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【サク読み】最近よく耳にする『線状降水帯』

台風14号は日本列島を縦断するように通過していきました。

地域によっては『線状降水帯』が発生し、激しい雨を記録しました。

今回はここ最近よく耳にするこの『線状降水帯』について軽く学んでみましょう。

線状降水帯とは

線状降水帯と聞けば、とりあえずゲリラ豪雨みたいなイメージはあると思います。

そもそも、これはどういう意味なのでしょうか?

線状降水帯とは?

気象庁の説明*1によると、上図のようになります。

ま、一言で言えば線状に連続した雨雲たちです。

線状降水帯のイメージ:気象庁より

なによりも、気象庁の示すこの図*2を見ると、パッと意味が分かりますね。

1990年代から、集中豪雨があるときに、このような線状の雨雲が存在することが指摘されてきて、ここ近年になって研究・解析が進んできたようです。

メカニズム

次に、線状降水帯はどのように出来上がるのか見ていきましょう。

線状降水帯発生のメカニズム

日本は海に囲まれております。夏は気温も高いので、当然海水温も上昇します。

すると、海水からたくさんの水が蒸発し、海の上は『暖かく湿った空気』になるわけです。それが、風に流され、陸に来て高い山や、前線にぶつかります。

すると、その風は上方にのぼり、やがて積乱雲を形成します。海水温が高い状態がずっと続くと、この暖かく湿った空気が無限供給されので、次から次へと積乱雲が線状に作り続けられます。

バックビルディング現象

このように積乱雲が同じ場所にどんどん形成され、後ろに連なっていくことをバックビルディング(後方形成)と呼びます。

このバックビルディングが線状降水帯形成に関与しています。

なぜ最近耳にする?

では、なぜ最近よく耳にするのでしょうか?

先ほど述べたように、注目されるようになったのが1990年代以降で、それから研究が進みました。

最近よく耳にする理由

実は気象庁が2021年6月から『顕著な大雨に関する情報』を提供するようになりましたが、この中で”線状降水帯”という言葉を使用して説明するようになったのです。

また、2022年の6月から線状降水帯の発生予測の提供を開始*3しました。まずは、九州北部限定で開始され、2024年以降は都道府県単位で発表開始をめざしています。

つまり、去年から”線状降水帯”という言葉を一般向けに使い始め、今年の6月から予測提供を開始したから最近よく耳にするのでした。

海外は少ない?

NHK の英語記事などでは、線状降水帯を linear rainband と報じています。訳すと直線降雨帯です。

アメリカなど英語圏では、trainingという言葉が使われています。列車のように長く連なっているからです。

いずれにしても、これらの検索ワードで海外の記事を拾っても、豪雨の記事はほとんど出てきません

日本では注目度が高いが・・・

考えてみると、日本は海に囲まれており、夏の厳しい暑さで海水温が上昇し、台風や線状降水帯を発生しやすい状況です。欧米は大きく違いますね。

日本では、頻繁に発生するので注目度が高いですが、アメリカなどではまれなのでほぼ使われない。なかなか興味深いですね。

 

では、また(^.^)ノ

*1: “[xnxx.com 気象庁が天気予報等で用いる予報用語(2017年3月現在)雨に関する用語 線状降水帯]”. 気象庁. 2017年7月7日

*2:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/kishojoho_senjoukousuitai.html

*3:https://www.jma.go.jp/jma/press/2204/28a/senjoukousuitaiyosoku_20220428.pdf