マルチリンガル医師のよもやま話

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南海トラフ地震とスロースリップ

1月22日に日向灘を震源とする地震があり、大分や宮崎では最大震度5強を観測しました。この地震は震源が深いことから広い範囲に影響を及ぼし中部地方まで揺れました。

今回の地震で注目されたのは”日向灘”です。実はここは南海トラフ地震の想定震源域内に含まれていたからです。

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基本事項

地震が起こる仕組み

地震について起こる場所により2つに分けて*1考えてみましょう。

1つは海溝型地震というものでその名の通り、震源は海にあります。地球の表面にはプレートと呼ばれる大きな硬い岩盤があります。プレートは年間数cmずつ動いています。

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プレート境界型地震

これにより海洋プレートが陸プレートの下に沈み込んでいくことで”ひずみ”が生じます。そして、限界に達した陸プレートはその反動で元に戻ろうとして地震が起こります。

海での地震は津波を伴うことが多いです。

2011年の東北地方太平洋沖地震(→東日本大震災)はこのタイプです。

もう1つが内陸型地震で、地面の奥深くは岩の層があります。この岩の層もプレートの移動により少しずつずれていく場所があり、それを断層*2と言います。そして定期的に地震を起こす断層を活断層と言います。

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活断層とは

この内陸型地震は私たちの住む陸地直下の浅い所で起こるので被害が大きく出やすいです。1995年の兵庫県南部地震(→阪神大震災)はこのタイプです。

日本は地震が多い

日本は地震大国と言われますが、それはなぜでしょうか?

まず、太平洋には、最大の太平洋プレートをはじめ複数のプレートが存在しています。そして、これらのプレートの移動による相互作用で海溝型地震がよく起こります。

同じようなメカニズムで火山活動もあり、環太平洋火山帯などと呼ばれますね。

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日本に地震が多い理由

こういった海洋プレートによる地震の周期は100~200年と言われています。

さらに、日本には内陸型地震の原因となる活断層も2000以上あります。これも元をたどれば、複数のプレートが存在することで内陸部の断層が多いので、結局は太平洋に位置していることが地震が多い理由ですね。

ちなみに日本周辺で震度1以上の地震は1年間でおよそ1000~2000回*3起こっています。

南海トラフ巨大地震

南海トラフ

さて、本題に入りましょう。まず南海トラフとは何でしょう?

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南海トラフ

南海トラフはフィリピン海プレートがユーラシアプレートとぶつかって沈み込んでいる部分のことです。南海トラフは北西の方向に進み、最大で年間6cm沈み込んでいる*4ことがわかりました。

いずれ、この沈み込みで引っ張られるプレートが限界に達すると海溝型地震が起こります。

いつ起きる?

沈み込みが起きる場所は当然ながら過去から地震があったわけです。そして、過去をたどると、この南海トラフの地震は90~150年周期で起こっています。

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40年以内に90%程度の確率

一番最近の南海地震は1946年ですので、単純想定では15~75年以内に起こりそうですね。政府の地震調査委員会は40年以内に90%程度としています。

南海地震が怖いのはそれだけではありません。

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過去は連動地震だった

南海トラフは東海~南海にまたがる広い地域に沿ってあります。そして、過去1000年の南海トラフ地震を羅列すると、なんと東海と南海の地震が同時または数年以内に起こるいわゆる”連動地震”であることがわかりますね。

さらに、いずれの地震もM8以上の巨大地震だったことからも、広域にわたる大地震と津波で2011年の東日本大震災以上の被害をもたらす*5可能性が指摘されています。

死者20万人以上

気象庁による南海トラフ地震での被害想定*6を見ていきましょう。

四国・近畿南部・中部東海地方という広範囲で震度6~7、それ以外の地域でも本州の広い地域で震度4~5が想定されています。また、関東~九州の太平洋側では10mを超える大津波が来ることも予想されています。

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広い地域で大きな影響が出る

首都・東京でも震度5、2m以上の津波を想定*7しています。

全国での死者数は、なんと20~32万人と試算*8されています。

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南海トラフ地震の想定死者数

ちなみに東日本大震災(2011)の死者数は約1万6000人ですから、この数字のヤバさがわかりますね。

スロースリップ

昨年、ドラマ『日本沈没』を見た方は知っているこの単語(笑)

実は注目されるようになったのは東日本大震災の後からです。その名の通り、”ゆっくりしたすべり”で、陸側のプレートが静かにズレ動きます。人は揺れを感じません。

プレートとプレートの接地部には、ひっついて動かない”固着域”というものがあります。南海トラフでは四国~和歌山の南側に固着域があります。

固着域周辺で、陸側のプレートがゆっくりとすべることをスロースリップと言います。

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スロースリップと大地震

東日本大震災の2ヶ月くらい前からスロースリップが震源の近くで起きていたことが分かったのです。つまり、スロースリップが大地震の前触れになると考えられます。

実は南海トラフでも2002年頃より日向灘でスロースリップを観測しており、その位置が固着域である四国の方へ移動*9してきているのです。

この小さなすべりの積み重ねが大地震につながるエネルギーを生み出すと考えられ継続して監視が行われています。

まとめ

南海トラフ地震がヤバい理由をまとめましょう。

日本の太平洋側近くに位置する南海トラフは、歴史からも連動地震である可能性が高く、東海~南海・九州までの広範囲に非常に大きな地震と津波をもたらすことが予想されています。

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まとめ

また、連動地震の間隔が同時~数年ということもあり、地震の後も第二波に備える必要があることも厄介ですね。

そして想定される死者が最大で32万人と非常に大きな数であること、首都である東京にも影響がありそうなことも非常に重要です。

この恐ろしい大地震は、過去の周期や計算から30~40年以内には起こる可能性が極めて高いのです。

みなさんの地域はどうでしたか?離れた地域でも大きな揺れや影響があります。決して他人事ではありませんね。

では、また(^.^)ノ