マルチリンガル医師のよもやま話

マルチリンガル医師の世界観で世の中の出来事を綴ります

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重要!数字のマジック ~鵜呑みからの脱却~

いよいよゴールデンウィークに突入ですね。

全国を対象とした緊急事態宣言が少なくとも5月中は継続となる見込みだそうです。

さて、今回は連日の報道で出てくる「数字」についてもう一度考えてみようと思います。どう見ればいいのか・・・

例を示してみていきましょう。

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ひどい報道

TVで今までは「東京での感染者数」を延々と報じていたフェーズから現在は自粛について報じていますが、ひどい報道が目につきます。あるニュースの例を再現してみます。

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イメージ:ニュースで使われた”数字”

このニュース(4/28)を見た方も多いのではないでしょうか。要するに27日(月)20日(月)、人出の増加率を ”前日比” で見ているわけです。

つまり19日⇒20日の増加率(下段ピンク)と、26日⇒27日の増加率(上段白)を示しています。

続いてニュースの説明は以下のようでした。

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再現:報道内容

このニュースの結論は自粛が緩んできているということが言いたいのはわかりますね。さてこれ、鵜呑みにして大丈夫でしょうか?

このニュースの問題点は何でしょうか?

 

ニュースは必ず俯瞰する

これ、前回の記事でやりました。こういう繊細なニュースは必ず1歩下がってから俯瞰するのです。

情報リテラシーと俯瞰はコチラ

www.multilingual-doctor.com

 日本の報道はかなり偏っています意図的に(?)情報を隠して報道します。その目で一度TVを見てもらえばわかります。

話は戻って、先ほどの報道の何が問題でしょうか?もう一度図を示します。

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増加率の数字自体はDoCo〇oさんのデータを使っているので問題ないでしょう。

はい、気づきましたね。正確な人数を報じずに前日比の「増加率」のみで論じている点です。

これでは先週と今週の直接比較はできません。渋谷での例(増加率 24.9%33.5%)を用いて示します。

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左側は19・26日の両日曜日の人出が全く同じ(2万人)と仮定した場合です。

わかりやすく2万人として計算してみると、20日(月)は24,800人、27日(月)は26,700人と確かに1週間前と比べて 1900人増加しています。これならば「休業・自粛が緩んでいる」と考えてもよいかもしれません。

では、次に右側の方に行きましょう。徐々に外出自粛が進み、4/19(日)は2万人の人出が今週4/26(日)は18,577人に減っていたとしましょう。

翌日その33.5%の人が増加すると・・・04/27(月)の人出は24,800人となり、先週04/20(月)と全く同じ人数となるわけです。

これでは先週と人出は全く変わっていないけれど、前日比の増加率は増えているわけです。

このように「増加率」だけを出して論じるのは誰が考えても間違えています。この場合は必ず実際の「人数」も並べて出さないと結論は導き出せません。

それでもこう報道する理由はなんでしょうか、勝手に色々予想してみて(笑)

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最近4.もひょっとしてあり得るんじゃないかとか思ってしまいますが(笑)ま、そりゃないか。

 

ちなみに4/29以降のニュースは「前日比」はやめた模様です。指摘があったのですかね。今は、どちらも「緊急事態宣言前」と比較してそれぞれ何%減少という書き方になったので、この問題は改善されたようです。

 

感染者数だけを見ない

これも何度もこのブログで扱っていますが、日本での検査はクラスターつぶしがメインなので、報道される感染者数には大きな意味は得られません。参考にはなります。

そして、これまた何度も説明していますが、そのシステムで「今日の東京の新規感染者数〇〇人」と速報で報じるのは意味が薄いし、不安を煽っているだけです。現に全国的には減っています。

「今日の新規感染者数」に注意はコチラ

www.multilingual-doctor.com

残念ながらTVに出ているコメンテーターや”医学博士”とかすらも無責任な発言が見られます。基本的に不安を煽って政権批判に役立つ人が多く呼ばれます。

じゃなきゃ教育学部の教授が過去研究員だったからと感染症の専門家として毎日出演するのって不思議ですよね?(笑)ま、何の話しか気になる人はご自身で検索してください(^^;

感染者数」のことばかり言っていたのに、感染者数が減りだす「検査が少ない」→「死亡者数が増えています」とどんどん論点をすり替えるのはもう正直見ていられません。

 

大事なのは感染者数とともに検査数の推移陽性率致死率重症率など複数の項目で、しかも経時的に見ることです。1つだけで見るのは無意味!

