発症しにくいんです。
実はこの感染でひどい下痢となり、発展途上国を中心に年間20万人ほどの乳幼児が亡くなる*5*6怖い病気なんです。だからこそワクチン(経口)があります。
ロタウイルスの特徴はとんでもない感染力で、基本は接触感染で起こります*7が、一部では空気感染する可能性も指摘*8されています。
接触感染がメインなので、マスクしててもダメなんです。保育園では子供のおむつとかから保育士さん経由で移ったり、トイレで移ったり・・・なんです。
ワクチンが広まった先進国では重症化は少なく、主には脱水予防の補液をすることになります。
ノロウイルス
続いて、子供から大人までみんなに関係するノロウイルス。これは有名ですね。
これも、症状は嘔吐・下痢・発熱で、なんと、世界で毎年20万人以上が亡くなっている*9病気なのです。
経験した人はわかるでしょう、あのえげつないしんどさ。(笑)
経口感染(牡蠣など)と感染者からの接触感染がメインで移ります。吐物を触ったり、近くにいて”エアロゾル”で感染します。
ノロウイルスは石鹸やアルコール消毒では殺せません!!なので、吐物を触るときは絶対に使い捨ての手袋をつけましょう!!
手洗いではウイルスの感染力は落とせませんが、しっかり洗うことで手についているウイルスを落とすことはできます!!だからしっかり手洗いをしましょう。
で、症状が落ち着いてからもその人の糞便からは2~3週間はウイルスが排出されるという報告*10もあるので、家族など一緒にトイレを使う人は注意が必要です。
ちなみに、B型の人は感染しないorしにくい*11ということもわかっています。また、3人に1人は感染しても無症状*12で終わります。
濡れ衣の牡蠣
ところで、ノロウイルスって今のところヒト以外には感染しないとされています。
え、牡蠣は?と思いますよね。
実は、ノロウイルスに感染したヒトの排せつ物が下水処理された後に海に流されますが、ごく一部生き残ったノロウイルスがいます。
牡蠣などの貝類は大量の海水を吸い込んでプランクトンを取り込みます。このときにノロウイルスも取り込みます。そしてそれが体内に蓄積していくようです。
結局はヒトが感染して、排出したものを、食材経由でもう一度ヒトが感染するというものでした。実際、カキ関連のノロ感染報告は1割*13だけなんです。
つまり、感染後の人が手洗い不十分で料理したり、とかいうルートでの感染が多いんですわ。
さいごに
いかがでしたか?
この時期になるとウイルス性腸炎が流行ります。中でも、ノロウイルスは有名です。
ノロウイルスと言えば牡蠣を食べたからと思われがちですが、実はそうではありません。
ちなみに、生食用の牡蠣は、周囲の海水調査で病原菌が少ないところで獲れた牡蠣のことです。ま、学生時代、居酒屋で生食用のカキで集団ノロなりましたが(笑)
他にも韓国のキムチからノロウイルスの集団感染*14が起こりました。これも白菜を漬けた地下水にノロウイルスがいたことが原因でした。牡蠣だけ注意すればいいワケではありません。
しっかりと火が通っていれば感染力は失われます*15ので、冬場は生ものを避けるのがよさそうですね。(調理する人が絶対にきれいとは言い切れませんので。)
では、また(^.^)ノ
*1:http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/gastro/
*2:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/383-intestinal-intro.html
*3:http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/gastro/
*4:Bernstein DI (March 2009). “Rotavirus overview”. The Pediatric Infectious Disease Journal 28 (3 Suppl): S50-3.
*5:https://academic.oup.com/cid/article/62/suppl_2/S96/2478843
*6:『標準微生物学』平松啓一・中込治、医学書院、2009年、第10版、426-434頁
*7:Butz AM, Fosarelli P, Dick J, Cusack T, Yolken R (1993). “Prevalence of rotavirus on high-risk fomites in day-care facilities”. Pediatrics 92 (2): 202-5.
*8:Dennehy PH (2000). “Transmission of rotavirus and other enteric pathogens in the home”. Pediatr. Infect. Dis. J. 19 (10 Suppl): S103-5.
*9:https://www.cdc.gov/norovirus/downloads/global-burden-report.pdf
*10:http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/369/dj3694.html
*11:http://jsv.umin.jp/journal/v57-2pdf/virus57-2_181-190.pdf
*12:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20170040/_article/-char/ja/
*13:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/busitu/biseibutu/nov.html
*14:https://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20130610500005
*15:https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/link01-01_leaf01.pdf