マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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たまには復習も重要だね

気づかぬうちにお盆も過ぎました。日本中では猛暑が続いています。

梅雨が明けた後は太平洋高気圧が日本列島上を覆うので晴れ渡り暑い日になります。

今年は、さらに中国大陸上にいるはずのチベット高気圧までもが日本の北側に張り出してきており、いわゆる『2階建て高気圧』によりヤバイ暑さになっているそうです。

予報ではこの危険な暑さは今月末までは続くそうなので熱中症には十分注意しましょう。

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今回は新型コロナの最近のデータと春先に言われていたコロナの仮説についても振り返ってみましょう。

現状を知ろう

重症者の増加

以前 記事にもしましたが、春先はかなり検査数を絞っていたので、7・8月との比較をするのに『陽性者数』では比較できません。そりゃそうですよね、春だと検査してもらえなかった隠れ陽性者も今はあぶりだされるので。

いまの「350人の感染者」と4月の「100人の感染者」の報道では実際はどちらが状況がひどいのかがわかりません

そのため、重症者数死亡者数は基本的には全例わかるので、これで比較するべきであります。

重症者数と死亡者数

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ただ、よくヤフコメなどで『重症者数が少ないから大丈夫だ』という風に書かれていますが、そのような安易な結論へのジャンプは危険です。

これは、今の状況が春先と比べてどうかというのを見るための考え方です。

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東洋経済オンラインより

8月に入ったぐらいから重症者数が増加の一途をたどっており、もうすぐ全国で250人に達するところまで来ています。これは高齢者などのハイリスクな人が感染すれば一定の割合で重症化するので当然です。(もちろんインフルでもほかの肺炎でもそうです、何もコロナが特別ではないのですが・・・)

ちなみに春先では一時点で全国通して最大360人ほど重症者がいました。

 

東京都と大阪府

当然人口密度が高いところでは”感染者”も多くなり、結果として重症者数も増えるわけです。東京都はお盆休み中もたくさんの陽性者を出していたし、当然・・・?アレ?

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東京都と大阪府の重症者数

意外ですね、大阪の方が圧倒的に重症者数が多いんです。

春よりは医療側もいろいろノウハウが分かってきたので重症者から助かる症例も増えていますが、残念ながら一定数は亡くなります。

大阪府では老健施設でのクラスターが複数ありました。これが東京と大阪の大きな違いでしょう。

老健施設や病院内というのはハイリスクな人ばかりいるわけです。こういったところで感染を広めないことが重症者を低く保て、ひいては死亡者数も少なくできるのです。

コロナ禍でも社会を回すためには、リスクの低い若くて元気な人たちは人に移さない対策をした上で仕事をし、ハイリスクな高齢者が多い病院、老健施設でいかに集団感染を防ぐかがカギになりそうですね。

 

死亡者数

先述の通り重症者数は最近増えつつあります。少し遅れて死亡者も増えてきます。現状を見てみましょう。

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東洋経済オンライン 一部改変

まだ新型コロナの対応もよくわからず暗中模索だった4・5月と比べると今の段階ではかなり死者が抑えられています。一番大きい理由は医療者側が色々と対応が分かってきたことでしょう。レムデシビルなどの薬も使えますしね。

最近韓国の研究でウイルス活性抑制にナファモスタットがレムデシビルの600倍効果があるというものも紹介されています。着々といろいろなことが分かりつつあります。

 

実効再生産数

実効再生産数(Rt または Re)という言葉を覚えておられますでしょうか?

一人の感染者が何人に移すか?という指標です。この数字が1以下をずっとキープできれば感染は理論上収束していきます。

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8割減の根拠

ドイツのデータから新型コロナの基本再生産数(R0)は2.5と定義され、計算から6割の人の接触を減らせば Rtは1を切るのですが、余裕をもって『8割減』としたのが春先の緊急事態宣言でした。

実効再生産数について

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ではここ最近はどうなのか・・・

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東洋経済オンラインより

実は8月11日から実効再生産数は全体で1を切っているのです。東京都でも8月10日より1を切り、大阪府は7月27日、兵庫県では8月13日から1を切りました。神奈川などまだ1を切っていない県もあります。

1を切ったからいいのではなく、それをキープできていることが大事です。気を抜くとすぐに1を超えます。

こういうデータはTVに頼らなくても自分で都道府県のサイトなどで得られますから、偏向ワイドショー見るくらいならネットサーフィンしてみてください。(笑)

 

感染力が強すぎる

よく日本の対策を批判する目的で引き合いに出される韓国ですが、いままた感染拡大していることを御存じでしょうか?

日本で7月に爆発しつつあるときも韓国は1日の陽性者は20-30人くらいでした。

僕は毎日韓国の人数もチェックしているのですが、先週くらいからクラスターが散見され、報告数も徐々に増加し、「韓国も一気に増える」と確信していました。(自慢かよw)今日はなんと279人でした。

何度も説明していますが、韓国は検査数が多いから抑え込めているのではありません。しっかりと濃厚接触者をスマホのGPSやクレジットカードの個人情報から割り出して、効率よくたくさん検査をしていることがうまく抑えている理由です。

K防疫として世界に広めようとしましたが、プライバシー侵害もあり「西洋国家ではできない方策だ」と言われてきました。

このことからいえることは、日本よりも防疫管理を厳しくしている韓国でさえ感染拡大しているのです。それほど今流行しているタイプは感染力が強いということです。

尚、韓国では前に感染拡大したときは地方都市がメインでしたが今回首都圏で広がっているのが少し怖いところです。

 

諸説振り返ろう

コロナは夏に収束?

新型コロナは暑さと湿気に弱く、さらには紫外線の効果で夏以降は収束するという説。実際過去の記事でも紹介しましたが、アメリカ政府が4月末に公開した研究結果です。

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コロナは夏に弱い?

実際、インフルエンザや風邪の原因となる(旧型?)コロナウイルスは高温多湿に弱く夏場はおとなしいです。アデノウイルスやエンテロウイルスというやつらは夏に元気で夏風邪の原因となります。

新型コロナも実験で高温多湿に弱いとされたのですが、残念ながらこの活発さ。笑

ま、感染が起こっている場所を考えれば、室内でクーラーが効いているところがほとんどですから室内は『高温多湿でない』ことも関係していそうです。

 

BCG有効説

日本では1951年の結核予防法により乳幼児のBCG接種が推奨されています。

BCG接種をしている国では死者数が圧倒的に少ないことで話題になりましたね。実はこれも世界中で研究されており、最近ではアメリカの ミズーリ大学(Missouri University)のS&T(科学技術学部?的な)の研究結果でBCGワクチンにより新型コロナの感染抑制に寄与する可能性があるとまとめました。

読んでみたのですが、実は彼らの研究は、BCGの効果のメカニズムを科学的に示したものではありません。世界中の感染者数、死亡者数などとBCGの接種の有無などから結論を導いたものです。

似たような論文はほかにもあります。メカニズムはわからないにしても、状況証拠からは効果があると考えられるということです。

BCGについて

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他にもいろいろありますが、ちょっと疲れたので今日はここまで~

ではまた(^^♪