マルチリンガル医師のよもやま話

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膵癌増加と感染症の関係

がんになるメカニズムは、遺伝子が傷つくことにより、がん細胞が作られたものを免疫が排除できず増大を許してしまうことです。

遺伝子を傷つける原因は多岐にわたり、生まれつきの遺伝子の問題や、長年の生活習慣、食事内容、大気汚染、喫煙、アルコール、感染症などが知られています。

近年、感染とがんについては注目が集まっており、日本人の大腸がんの半数は特定の腸内細菌感染によるものだ*1ということもわかってきました。

どうやら我々の思う以上に「感染症」に関係するがんは多いようです。

今回は、膵がんについて最新の知見を交えて学んでいきましょう。*2

膵がん

膵がんは、2019年のデータでは、日本のがん死亡原因で第4位となっており、患者数もそれによる死者数も増加傾向が続いています。

毎年4万5000人が膵がんと診断され、60代以上が9割を占めます。

糖尿病、肥満、飲酒、喫煙、慢性膵炎がリスク因子として知られています。また5〜10%は遺伝性と言われています。

膵がんは増加傾向

Silent killer、静かなる殺し屋という異名を持ち、症状がなかなか出ず、出たときには既に病状が進行している事が多いのも特徴です。

診断後の5年生存率は8.5%と低く、非常に厄介ながんの1つです。

しかし、1cm以下の超早期癌として見つかれば5年生存率は80%を超えているため、早期発見が重要になります。

歯周病と膵がん

歯周病があると、慢性的な炎症が起こり癌が起こりやすくなります。

さらに歯周病で出血すると、口腔内の菌が血管に入り込み大腸や膵臓にも移行すると考えられます。

歯周病に関連する菌が大腸に行くと、腸内細菌叢のバランスを乱し、慢性炎症を来たし大腸がんのリスクを上げる(2~3倍)*3ことが指摘されており、大腸がん患者の7割が歯周病も持っている*4/ことも報告されています。

また歯周病があると、膵がんのリスクが1.6倍以上になるという英国の研究*5もあります。

しかしながら、歯周病がおそらくリスクを高めることはわかっても、どの菌種が原因となっているかなどはわかっていませんでした。

細菌・真菌を特定

ニューヨーク大学医学部の研究結果では、特定微生物の感染が膵がんのリスクを増加させることを見つけました*6

大規模研究では、被検者の唾液を集めて、常在菌などを調査しました。その後、平均9年間のフォローアップをして、がんの発生などについて調べました。

その中で、膵がんの見つかった445名の唾液検体と、無作為に選ばれたどの種のがんもない445名の唾液検体を比較しました。

その結果、8種類の細菌が膵がんのリスクを低下させ、13種類の細菌が膵がんのリスクを増大させることがわかりました。

ちなみに、歯周病の原因菌とされるものでは、Porphyromonas gigivalis, Eubacterium nodatum, Parvimonas micra の3種が膵がんのリスクを高めることが確認されました。

また、真菌ではカンジダ属やマラセチア属の計4種で膵がんのリスク上昇を認めました。

これらの微生物に基づいた微生物リスクスコア(MRS)が1SD 上昇すると、膵がんのリスクが3倍以上高まることがわかりました。

つまり、唾液検体で検診のようにスクリーニングをすれば、膵がんリスクが高い人、低い人がある程度わかるだろうということです。

リスクの高い人は、最悪の場合でも早期発見できるように、必要な検査を定期的に受けることが重要となるでしょう。

さいごに

現時点でわかっているのは、歯周病がある人は、膵がんのリスクが1.6倍ほど高い。

また、口腔内の菌を調べたところ、歯周病の原因となる菌のうち3種で、膵がんのリスクを高めることが確認されました。

その他にも真菌でもカンジダやマラセチアなどの常在菌が多いと膵がんのリスクが上がることもわかりました。

歯周病の予防は膵がんのリスク低下にもつながります。

口腔内を清潔に保つのが重要です。

もちろん、糖尿病など他のリスクも忘れてはいけません。

 

では、また(^o^)ノ

 

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