マルチリンガル医師のよもやま話

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【サク読み】2023年 マーガリン問題

朝ごはんはパン派ですか?ごはん派ですか?僕はもっぱらパンですが。

日本人の70%以上の人は朝ごはんを食べて*1おり、そのうち、パン派とご飯派はほぼ同じくらいだそうです。

パンにつけるものと言えば、バター、ジャム、チーズなどありますが、今回のテーマはマーガリンです。

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バター

バターは牛乳の中にあるクリームを分離させて、その中の脂肪分を固めたものです。市販のバターは1箱200gのものが多いですが、それを作るにはおよそ10Lの牛乳が必要となります。貴重なのでやや高価となります。

バターは冷蔵庫などで冷やすとかなり堅くなります。ナイフで切るのも一苦労です。逆に40℃を超えると完全に溶けて液体になります。

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バター

マーガリン

これはご存じの通り人工バターです。

バターは生乳から作られ、高価ですので、何とか安く作れないかと考案されたのがこのマーガリンなのです。ちなみに英語ではマージャリンですから発音注意しましょう。

バターと違って牛乳からは作らず、主に植物油を用いて作られます。

植物油と言えば、ナタネ油やオリーブオイルなどをイメージしてもらうとわかりますが、常温では液体ですよね?バターのように固形でないと使いにくいので、ここで、水素化と言うことを行い、常温で固形化をします。

ちなみに、油脂含有率が80%以上のものをマーガリンと呼び、それ以下のものはファットスプレッドと呼ばれます。

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マーガリン

マーガリン禁止令

バターは動物性脂肪、マーガリンは植物性脂肪でできており、イメージとしてはバターの方が体に悪そうですよね?笑

ところが、実際は、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸の過剰摂取は心疾患(心筋梗塞など)のリスク増加に関係する*2ことや、認知機能の低下につながる*3ことが報告されています。

実はトランス脂肪酸はマーガリン製造の要となる『水素化』で起こるのです。

そこで、アメリカでは2018年以降、マーガリンの”実質”禁止となっています。

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マーガリンはアメリカで禁止

脂肪酸について

トランス脂肪酸はマーガリンだけでなく、ショートニング、スナック菓子や生クリームにも含まれます。

なので、菓子パンやドーナッツ、スナック菓子をよく食べる人も心筋梗塞や認知症のリスクが上がるということです。

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トランス脂肪酸が含まれるもの

そもそも、脂肪酸と言うのは、炭素と水素とカルボン酸(-COOH)でできています。

炭素の集まりが水素で飽和されているものを飽和脂肪酸といいます。この飽和脂肪酸は乳製品や肉などの動物性脂肪に多く含まれています。

一方、炭素分子に水素が飽和していないものを不飽和脂肪酸といいます。植物油がその代表的なものです。

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脂肪酸について

水素が足りない箇所は炭素同士が二重結合しています。そして、その二重結合の炭素にひっつく水素の位置関係によりシス型トランス型に分かれます。

天然由来の不飽和脂肪酸(植物油など)はシス姿であることが多いのですが、これは常温では液体なのです。油脂は固体化したほうが使いやすいし、揚げ物をサクッとしたり、保存がいいことなどから、水素化をして固体化すると、トランス脂肪酸になるわけです。

トランス脂肪酸の安全性

2003年のWHOの報告*4ではトランス脂肪酸は心疾患のリスクを増加させるため、摂取量は全カロリーの1%未満にするよう勧告しています。(※日本人で言うと、1日2gです)

WHOは一体・・・

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トランス脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールを増やし、善玉コレステロールであるHDLコレステロールを減らしてしまうということが分かっています。

また、糖尿病認知症アトピー不妊症との関連性も指摘されています。

これらもあってWHOは2018年に、2023年までにトランス脂肪酸を根絶*5させようと呼びかけています。

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2023年までに根絶を

日本では禁止されず

ところで、アメリカでマーガリンが禁止されていますが、日本ではされていません。

実は日本人の1日当たりのトランス脂肪酸の摂取量は0.92~0.96g*6で、WHOの規定する摂取量(日本人では約2g/日未満)の半分です。

つまり、現状の食生活でマーガリンなどを使用継続しても心疾患のリスクが高まるほどの摂取量にはならないという見解*7から日本では特に禁止されていません。

アメリカはご想像のとおり元々の脂肪の摂取が日本人とは比にならないほど多いので、マーガリンによるトランス脂肪酸などにも目が行くということです。

ちなみに世界的な流れでは、デンマーク、スイス、アメリカなどはトランス脂肪酸の含有量を規制していますし、カナダや中国や韓国では含有量の表示を義務化しています。

日本では、規制はおろか脂肪酸やコレステロールの含有量の表示義務もありません。(一部のメーカーは任意で表示しています。)

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日本では規制はない

飽和脂肪酸の増加

実は日本ではマーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は減らし、代わりに飽和脂肪酸の割合を増やして対応*8しています。

これで、一安心かと思いますが、実は飽和脂肪酸も心疾患との関連性がわかったのです。ただ、トランス脂肪酸よりも摂取量の目安は緩く設定されております。

WHOの勧告では全摂取カロリーの10%未満(日本人で言えば1日20g未満)としています。

そう、「トランス脂肪酸が体に悪い」ということだけで、規制しすぎると代わりに飽和脂肪酸の含有量が増えてしまいます。もともと肉などの摂取が多い人にとっては、こちらも気を付けなければいけません。

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実はどちらも心疾患のリスク

さいごに

いかがでしたか。WHOでは2023年までにトランス脂肪酸を無くしたいとしており、アメリカやデンマークなどではトランス脂肪酸の規制があります。

いくつかの国では少なくともトランス脂肪酸の含有量表示が義務化されています。

しかし、日本では規制も、表示の義務もありませんが、企業の努力でマーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は減っています。

ところが、それにより、飽和脂肪酸の含有量が増えており、トランス脂肪酸ほどではないですが、こちらも摂取過多の場合は心疾患と関連があることが分かっています。

結局は、「木を見て森を見ず」にならずに、バランスよい食事を心がけることが重要と言うことですね。

物事は広く見るべし

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では、また(^.^)ノ