マルチリンガル医師のよもやま話

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非喫煙者の肺がんの正体

肺がんといえば、ヘビースモーカーのイメージがあると思います。

しかし、実際は、タバコを吸わない人の肺がんも珍しくありません。全肺がんの1/4くらいは非喫煙者です。

進行が遅く今までは見つかってなかったようながんがCTの普及で見つかるようになっていると言われています。

今回は、この非喫煙者の肺がんについて学んでいきましょう。

*1

 

超加工食品

超加工食品とは、クリームチーズ、アイスクリーム、カップ麺、ポテトチップス、マーガリン、ハンバーガー、人工甘味料を含む飲料などを言います。

これらが腸内で慢性的な炎症を起こし大腸がんの一員となっていることは過去に何度も記事にしております。

超加工食品とは

増え続ける癌、なぜ?

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腸内細菌と大腸癌

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そんな中、中国の重慶がんセンターからの研究*2が、また衝撃を与えています。

超加工食品の摂取が多い人は10年後の肺がん(病理型を問わず)発症のリスクが41%高まるという結果でした。

つまり、超加工食品を多く摂取するような『欧米食』肺がんのリスクを大きく引き上げるこというのです。

他にも中国・南京医大の研究でも、加工肉消費量が多いと肺がんになりやすいと報告*3していますし、上海交通大学からの研究*4でも赤身の加工肉が肺がんのリスクをあげると報告しています。

大まかな流れとして、超加工食品や加工肉の消費量が多いと大腸癌だけでなく、肺がんや乳がんのリスクも上げる*5といった報告が多いです。

若い乳癌患者が増えている

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添加物が原因?

ところで、加工肉や超加工食品の何が悪さをしているのでしょうか?

冒頭でご紹介した中国・重慶の研究者らの説明によると、超加工食品に含まれる数々の添加物が肺がん発生に影響を与えていると考えているようです。

アクロレインとは

焼いたウインナーや、キャラメルキャンディーなどで検出されるアクロレインと呼ばれるアルデヒドは、タバコの煙にも含まれる有害な化合物です。

つまり、タバコを吸わない人でも、このような食事の摂取により肺がんの原因となりうる物質を体内に入れいているということです。

また、食品包装にはポリ塩化ビフェニルと呼ばれる有害物質が含まれるものが過去に使用されていました。包装品から食料品への移行の問題があります。

ポリ塩化ビフェニルは発がん性が分かって以降、日本で昭和47年から全面に禁止されています。

グリコーゲン

その他にも食事と肺がんについては色々研究が行われています。

グリコーゲンとは動物の体内でブドウ糖が多数結合してできた多糖類です。

炭水化物を摂ると、今すぐ必要でない糖(グルコース)はグリコーゲンに変えられて筋肉内に貯蔵されます。

そして、運動をしたりするときにまた糖に戻してから消費されます。

グリコーゲン

今回、フロリダ大学とケンタッキー大学の研究者らは、このグリコーゲンが肺がん発生に関係しているということを発見*6しました。

肺がんで一番多い(40%)のが腺癌と呼ばれるタイプです。

マウスを使った実験で、グリコーゲンが多いと肺がんの成長が早く、グリコーゲンを取り除くと腫瘍の成長は止まるということを確認しました。

この事実は何も真新しいことではありません。がん細胞のエネルギー源は糖です。糖をどんどん取り込む性質があります。

この性質を利用したのがPET検査ですね。がんの部分は糖の取り込みが盛んなので光ります。

今回の研究は、この過去の知見とは何が違うのでしょうか?

高脂肪×炭水化物

研究者らは、グリコーゲンとあらゆる種のがんとの関連を研究しました。

すると、グリコーゲンはがんにとって「最高の食事」となり、我々の免疫システムを凌駕する勢いで成長することができることがわかったのです。

グリコーゲンは我々の摂る炭水化物からできます。

さらに高脂肪を追加するとコンボでさらに多くグリコーゲンが貯留されるのです。

実際、マウスの研究では、高脂肪・高炭水化物のコンボ食を与えると、高脂肪食単体、高炭水化物食単体、普通食のいずれに比べても肺がんの成長速度が速いこともわかりました。

高脂肪×炭水化物

また、重要なことは、肺がんの中でも腺癌というタイプでのみ、組織内でのグリコーゲンが多くなっていたのです。

つまり、高脂肪・高炭水化物食が肺腺癌を増加させているのです。

東アジア人女性

「非喫煙女性の肺腺癌が増えている」

これは研修医の頃、よく耳にしていました。CTの普及で今まで見つからなかったものが増えただけだろうとの見解も聞いていました。

しかし、これは、特に東アジア人女性に多いんです。

つい先日、Nature誌に掲載された研究*7がこの謎を解くカギになります。

かいつまむと・・・

大気汚染がひどい地域では、喫煙と同じように特定の遺伝子変異(EGFRやTP53)を起こさせ、肺腺癌を発生させるということが強く疑われます。

PM2.5の濃度が高い地域で長い間、それに曝露され続けると、肺がん発生に係わる遺伝子変異を起こし、さらに老化を進めることが分かったのです。

大気汚染と自閉症

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生薬も原因

この研究でもう一つ面白かったのは東洋医学でよく使われる生薬です。

アリストロキア酸という成分が肺がん発生にも関与しているというのです。

台湾の非喫煙者の肺がん患者では、アリストロキア酸が肺がんを引き起こす遺伝子変異と関連しているだろうと報告されています。

この成分は、腎機能障害を引き起こす可能性があることから、現在日本で処方される漢方薬には含まれていません。

しかしながら、個人で生薬入りの健康食品やサプリを摂る人もいます。注意が必要です。

アリストロキア酸が含まれている可能性のある生薬は、『細辛』、『木通』、『防已』、『木香』など*8で、海外製ならば注意が必要です。

国内で処方された漢方については基本的に心配は不要です。

さいごに

いかがでしたか?

今回は、非喫煙者の肺がんの原因に関して、色々と見てきました。

ここ最近、『日々の食事が諸悪の根源』的な流れが出てきており(?)、普段の食事の見直しが迫られております。

肺がんと言えば喫煙を真っ先に考えますが、吸わない人たちも食事内容により、肺がんを引き起こしていることがわかりました。

食べ物、注意せなあきませんな~

 

では、また(^^♪