ではどのように見ていけばよいのでしょうか?

 

一次ソース

ワイドショーや、TVで情報を得るのは手っ取り早いですが、『切り抜かれた情報』だけを伝えているので、完全に鵜呑みにするのはよくないです。

今回のコロナについては過去の記事でも扱ってきたように一次ソース、つまり厚生労働省各都道府県の公式ページが出しているデータが一番信頼性が高いことになります。

メディアはその中で都合のよいものだけを報じるからです。

他にもコロナの件のみに関しては僕は東洋経済オンラインをよく見ています。

ここでは厚生労働省の一次データをもとにたくさんの項目をグラフにしてあります。

ハッキリ言ってこれらだけで十分です。

www.mhlw.go.jp

 

誰でもできる見方

まず、私の見方が絶対正しいわけではありません。他にも見方や捉え方は色々ありすが、最小限の知識で取り組みやすい見方だと思います。

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厚生労働省HPより 一部加筆

ちゃんと厚生労働省検査数も報告しています。この表では検査した人の陽性率がわかります。陽性率はやや増加傾向でしたがザックリ7-9%くらいとみればよいでしょう。
日本ではアノ厳しい条件を満たした人や濃厚接触者だけを調べても陽性率はこんな低いのです。(PCRの精度の問題もある)

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厚生労働省HPより 一部加筆

これも毎度記事で扱っている表ですね。陽性患者のうちどのくらいが重症なのか?2.64%でした。過去を見てもやや増加傾向はありますが2%台で推移しています。

致死率2.81%(前回 2.56%)と以前から徐々に増加傾向です。

ただ先に言っておくとこれからまだまだ上がります。新規感染者が減れば分母の増加が少なくなるので、分子(死亡者数)が一定の割合で増えれば計算で致死率は上がります。今後メディアは恐らく【死亡率増加傾向】だけ切り取って【医療崩壊】と報道するでしょう。

日本は欧米と比べると致死率自体も低いのですが、死亡者数自体も桁数が違うことは認識しなければいけません。(韓国、台湾も同様)

そして、回復して退院した人も増え続け、退院患者の割合は全陽性患者の約1/4にまでなりました。ここもしっかりと報道してほしいです。

 

もっと簡単な方法

お示しした方法は簡便ですが、自分で計算しないといけないです。もっと簡単に知る方法が、あるんです。

東洋経済オンラインが最近すばらしい機能を付け加えました。

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東洋経済オンラインより 一部加筆

上の図の真ん中に「移動平均線」とありますね。これがスゴイんです。

休日は検査ができないところも多く、陽性判定患者は日・月と少ないですよね?そういうバラツキがあるので1時点での数値は意味がありません。

そこで、そのバラツキをなくすために「前後7日間の平均値」を出してグラフを作ったわけです。こうすると曜日による検査数のバラツキは無視できますね。

この機能がここ最近?加わりました。東洋経済さんありがとうございます。

上の図では各グラフの黄色い連続線が移動平均線となります。どうですか?感染者数は4月後半に入って下がりつつあるのがわかりますね?

退院が増えているので(入院・入所)患者数も減少してきてますね。

PCR検査を減らしてるから今は感染者数少ないんだ」という人もいますが、左下のグラフ(検査数)どうですか?黄色の線は増加していますね。検査数は確実に増えてきています。

重症者数は4月の初めから急増、これは何度も言っていますが3月後半に欧米から帰国した方々から広まったと考えられています。

 

まとめ:数字のマジックに注意

いかがでしたか?数字は見せ方でなんとでも主張を変えれます。これに気づいたら今後のニュースも一歩下がって見るようにしましょう。

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こんな記事何回見たでしょうか?なんでわざわざ海外にいる日本人医師に、「日本はこの先危ない」と言わせるのでしょうか?アメリカにいる医師が日本の現場の状況わかっていますか?笑

この手の記事は2月ごろから何度も見ましたけど、執拗に出てきますね~。

不安を煽る記事にもちゃんとした知識で凛と対抗しましょう。

いずれにしても、ここからの連休は本当に頑張りどころです。この感染症自体は有効なワクチンができるまでは消え去りませんが、「いま感染力がある人」の数を減らし、接触を減らし、新たな感染者を生まないことを続けるが重要です。

 

ではまた(^^